第5回電竜戦の戦法調査
2024年11月30日,12月1日(土,日)に電竜戦というコンピューター将棋ソフトの大会が行われた。そこでの戦法を調査していきます。今年の電竜戦は将棋では先手が有利すぎるということで持ち時間が先手3分2f、後手10分2fと先手の時間が削られた。果たして昨年より先手有利が解消されているのか…
この記事を読めば
・戦法の採用数はいくらか
・戦法の勝敗数はいくらか
・先後勝敗数はいくらか
がわかります。
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今大会決勝リーグの傾向をまとめる
①角換わりを志向したソフトが上位独占
②トラブルがB級、C級、予選と比べて極めて多い
③トラブルの有無は先手勝率に影響なし
①上位進出ソフトは必ず角換わり定跡を搭載しているため、必然と角換わりになった。相居飛車の将棋は角換わりかそれ以外かという有り様であった。近年の将棋AIの大会では角換わりは極めて先手有利なため後手番では対策が必須である。後手番対策を深く練っているうちに、先手もかなり深く定跡を掘れたので先後両方とも角換わりを選択するようになったのだと思う。
②今大会は先手3分2f後手10分2fであった。トラブルが多かった原因は先手の持ち時間が少なすぎて、通信のラグが大きいことが1番の原因だと推測されている。人間の大会でもそうではあるが2秒フィッシャーの場合2秒で指しても時計を押す時間が必要なため実質1.7秒やそこらで着手完了しなければならない。AIの大会も通信に数ミリ秒かかるため、持ち時間をギリギリで指すと時間切れとなる。トップの将棋AIは数ミリ秒のチキンレースをしているようであった。
「昨年と比べて先後に優位な差が生まれたのか?」という点が気になったので調べてみた。仮説検定の考え方を使って昨年と今年を比較すると勝率の差に5%の水準(正確には片側なので2.5%)で有意な差はないという結果になった。
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Bの傾向をまとめる
①B級でも角換わりが人気で決勝リーグより後手で勝負できる
②トラブルが発生したのはわずか2対局
③振り飛車党のソフトはいなかった
決勝リーグのソフトは定跡作成にも力を入れているが、B級はまだ定跡の影響が小さかった。横歩取りは何をやっても先手よしのようである。☖33角に青野流で挑むソフトがほとんどだったが後手は何もできずに負けていた。
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C級と予選に関しては強い方が勝つという単純な図式であった。