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私の戦い方vol.5 千田翔太八段 「AIと人間のはざまで」
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トップ棋士に現在の将棋界と、その中での自分の戦い方を語っていただく本コーナー。
第5回は千田翔太八段にご登場いただいた。AIを早くから取り入れ、独自のスタンスで戦ってきた千田。29歳でA級昇級を果たして30歳となったいま、何を思うのか。インタビューは思わぬ方向に進み、千田の棋士としての生き方にまで及ぶ深い内容となった。
【インタビュー日時】2024年4月18日【写真】上条幸一【記】島田修二
持将棋という鉱脈
――本日はよろしくお願いいたします。
「よろしくお願いします」
――まずは現在の将棋界ということで直近で行われたタイトル戦について伺います。棋王戦は第1局が持将棋となり大きな話題となりました。この一局について、千田八段の感想をお聞かせください。
「角換わり腰掛け銀の後手番で持将棋に持ち込めるという鉱脈を示したのは伊藤七段の大きな功績です。この将棋とほかの角換わりの相入玉の棋譜をもって伊藤七段が升田幸三賞を受賞されたのは極めて妥当なものだと考えています」
――後手番の戦い方の選択肢を広げたというか、これまで千日手狙いはありましたが、持将棋に持ち込むのはすごいと思いました。
「それをある程度想定できてしまうのが、現代将棋の恐ろしさといいますか、そこまで将棋の研究が進んだいうことでもあります。角換わりだけではありますが」
――やはり角換わりは形がかなり限定されているからこそ、研究を先まで届かせられるということでしょうか。
「おっしゃる通りで、これがもし相掛かりなどでしたら、相入玉になるには大変な手数がかかりますからそうはいきません。角換わり腰掛け銀は仕掛けの形が決まっていて激しい展開になりやすいためソフトの候補手が限られてきます。ほかの戦型に比べると持将棋が狙いやすい側面はありますね。
また、角換わり腰掛け銀は▲4八金・▲3七桂型で戦いますが、大体その金や桂が取られていきます。さらに棋王戦のように香を使って端攻めすると玉の前から駒がなくなるので入玉しやすい戦型と言えるかもしれません」
――棋王戦では先手の藤井棋王はすんなり入玉が決まりましたが、後手の伊藤七段が入玉するのは大変なように見えたのですが。
「後手の入玉を止めるのには結構苦労が要ります。というのも先手玉を安泰にしようとするとその隙に後手に入玉されるんです。だからといって自玉が不安定な状態で切り掛かっていくと反撃されて負けてしまう。竜王戦の▲丸山―△伊藤戦が例として挙げられるかもしれません。どの辺りで攻めに転じるかというグラデーションみたいなところはあると思いますが、やりすぎると反撃を食らいますし、自玉の安全を確保しようとすると引き分けになるということです」
――なるほど。止めにいくのは先手にもリスクがあるのですね。
「あの一局は2023年度の対局の中でも意義という点ではいちばん大きかったと思います。もちろん興行的にどうかというのは別問題としてありますが、純粋に将棋としての意義では2023年度であれを超えるものはないと思いますし、与える影響も大きいと思います」
――以前、藤井八冠に将棋の結論を聞いた際に持将棋ではないか、という答えでしたが、千田八段はいかがですか?
「その可能性はもちろんあるかと思います。しかしながら、それはいまの将棋ソフトが27点法でやっているからそう見えるという部分もあって、あれを24点法で学習させて初めてどうかという感じですかね。実際にはコストがかかるので誰もやらないとは思いますが。
いまのソフトは27点法の枠の中で最善手を指していますが、24点法で学習したら、相入玉につながるような戦型では中盤までの指し手の評価が少し変わってくる可能性もあるかと思います。ただ、ちょっとこればかりはコンピュータ将棋の専門家ではないのでわからないですね」
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