[将棋]▲4五桂速攻の破壊力①。先手3八銀・6九金・6八玉型の攻防。
こんにちは。ゆに@将棋戦略です。
前回↓は、▲4五桂速攻の大前提となる後手△3三銀が保留出来るかどうか検討してみました。その成否はギリギリ、というのが一応の結論です。本シリーズでは、後手が△3三銀と上がった場合にどうなるか、終盤までかなり詳しく調べてみたいと思います。
まずは3八銀・6九金・6八玉型での速攻を調べます。先に言ってしまいますと、基本図となる第1図から▲3五歩とした局面でAIどうしで連続対局させると、先手勝率が90%となる超優秀な作戦です。本稿における手順は基本的に、AIの連続対局で最も多く現れた手順を踏襲したものとなります。前回と重複する部分もありますが、そこはお許しを。
序盤の手順
繰り返しになるかもしれませんが、まずは序盤の手順から。▲1六歩のタイミングが大事。
初手から
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7六歩 △3二金
▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
▲1六歩 △9四歩 ▲9六歩 △1四歩 ▲3八銀 △3三銀
▲3六歩 △7二銀 ▲3七桂 △4二玉 ▲4六歩 △6四歩
▲6八玉 △6三銀(第1図)
第1図が3八銀・6九金・6八玉型の基本図となります。ここから先手はゆっくり指す手もあるのですが、▲4五桂速攻ではすぐに仕掛けます。
大事な▲3五歩
第1図から
▲3五歩 △同 歩 ▲4五桂(第2図)
▲3五歩が大事な手です。単に▲4五桂ですと、△2二銀▲2四歩△同歩▲同飛△4四歩などとなって、失敗です(参考図1)。
第2図では△3四銀、△4四銀、△2二銀があります。AI推奨は△2二銀ですが、順に説明していきます。
△3四銀には▲2四歩で有利
第2図から
△3四銀▲2四歩(第3図)
△3四銀と逃げる手には▲2四歩と突いて先手がやや有利となります。▲2四歩に対し、前回記事では△同歩を紹介しましたが、その他に有力な手として△5四銀と△5五角があります。
第3図から
△5四銀 ▲6六角 △4四角 ▲同 角 △同 歩 ▲2三歩成
△同 金 ▲2二角(第4図)
△5四銀はちょっと意味が分かりにくい手ですが、間接的に▲2三歩成からの攻めを受けている手です。△5四銀に対して単に▲2三歩成△同銀▲2四歩△3四銀▲2三角と攻める手も有力ですが、以下△4五銀右▲同歩△3三金(参考図2)でどうか。後手に△2五歩と打たれると飛車が使いにくく、第4図の方が勝ると見ます。
△5四銀には一旦▲6六角と打って、△4四角▲同角△同歩と進めます。一見すると△4四歩と0手で突かれて損をしたようですが、▲2三歩成に対して後手の対応が難しくなっています。つまり、△2三同銀には▲3四角と捨てる手が生じているのです(参考図3)。△同銀には▲2一飛成で先手優勢です。
かといって、△2三同金には▲2二角と打って、馬作りが受からないので先手有利でしょう。
次は第3図で△5五角と打つ手。
第3図から
△5五角 ▲2三歩成 △同 銀 ▲2四歩 △3四銀▲2三角
△同 金 ▲同歩成 △2五歩 ▲2四と △4六角▲3七金
△4五銀 ▲4六金 △同 銀 ▲2五飛(第5図)
△5五角に対して、▲6六角と合わせるのは△同角▲同歩に△2四歩と戻されて、▲6六角が打てなくなっているので失敗になります(前回参照)。したがって単に▲2三歩成から▲2三角と打ち込んで以下第5図。第5図からは△6五桂などと攻めてきても、▲3三と△同桂▲2二飛成△3二金▲1一竜と先手で攻めることが出来ます。
△4四銀は難解ながら先手有利
次に第2図に戻って△4四銀を調べます。
第2図から
△4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2九飛
△3六歩 ▲4八金 △5四銀 ▲4七銀(第6図)
△4四銀に前回は▲1五歩の攻め方を紹介しましたが、▲1五歩には△8六歩▲同歩△8八歩▲同銀△4五銀の変化があり、以下▲7七角△4六銀▲2四歩△同歩▲1一角成△3三角▲同馬△同金(参考図4)で互角。今回は▲2四歩とする手を見てみます。
ちなみにですが、▲2四歩で▲3四角と打つのは△1三角と打つ手があります。それには一見▲1五歩がありそうですが、△3六歩と突かれて難しくなります(参考図5)。
▲2四歩は単なる一歩交換に見えますが、▲2九飛の形を作って△5五角の筋から飛車を避ける意味もあります。▲2九飛と引いた局面は次に▲3四角の狙いがあり、後手はそれを防がないといけません。悠長に△5二金などとしていると▲3四角と打たれ、以下△4一角に▲1五歩△同歩▲2四歩△同歩▲1五香△同香▲1二角成(参考図6)は先手有利となります。
▲2九飛には後手は△3六歩と突きます。▲3四角には△2四角を用意しつつ、場合によって△4五銀から△3七桂を狙う手です。先手は一旦▲4八金と受けてから、△5四銀に▲4七銀(第6図)として▲3六銀を狙いにいきます。
第6図ですが、後手からすると△4五銀から△5五角の筋がありそうで、チャンスの局面に見えます。どうなるか見てみましょう。
第6図から
△8六歩 ▲同 歩 △4五銀直▲同 歩 △8八歩 ▲6六角
△5五桂 ▲5六銀 △8九歩成▲4四歩 △同 歩 ▲5五銀
△同 銀 ▲同 角 △4七銀(第7図)
後手は△8六歩▲同歩△4五銀直▲同歩△8八歩と攻めます。これに▲同銀だと、△3七歩成▲同金△5五角と打つことが出来ます。これが後手の狙いです。なお、△4五銀直のところで先に△8八歩と打つ手には、▲同銀△4五銀直に▲7七角と打つ手があり、以下△5五桂に▲5八金上(参考図7)が好手で先手が良くなります。
△8八歩に▲同銀とは取れないので、先手は▲6六角と打って△5五桂▲5六銀△8九歩成まで進みます。ここで、▲4四歩が大事な一手です。ここで単に▲5五銀と取ってしまうと△6五歩と突かれてしまうので注意。▲4四歩と入れておくと、▲5五銀に△6五歩は▲5四銀△6六歩▲4三銀打(参考図8)と攻めれる仕組みです。
第7図では大事な手があります。
第7図から
▲4三歩 △同 玉 ▲4七金 △3八角 ▲3九飛 △4七角成
▲5八金 △6五馬 ▲5六銀 △5五馬 ▲同 銀(第8図)
第7図で▲4三歩がいいタイミング。飛車が2筋にいるうちに打っておくと、△同金と取れなくなります。以下、先手は素直に収めて第8図。ここで△2八角が打てそうですが、そこで▲2五角がジャストタイミングになります。▲2五角に△3四金は▲同角△同玉▲3六飛△3五歩▲4六桂△4三玉▲4四銀(参考図9)で先手好調ですし、△3四桂は▲3六飛△2四金▲3五銀(参考図10)でこれも好調です。
というわけで、△2八角とは打てなさそうです。後は攻めるとしたら△6五桂くらいです。
第8図から
△6五桂 ▲8九飛 △7七桂成 ▲同 玉 △8七歩 ▲3五桂(第9図)
△6五桂には落ち着いて▲8九飛とします。以下△7七桂成▲同玉に△8七歩が手筋の歩。▲同玉なら△8五歩から十字飛車、▲同飛なら△6九角などがあります。
△8七歩に対処が難しいようですが、そこで▲3五桂が悩ましい王手。
①△5二玉は▲3四角や▲2五角と急所の奇数マスに角を設置される。
②△4二玉には▲4三歩を利かされる。
③△3四玉には▲2六桂と打たれて逃げ場所が難しい。△3五玉は▲4六角で詰み。△2四玉は▲2五歩△3三玉▲4一銀で受けにくい。
ということで、△3三玉と逃げてみます。
第9図から
△3三玉 ▲3四歩 △2四玉 ▲8七玉 △8五歩 ▲同 歩
△同 飛 ▲8六歩 △5五飛 ▲4三桂成(第10図)
△3三玉には一旦▲2四歩△2四玉の交換を入れて、▲8七玉と戻します。なお、▲2四歩に対して△2二玉と逃げるのは、▲8七玉△8五歩▲同歩△同飛▲8六歩△5五飛に▲6六角がぴったりになります。
▲8七玉に十字飛車が決まった後、先手は▲4三桂成(第10図)と成り捨てて反撃します。第10図は次の▲4六角が厳しい上、先手玉はまだ安全なため、先手が有利と考えられます。
最も難解な△2二銀
以上から、△4四銀は難解な変化を含むものの、先手有利と思われます。
ということで、次は第2図で△2二銀の変化を調べていきます。
第2図から
△2二銀 ▲1五歩(第11図)
△2二銀には▲1五歩と突きます。この端攻めがあるからこその▲4五桂速攻で、これがないと攻めがつながりません。実際、単に▲2四歩だと△同歩▲同飛△2三銀▲2九飛△2四歩ぐらいで、桂損が確定的です。
▲1五歩には△4四歩と△1五同歩があり、順に見ていきます。
第11図から
△4四歩 ▲1四歩 △4五歩 ▲1三歩成 △同 桂 ▲1四歩
△8六歩 ▲同 歩 △6五桂 ▲1三歩成 △同 香 ▲3四桂
△5二玉 ▲2二桂成 △同 金 ▲1三香成 △同 金 ▲7八金(第12図)
△4四歩には▲1四歩から攻めていきます。以下△4五歩▲1三歩成に△同香と△同桂がありますが、△同香と取ると▲1四歩△同香▲同香△8六歩(△1三歩と素直に受けると▲1二角がある)▲同歩△6五桂▲1二香成△3三銀▲7八金(参考図11)が一例で、先手やや有利です。
△1三同桂の変化も似たような感じで、右辺の桂香を捌いた後に▲7八金と手を戻します。右辺の桂香が捌けているのが大きく、形勢は先手がやや有利と考えられます。
次に、第11図で△1五同歩としてみます。
第11図から
△同 歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲1五香 △同 香 ▲2四飛
△2三銀 ▲2五飛(第13図)
△1五同歩には▲2四歩から香車を捨てて攻めます。一見すると▲2四同飛の局面はぬるいようですが、次に▲1二角の攻めがあるので、後手としても△2三銀と防いでおくぐらいです。そして▲2五飛と香取りに引いて第13図。
後手は香を取り返されると駒を捌かれている分不利になります。防ぎ方はいくつかありますが、それぞれ見てみます。
第13図から
△1八香成 ▲2二歩 △同 金 ▲1一角 △1二金 ▲1三歩(第14図)
まず、第13図で平凡に△1四歩と受けるのは▲2二歩△同金▲1一角△1二金▲1三歩で、△1八香成よりも損をすることになります。▲1三歩は厳しい攻めで、△同桂なら▲3三角成、△同金なら▲2二角成、△1一金なら▲2三飛成です。
また、第13図で△1七香成も普通の手ですが、それには▲2四歩△1四銀(△3四銀は▲1五飛)▲3五飛(参考図12)の時に飛車を追いづらくなってしまいます。この時、香車が1八にいれば△1七角と打てる、ということで△1八香成なのですね。
第14図はまたまた分岐で、△1一金と取る手と、△1六角と打つ手、△1三同金とする手などがあります。まずは△1一金から。
第14図から
△1一金 ▲2三飛成 △2二歩▲3四龍 △3二香 ▲2四龍
△8六歩 ▲同 歩 △8八歩 ▲同 銀 △4四角 ▲7八金
△8七歩 ▲同 金 △3六歩 ▲3四歩 △5五角打 ▲7七桂
△4六角 ▲1四龍 △2八成香 ▲4七銀 △3七角成 ▲5六銀
△3八成香 ▲同 金 △同 馬▲1二歩成 △1三歩 ▲1八龍(第15図)
△1一金はアッサリ龍を作らせてしまう手ですが、意外と有力です。以下▲2四龍(ここで▲1四龍だと△3六角と打たれてしまう)の局面は、次に▲1二銀と露骨に攻める手があって、後手が忙しい局面です。△8六歩からの攻めは一例ですが、いずれにしても後手は角のラインと△3六歩をからめて攻めてくることになります。
第15図はとても難解な局面ですが、AIどうしの連続対局では先手勝率が95局指して100%となりました。というわけで、一旦この局面は先手微有利という結論にさせて頂きます。
次に第14図で△1六角を調べます。
第14図から
△1六角 ▲1二歩成 △2五角 ▲2一と △5二玉 ▲3三角成
△2八成香 ▲2三馬 △3八成香 ▲4二銀 △同 玉 ▲4四桂(第16図)
△1六角に▲2六飛と飛車を逃げる手はやや疑問で、以下△1一金▲2三飛成△2二香の時に△1六角と設置されているため、▲3四龍と出来なくなります。
したがって▲1二歩成からの攻め合いはほぼ必然ですが、途中△3八成香に▲4二銀が急所の攻めです。後手玉は5三地点を攻めるのが最も速いのですね。△同玉にはさらに▲4四桂の捨て駒。この手の意味は、△4四同歩▲2四馬△5二玉に▲2五馬が王手の先手になるようにしたものです。第16図は先手の攻めが決まり、勝ちの局面です。
次は第14図で△1三同金。
第14図から
△同 金 ▲2二角成 △2四金 ▲同 飛 △同 銀 ▲2一馬(第17図)
△1三同金から第17図までは一本道。ここで後手の有力な手としては△5二金、△5四銀、△5二銀などがあります。なお、△2八成香の攻め合いはこの場合は成立せず、いきなり▲8三金!と捨てて以下△同飛▲7五桂(参考図13)とする手があります。▲8三金に飛車を横に逃げるのも、▲3四桂が厳しすぎます。
ではまずは第17図で△5二金から。
第17図から
△5二金 ▲2二馬 △5一玉 ▲3一馬 △6二玉 ▲7五桂
△7四銀 ▲4二金(第18図)
△5二金にはいろいろありますが、▲2二馬が良さそうです。この手は▲2三馬(詰めろ銀取り)を狙っていて、それを受ける△5一玉に▲3一馬(▲5三桂成狙い)と調子良く攻めることが出来ます。
以下第18図まで進んで、先手が指しやすいと思われます。次に第17図で△5四銀の場合。
第17図から
△5四銀 ▲3四金 △2五銀 ▲3三金 △5二玉 ▲3一馬
△4五銀 ▲同 歩(第19図)
△5四銀には今度は▲3四金と打ちます。▲3四金では▲3四桂も有力ではあるのですが、以下△5二玉▲3一馬△4五銀▲4二桂成△6二玉▲4五歩に△1四角(参考図14)が好打で、難解となります。
▲3四金と打つ手に△2五銀と逃げるところ、△2八成香の攻め合いも有力で、以下▲2四金△3八成香▲同金△2九飛▲3三金△5二玉▲3一馬△4五銀▲5五桂(参考図15)が一例です。形勢はギリギリ先手が残していそうです。
▲3四金△2五銀には▲3三金から第19図へ。次に▲5五桂などが厳しいので、先手がやや指しやすいと見ます。
最後に第17図で△5二銀と引く変化を。
第17図から
△5二銀 ▲1二馬 △2八成香 ▲3四馬 △2二香 ▲4七銀
△1九飛 ▲5八銀(第20図)
△5二銀に対して、今度は▲1二馬と引くのが良い手になります。ここを△5二金の時と同じように▲2二馬と引いてしまうと、△2八成香▲2三馬に△2一香と打つ手があって、先手失敗となるので注意。▲1二馬は▲3四馬と出来るようにしているのですね。
▲1二馬に対して△5一玉と逃げるのはやはり▲3四馬で無効。かといって、△1四角▲3四馬△2三歩のようにして耐えるのは▲1五金(参考図16)があってやはり先手有利です。
以上、第2図からいずれも先手が互角以上に指せることが分かりました。後手を持つとすると、第15図、第18図、第19図あたりを目指すと良いでしょう。
これらの変化を全て覚えるのは難しいかもしれませんが・・・、ところどころの重要な攻め筋はとても参考になると思うので、ぜひ検証してみて下さい。
それでは読んで下さり有難うございました。引き続きよろしくお願いいたします。