【勝率とは?】数学的に考えてみたら
勝率という言葉を聞くと何を想像するだろうか?基本的には「勝つ確率」のことを指す言葉ではあるが、近年は「これなら勝つと考えられる確率」のような使い回され方として勝率と言われることもありますので、数学的な、定義的な「確率」について述べてみます。
1、そもそも勝率とは?
「同じ条件、同じコンディション」で戦った場合に対して、勝ち負けの割合の大まかな値を指す言葉として用いられるのではないでしょうか。例えばAさんとBさんが対戦して、100試合中75試合、Aさんが勝つとするのであれば、概ねAさんはBさんに75 %勝つ。この75%が勝率であろう。
この条件下で、さらに100試合行った場合を考える。その結果、Aさんが25勝しか出来ず、Bさんが75勝したとするのであれば2人の勝率は50%だろうか?
結果だけを聞くとそのように勝率50%と捉えがちだが、AさんよりBさんの方が近年の実力が上だからこそ、Bさんの勝率が75%とも捉えることも出来る。このような捉え方の方が一般的で、かつ実用的だろう。
つまり勝率は、結果から考察するとどの期間を抜き出すかで変わる数値であり、現在の実力差から考える値でないことが分かる。
2、確率計算における番勝負の確率
2−1 優勝確率の計算(勝率をもとにした計算)
現在ドジャーズ対ヤンキースの試合が行われているが、7戦中4戦勝った方が優勝だ。
この試合の初戦はドジャーズが勝ったが、その後ドジャーズが優勝する確率を計算してみよう。
単純化のため、この2チームの勝率が50%であったと仮定する。このときドジャーズからすると、残り試合を
①3勝0敗で優勝
②3勝1敗で優勝
③3勝2敗で優勝
④3勝3敗で優勝
となる。①の確率は$${\frac{1}{8}}$$、②の確率は$${\frac{3}{16}}$$、③の確率は$${\frac{6}{32}}$$、④の確率は$${\frac{10}{64}}$$となり、合計すると$${\frac{23}{32}}$$、優勝確率はおよそ72%と算出出来る。
2戦目もドジャーズが勝ったため、優勝確率がさらに大きく跳ね上がっただろう。
2−2 優勝した勝敗数から勝率の最尤値
最尤値(さいゆうち)とは、最もこうだろうと考えられる値のことである。勝率50%の2人の対戦で、4勝1敗で優勝する確率は決して高くない。そのため、勝率50%であることを疑う考え方もある。勝率50%として、4勝1敗で優勝する確率は、前のケースでドジャーズが勝つとすると、初戦対戦前から考えると$${\frac{1}{8}}$$であり、12.5%であるがこの確率は高いとはいえない。
そのため、ドジャーズが仮に4勝1敗で優勝するのであれば、「ドジャーズ対ヤンキースの勝率が異なるのではないか?」と考えて、この勝敗で優勝する確率が最も高いものを実力差から考える勝率と捉えていき、その値が最尤値である。
3、将棋における勝率表示
今回のテーマで一番考えにくいのがこの勝率表示である。
「勝率3%からの大逆転!」という言葉などもよく聞かれます。
この勝率は私の体感では、
「適当な実力の2名をランダムに選び対戦させた時の勝率」
くらいの認識が適切かと考えている。AI対AIでは、3%の勝率はひっくり返すことが困難と考えられるので。
王座戦第3局のこの局面で、先手の手番である。現在先手の勝率は95%と表示されている。この先手の正着は▲97桂である。このほか先手からは▲96同金、▲97歩、▲97銀、▲97金(寄)、▲97金(打)の6通りあるが、このうち5通りは何と先手が負ける。確率としては$${\frac{1}{6}}$$しか勝てないはずだ。
ましてや、将棋をある程度指してきた方は間違いなく、この局面では▲97歩と、桂ではないものを指したくなる。この勝率は95%なのだろうか?
勝率というものは割り振られた数字ではあるが、手に汗握る戦いでは、勝率というよりは「全体の何分の何が勝ちに繋げられるか?」を伝える方が良いかもしれない。
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