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第1回ABEMA師弟トーナメント本戦準決勝第二試合

2月26日、ABEMA師弟トーナメント本戦準決勝第一試合が放映されました。予選Bリーグを1位通過したチーム鈴木「大内組」と、予選Aリーグを2位通過したチーム深浦「大地球」の顔合わせとなっています。チーム鈴木は師匠の鈴木大介九段が4勝0敗、弟子の梶浦宏孝七段が2勝1敗と、圧倒的な強さで予選を勝ち上がりました。チーム深浦は師匠の深浦康市九段が2勝3敗、弟子の佐々木大地五段(*)が6勝2敗と、2度もフルセットとなる接戦をものにして勝ち上がっています。

(*)佐々木大地六段は収録時の段位で記述させていただきます。

■一局目 深浦康市九段 〇 vs ● 梶浦宏孝七段
チーム深浦は師匠が先陣を切ります。先手の梶浦七段が相掛かりに誘導し、お互いに中住まいに構えます。梶浦七段が先に飛先の歩を交換し六段目に引くと、角道を開けたタイミングで深浦九段も飛先の歩を交換します。梶浦七段は角を交換して7筋の歩を伸ばし、▲8六飛とひねり飛車にすると、更に9筋の端攻めで攻勢を掛けます。梶浦七段が▲9二歩と叩くと、深浦九段は飛車で取り、梶浦七段が8筋の歩を交換して飛車を走ると、深浦九段は金を寄せて桂を守ります。作戦勝ちとなった梶浦七段は竜を作ってから再び9筋を攻め、▲7一角と打ち込んで後手の飛車に圧力を掛けます。梶浦七段が角を飛車と交換して金取りに▲6一飛と打ち込むと、深浦九段は時間に追われながら△8四角と打ち、先手の竜と交換して△3一飛と自陣に打って粘ります。梶浦七段は攻防に▲6四角と打ちますが、深浦九段は冷静に歩で先手の角の位置を変え、待望の△9七香成から反撃します。深浦九段は△2六角~△3七角成と馬を作って挟撃態勢を作りますが、梶浦七段も▲4一銀から後手玉に迫ります。梶浦七段が力強い手つきで▲6二飛と打ち込むと、深浦九段は△5五銀と出て詰めろを掛けます。梶浦七段は王手の連続で▲5五馬と後手の銀を抜き、▲7六馬と詰めろを掛けて下駄を預けます。深浦九段は△5五歩から先手玉に迫り、そのまま鮮やかな即詰みに討ち取りました。

■二局目 佐々木大地五段 ● vs 〇 鈴木大介九段
チーム深浦は、師匠の大逆転勝ちに勇気づけられたと言う弟子が出陣します。後手の鈴木九段が四間飛車に振り、佐々木五段は穴熊に囲います。鈴木九段が高美濃から銀冠に組み替えると、佐々木五段は飛車を5筋に回して打開を図ります。鈴木九段が3筋の歩を突き捨て△1三角と覗くと、佐々木五段は1筋の歩を伸ばして角を取り合います。鈴木九段は歩の連打で飛車を吊り上げ飛金両取りに△3四角と打ちますが、佐々木五段は手抜いて▲7五歩と攻め掛かります。鈴木九段は空いたスペースに△7六桂と銀取りに打ちますが、佐々木五段も▲8六桂と銀取りに打ち返します。鈴木九段が角を飛車と交換してから△4八飛と打ち込むと、お互いに桂で相手の金駒を取ってから佐々木五段は▲5九角と飛銀両取りに打ちます。鈴木九段は飛車を取らせる間に△7六歩~△7七香と楔を打ち込み角取りに△5八"と"と入りますが、佐々木五段は構わず▲4一角と金取りに打って後手陣に攻め掛かります。鈴木九段は持ち駒の桂を打って金を守りますが、佐々木五段は7七の地点で駒を清算し▲8六桂と打って攻めをつなぎます。鈴木九段は△6七角~△5六角成と馬を自陣の守りにも利かせますが、佐々木五段は▲9四桂と継ぎ桂で端から後手玉に迫ります。佐々木五段は▲8一飛と打って詰めろを掛けますが、鈴木九段は△9三金と寄って詰めろを逃れると△6八"と"と寄って詰めろを掛けます。どちらが勝ってもおかしくないギリギリの寄せ合いとなりましたが、最後は佐々木五段の連続王手を凌ぎ切った鈴木九段が勝利を収めました。

■三局目 佐々木大地五段 ● vs 〇 鈴木大介九段
両チームとも連投し、二局目と同じ顔合わせとなりました。先手の鈴木九段が初手▲5六歩から中飛車に振り、美濃囲いに構えると角を交換します。佐々木五段は△4三角と自陣角を打ち、△7六角と歩を取ってから△9六歩と仕掛けます。鈴木九段が▲6五桂と跳ねて角の捕獲を狙うと、佐々木五段は8筋の歩を突き捨て△9四角と逃げます。佐々木五段は銀を交換して飛金両取りに△6八銀と打ちますが、鈴木九段は手抜いて角取りに▲9五歩と伸ばします。お互いに角と飛車を取り合い"と金"を作って攻め合いますが、鈴木九段が先に後手の金を2枚剥がして駒音高く▲5二角と打ち込みます。佐々木五段はしばらく中空を見つめていましたが、次の手を指さずに投了を告げました。鈴木九段が後手からの仕掛けをかわして豪快に勝ち切りました。

■四局目 深浦康市九段 ● vs 〇 梶浦宏孝七段
四局目は必然的に一局目と同じ顔合わせとなりました。先手の深浦九段が角道を止めて得意の雁木に構えると、梶浦七段は飛車取りに△6四角と飛び出し△3五歩と桂頭を狙います。梶浦七段が飛先の歩と角を交換すると、深浦九段は▲1八角と自陣角を打って桂頭を守ります。梶浦七段は△3五銀と前進し△3六歩から角銀交換の戦果を挙げます。深浦九段は▲8九飛と回り、後手の歩切れを突いて8筋の歩を伸ばします。梶浦七段は6筋の歩を突き捨て天王山に△5五角と打ちますが、深浦九段は▲6六銀と手堅く受けます。梶浦七段は△7三角と先手の桂の利きに引きますが、取ると飛車を素抜かれてしまうため深浦九段は仕方なく▲8六歩と打ってから飛車を2筋に戻します。梶浦七段が銀取りに△3五歩と打つと、深浦九段は▲3三桂と継ぎ桂で後手陣に攻め掛かります。梶浦七段は飛金両取りに△3八角と打ち、深浦九段が飛車を逃げると△5七角成と角を切って先手玉に迫ります。梶浦七段は△3三銀と桂を取って詰めろを掛け、深浦九段が銀を引いて詰めろを逃れると△2四銀と飛車を取ります。深浦九段は▲5三桂成と成り捨て▲7一角と王手飛車取りで勝負を賭けますが、梶浦七段は飛車を見捨てて落ち着いて受けると、△8九飛と打ってから即詰みに討ち取りました。

【チーム鈴木 3勝 vs チーム深浦 1勝】
チーム鈴木は、師匠が予選から6戦全勝でチームの決勝進出を牽引しました。この日は特に、一局目に弟子の梶浦七段が大逆転負けして暗いムードになりそうなところ、明るい表情を崩さず二局目に臨み、押され気味の将棋を最後の寄せ合いで制して波に乗りました。チーム動画で結婚を祝福された梶浦七段も、決着局では序盤の作戦勝ちでリードし、少し差を詰められながらも最後は鮮やかな寄せでリベンジを果たしました。新婚家庭に良い報告ができ、決勝でももうひと暴れの期待ができそうです。
チーム深浦は一局目に師匠が大逆転勝ちして流れを呼び込んだかに見えましたが、予選突破の原動力となった弟子の佐々木五段がこの日は白星に恵まれず、惜しくもここで敗退となりました。両者はTwitterを共同で運営するなど日頃から仲の良い師弟関係で知られており、お互いをリスペクトし合う姿に好感が持てる良いチームだったと思います。

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