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第4回ABEMAトーナメント本戦2回戦第三試合

8月21日に第4回ABEMAトーナメント本戦2回戦の第三試合が行われました。予選Bリーグ1位のチーム菅井「一刀流」と予選Bリーグ2位のチーム糸谷「FREESTYLE」との対戦です。チーム菅井は本戦1回戦をシードされ、2回戦からの登場です。チーム糸谷は本戦1回戦でチーム羽生を破り、2回戦に駒を進めました。両チームは予選でも対戦があり、チーム糸谷が5勝2敗で勝っています。予選で1位通過を果たしたチーム菅井が予選では敗れたチーム糸谷に雪辱するのか、予選は2位通過ながら本戦1回戦に勝って波に乗るチーム糸谷が準決勝進出を果たすのか、楽しみな顔合わせとなりました。

■一局目 山崎隆之八段 〇 vs ● 郷田真隆九段
チーム菅井は、チームのカギを握ると思われる郷田九段が一局目から登場です。振り駒で先手となった山崎八段は、得意とする相掛かりの駒組みを進めます。先に飛先の歩を交換した山崎八段が横歩も取ると、郷田九段は角を交換してから金で先手の飛車を押し戻します。山崎八段は馬を作って金を捕獲しますが、郷田九段も金で飛車を捕獲し激しい駒の取り合いとなります。最後はお互いに時計の叩き合いとなりましたが、山崎八段は自陣に金を2枚打って補強すると、後手の玉頭から攻め掛かり寄せ切りました。

■二局目 服部慎一郎四段 〇 vs ● 深浦康市九段
一局目を落としたチーム菅井は、予選未勝利で本戦での巻き返しを図る深浦九段が登場します。先手の深浦九段は雁木を選択し、服部四段は先後同型の駒組みを進めます。深浦九段が4筋から仕掛けると、服部四段も8筋から反発します。深浦九段は2筋に歩を連打し金を吊り上げ、金桂両取りに角を打ちます。服部四段は両取り逃げるべからずで、金を取らせてから角を捕獲します。深浦九段は竜を作って攻め込みますが、服部四段は2枚の角で凌ぎます。時間のない深浦九段は2枚の角で後手玉に迫りますが、服部四段が△6三香と攻防に打ち瞬く間に先手玉を必至に追い込みます。深浦九段は執念の連続王手を掛けますが、服部四段が逃げ切りました。

■三局目 山崎隆之八段 ● vs 〇 菅井竜也八段
苦しくなってきたチーム菅井はリーダーが自ら「行きたい」と宣言して登場しますが、チーム糸谷はリーダーを温存します。後手の菅井八段は三間飛車を選択します。山崎八段は8筋の位を取り、菅井八段は美濃囲いに組み飛車を4筋に振り直します。菅井八段が6筋の位を取ると、山崎八段はいくつも歩を突き捨て反撃の機会を探ります。菅井八段はこの機に乗じて6,4,9筋から反発します。山崎八段は馬を作って飛車を捕獲しますが、菅井八段は4筋に"と金"を作ってから9筋を突破し挟撃態勢を作ります。山崎八段は後手の玉頭から攻め掛かりますが、菅井八段は△6二香と打って凌ぎます。最後は菅井八段が先手の玉頭から攻め掛かり即詰みに討ち取りました。

■四局目 糸谷哲郎八段 ● vs 〇 菅井竜也八段
チーム菅井はリーダーの連投で、リーダー同士の対決が実現しました。先手の菅井八段が三間飛車を選択し穴熊を選択すると、糸谷八段も穴熊に囲います。糸谷八段が2,3筋の位を取ると、菅井八段は銀を前進して銀交換します。糸谷八段は△8八歩から桂得しますが、菅井八段はその間に5筋の歩を伸ばし、後手の穴熊は金銀がバラバラになっています。菅井八段は馬を作って後手玉に迫りますが、糸谷八段も自陣に金を打って粘ります。菅井八段は馬を切って寄せに入り、糸谷八段の反撃に丁寧に対応して自陣の穴熊は手つかずのまま押し切りました。。

■五局目 服部慎一郎四段 ● vs 〇 郷田真隆九段
2勝2敗のタイとなり、チーム糸谷は波に乗る服部四段に大切な一局を任せます。先手の服部四段は相掛かりに誘導し、郷田九段も受けて立ち先に飛先の歩を交換します。服部四段が▲8九飛と転回すると、郷田九段は7,9筋から反発します。服部四段は絶妙な受けを見せ、9筋から飛車を成り込みます。郷田九段は△7四香から反撃し、△2六香から挟撃態勢を作ります。服部四段も懸命に角を捨てて成香を取り、竜と"と金"で後手玉に迫りますが、郷田九段は落ち着いて"と金"で先手玉に迫り、即詰みに討ち取りました。

■六局目 糸谷哲郎八段 〇 vs ● 深浦康市九段
3連敗で先行されたチーム糸谷は「責任を取って」リーダーが出陣します。先手の深浦九段が雁木模様の駒組みを進め、糸谷八段は右四間飛車に構えます。糸谷八段は6筋の歩を交換してから、飛車を7筋に寄せて仕掛けます。深浦九段は6筋から反発し、角取りを放置して▲7七桂と飛車取りに跳ねましたが、糸谷八段は飛車を切ってから角を取り金得となります。深浦九段は敵陣に飛車を打ち込みますが、糸谷八段も王手で先手玉に迫ります。どちらが勝つのかわからない激闘となり、深浦九段は自分の頬を叩きながら攻め続けますが、後手玉は捕まりそうで捕まりません。反撃に転じた糸谷八段の手が震えているように見えましたが、そのまま即詰みに討ち取りました。

■七局目 山崎隆之八段 ● vs 〇 菅井竜也八段
3勝3敗の勝負どころとなり、チーム菅井はリーダーが出陣です。三局目と同じ顔合わせとなり、菅井八段が三間飛車を選択すると、山崎八段も8筋の位を取り前局と似た駒組みが進みます。山崎八段が更に7,5筋の位を取ると、菅井八段はダイヤモンド美濃の堅陣を組み、飛車を1筋に寄せて端攻めを狙います。山崎八段は角交換から竜を作りますが、菅井八段も1筋を突破し竜を作ります。後手優勢の局面となりましたが、山崎八段は▲7四歩~▲8六桂と勝負手を放ちます。菅井八段は冷静に角を切って香を入手しつつ先手の竜の利きを逸らし、△7七香から先手玉に迫り寄せ切りました。

■八局目 糸谷哲郎八段 ● vs 〇 郷田真隆九段
後がなくなったチーム糸谷はリーダーを投入し、チーム菅井は「さあ行こう」の掛け声とともに郷田九段が登場です。先手の郷田九段は角道を止めて矢倉に組みます。糸谷八段が5筋に飛車を振ると、郷田九段は2筋から仕掛けて角交換します。糸谷八段は6筋から仕掛けて銀桂交換に成功します。郷田九段も銀の両取りに桂を打ち、▲6三歩から大きく駒得します。たちまち大優勢の局面を築いた郷田九段は、5分近く時間を残したまま寄せ切る快勝となりました。

【チーム菅井 5勝 vs チーム糸谷 3勝】
チーム菅井は、二局目まで2連敗の状況からリーダーの菅井八段が2連勝して流れを取り戻しました。特に四局目にリーダー同士の対決を制したのが大きかったと思います。郷田九段もリーダーの作った流れに乗り五局目に好調の服部四段を降した後、決着局となった八局目は相手のリーダーを一刀両断にする会心譜となりました。深浦九段が勝利に恵まれないのは気がかりですが、2局とも中盤まで優勢の局面となっており、次戦に期待を抱かせる内容でした。
チーム糸谷は、2連勝の好スタートを切りましたが、ここまで好調だった糸谷八段と山崎八段が2敗し波に乗り切れませんでした。予選では振るわなかった服部四段が目覚ましい成長を遂げ、本戦ではエース級の活躍を見せていただけにここで敗退となるのは残念ですが、全員が「FREESTYLE」の名に相応しい観る者を楽しませる将棋を魅せてくれました。


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