「観る将」が観た第68期王座戦第五局
10月14日に行われた王座戦五番勝負第五局の感想です。ここまですべて先手番が勝って2勝2敗となり、いよいよ最終局での決着となります。いつも通り紺のスーツの永瀬王座に対し、久保九段は明るい色合いの和服での対局となりました。
先手の久保九段の作戦が注目されましたが、振り駒のの結果先手となり、初手▲5六歩から中飛車に構えました。永瀬王座が△4二銀と急戦を匂わせると、久保九段も▲7五歩と互いに相手の研究手順を外す駒組みとなりましたが、ここで永瀬王座が△5四歩と早くも開戦しました。他棋戦も含め、永瀬王座は最近は積極的な指し手が目立ちます。
永瀬王座は、角交換後に作った馬を飛車と交換しました。久保九段は2枚の角を打ち1筋の端攻めを交えて永瀬陣を攻め立てましたが、永瀬王座は丁寧に対応し隙を見せません。徐々に永瀬王座が優勢となりましたが、久保九段も第四局と同様粘りを見せ、容易に決め手を与えません。最後は永瀬王座が3度に渡り△6六歩と打って久保陣を弱体化させ、△3六桂から即詰みに討ち取りました。
これで本シリーズは、永瀬王座が3勝2敗で初防衛を果たしました。今期の永瀬王座は各棋戦で勝ちまくっている印象で、勝数では1位にランキングされていますが、棋聖戦や王位戦では挑戦者決定戦で藤井二冠に敗れ、叡王戦では記録的な激闘の末豊島竜王に敗れて失冠するなど、結果に恵まれていませんでした。しかしこの王座戦の防衛により無冠転落を防ぐとともに、規定により九段への昇段を決めました。まだ王将戦や棋王戦でも挑戦の可能性を残しており、更にタイトル獲得を増やす期待が掛けられます。
久保九段は本シリーズ前に「振り飛車でも戦えるというところを証明していければ」と語っていましたが、本対局後には「結果は出てないんで、それは証明できなかった」と語りました。しかし本シリーズにおける久保九段の振り飛車は、多くの将棋ファンを堪能させ、次の機会があることを信じさせるに足る内容でした。
5局に渡り我々をワクワクさせる好局を魅せてくれた両雄に、あらためて拍手を贈りたいと思います。
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