「観る将」が観た第34期女流王位戦五番勝負第三局
5月25日に福岡県飯塚市の麻生大浦荘で女流王位戦第三局が行われました。両者1勝1敗のタイスコアとなり、里見香奈女流王位が防衛に王手を掛けるのか、伊藤沙恵女流四段が奪取にあと1勝と迫るのか、注目の一局となっています。
前夜祭では、里見女流王位は「明日は自分の力を精一杯出し切って一生懸命、頑張りたいと思います」、伊藤女流四段は「和太鼓の演奏を披露していただき感動しておりました。自分も熱戦をお見せできるようにと思っております」と挨拶しています。
里見女流王位の向かい飛車
3日前まで名人戦第四局が行われていた対局室に、伊藤女流四段が濃紺のカーディガンと臙脂と紺の格子柄のスカートで入室し、里見女流王位はグレーのスーツ姿で入室します。先手の伊藤女流四段が飛先の歩を突き居飛車を宣言すると、里見女流王位は向かい飛車に振り美濃囲いに構えます。
里見女流王位が早くも角切りの強襲
伊藤女流四段が穴熊を目指すと、里見女流王位は13分の少考で、2筋の歩を突き捨て飛車をぶつけます。伊藤女流四段が44分の長考で飛交換に応じ、▲2八飛と自陣に打って角に当てると、里見女流王位は6分の少考で△7九角成と銀を食いちぎり、△4九飛と王手で打ち込みます。
伊藤女流四段の受け
伊藤女流四段が▲5九角打と持ち駒の角を投じて受けると、里見女流王位は△2六歩と垂らし、飛車で取らせてから△5九飛成と角と刺し違え、△3五角と王手飛車取りに打ちます。伊藤女流四段は▲4六飛打と受け、里見女流王位が△4五歩~△4六歩とと飛車を取る間に▲2一飛成と桂を取って竜を作り、角取りに▲3六歩と突きます。
竜を作り合っての攻め合い
里見女流王位は竜に当てて△2六飛と打ち、伊藤女流四段が竜で香を取ってかわすと、△4四角と引いて竜に当てます。伊藤女流四段は歩で角の利きを止め、里見女流王位が△2九飛成と竜を作って間接的に先手玉を睨むと、▲8八玉と戻して竜の利きから逃れます。
里見女流王位の攻勢
里見女流王位は△8五桂打で先手の角を引かせてから、△2六角と出て銀に当てます。次の59手目を伊藤女流四段が考慮中に昼休となりました。早くも激しい戦いとなりましたが、駒割りは銀香交換で後手がわずかに得しており、形勢も穴熊の完成前に攻め込まれた先手が苦しくなっているようです。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見女流王位が2時間57分、伊藤女流四段が2時間28分となっています。
伊藤女流四段の反撃
昼休が明け、伊藤女流四段は▲4八香と角の利きを止め、里見女流王位が△4七歩成と畳み掛けると、構わず▲7五歩とぶつけて後手陣の桂頭を狙います。里見女流王位が△4八角成と香を食いちぎり、△4八同"と"と銀を取ると、▲8六桂と打って後手の玉頭を攻めます。里見女流王位が△6三金と受けると、伊藤女流四段は攻防に▲7六角と打って銀に当てます。里見女流王位が銀を引いてかわすと、伊藤女流四段は▲7四桂と跳ねて、金駒を入手すれば1手詰みの形を作ります。
セオリー通りの追撃
里見女流王位が角取りに△5八"と"と寄ると、伊藤女流四段は▲1三角成と馬を作ってかわします。里見女流王位が△7七歩と金頭を叩くと、桂で取ると1手詰みなので伊藤女流四段は金桂交換に応じます。里見女流王位は△9九銀と王手し先手玉を端に追い、△9五歩と「端玉には端歩」で追撃します。
小駒の寄せ
伊藤女流四段は▲9四桂と詰めろ逃れの詰めろで後手玉に迫りますが、里見女流王位は歩と香で先手玉を追い詰めてから△9三銀と打って詰めろを逃れます。伊藤女流四段が歩を垂らして下駄を預けると、里見女流王位は竜で香を補充して詰めろを掛けます。伊藤女流四段は10分程考えましたが適切な受けがなく、次の手を指さずに投了を告げました。
まとめ
本局は、伊藤女流四段が穴熊への組み換えを目指した一瞬の隙に、里見女流王位が飛交換を迫って激しい展開になりました。伊藤女流四段は長考の末に飛交換に応じましたが、里見女流王位は角切りの強襲から攻め込み主導権を握りました。伊藤女流四段は懸命に凌いで玉頭から反撃しましたが届かず、里見女流王位は緩みなく先手玉に迫り寄せ切りました。
里見女流王位は持ち時間を2時間以上残しての快勝で2勝1敗となり、防衛にあと1勝となりました。対局後のインタビューでは「引き続き一生懸命頑張りたいと思います」と話しています。
カド番に立たされた伊藤女流四段は「早い時間から形勢を損ねてしまったので本当に申し訳ないです。少しでも立て直せるようにと思っています」と話しており、次局での巻き返しに期待したいと思います。
女流王位戦は新聞三社連合が主催しています。
棋譜は下記サイトをご確認ください。
http://live.shogi.or.jp/joryu-oui/