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第29期銀河戦決勝トーナメント1回戦 藤井銀河vs斎藤(明)四段

11月18日に、銀河戦決勝トーナメント1回戦第6局が放映されました。銀河戦の決勝トーナメントは、8つのブロックに分かれて本戦トーナメントを行い、最終勝ち残り者と最多勝ち抜き者の2名が進出します。この日はHブロック最終勝ち残り者として進出した前期初優勝の藤井聡太銀河と、Cブロックで3人抜きを果たして最多勝ち抜き者として進出した斎藤明日斗四段が顔を合わせています。

両者は今年9月に棋王戦の挑決トーナメントで初めて対局*し、藤井二冠(当時)が相掛かりの将棋を制しています。銀河戦は持ち時間10分の早指し棋戦であり、今年度好調の斎藤四段がどのような作戦で臨むのか注目されました。
*本局の収録は7月なので、実際には本局の方が先に指されています。

本局は振り駒で先手となった藤井銀河が角換わりに誘導すると、斎藤四段は△3三角と上がって注文を付け、先手から角交換する将棋となりました。斎藤四段は△3三金型のまま早繰り銀の駒組みを進め、藤井銀河は腰掛け銀に構えます。斎藤四段が積極的に△7五歩と仕掛けると、藤井銀河は2筋の継ぎ歩攻めで十字飛車を狙って▲2五歩と打ちます。斎藤四段が構わず8筋で銀交換すると、藤井銀河は後手の飛車を追い返してから▲2四歩と伸ばします。斎藤四段は△2七歩と飛頭を叩き、飛車取りと8筋突破を狙って△5四角と打ちます。

2つの狙いを同時に防ぐことができない藤井銀河は飛車を引き、斎藤四段が△8七角成~△8七同飛成と角金交換で竜を作ると▲8八銀と打って竜を追い返します。藤井銀河は▲5五角と後手の1筋と9筋の香の両取りに打ち、斎藤四段が△8七歩と叩くと▲9七銀とかわします。攻めが切れると駒損が響いてくる斎藤四段は△7九銀と打って先手玉に迫りますが、藤井銀河は悠然と▲1一角成と香を取って駒得を拡大します。

斎藤四段は△2二銀と上がって先手の馬の利きを逸らしてから△8八歩成と攻め掛かりますが、藤井銀河はこれも受けずに▲5五桂と攻め合いを選択します。斎藤四段は△6八金から飛車と金を交換し△7八飛と王手で打ち込み、△5五竜と桂を食いちぎります。この竜を▲5五同銀と取ると先手玉は簡単に詰んでしまいますが、当然読み筋の藤井銀河は▲6九銀と飛車取りに打って受けます。

竜と飛車の両取りの形になりましたが、斎藤四段は桂を犠牲に竜取りを外してから△7九飛成と食いつきます。藤井銀河が▲6六角と竜と"と金"の両取りに打つと、単純に竜が逃げて"と金"を払われては勝負にならない斎藤四段は竜と角の交換に応じます。藤井銀河が▲8二飛と打ち込んで挟撃態勢を作ると、斎藤四段は△7六角と攻防に利かせて簡単には諦めません。しかし藤井銀河が▲5八銀引~▲4八玉としっかり受けてから▲7七香と角取りに打つと、万策尽きた斎藤四段は無念の投了となりました。

本局は斎藤四段が新鋭らしく激しく攻め込み、藤井陣は一見かなり危険な状態に見えました。しかし相手の攻撃を完全に見切って攻めさせてから反撃に転じた大局観が素晴らしく、AIの評価値は藤井曲線を描く快勝となりました。事前にどこまで研究していたのかわかりませんが、早指し棋戦で相手のやりたいようにやらせる横綱相撲は、観る者をも楽しませる内容だったと思います。

藤井銀河は次の2回戦で、Dブロック最多勝ち抜き者として決勝トーナメントに進出し、1回戦では佐藤(康)九段を破った佐々木(大)五段との対局が決まっています。佐々木(大)五段は、過去の対戦成績が1勝2敗と苦しめられてきた相手であり、早指し棋戦でどのような将棋を魅せてくれるのか楽しみにしたいと思います。

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