2020年度将棋大賞女流名局賞候補
将棋界では年度毎に将棋大賞の表彰があり、2018年度からは女流名局賞が設けられています。また名局賞特別賞を女流の対局が受賞するケースもありますので、今年度のこれらの各賞受賞候補となる対局をピックアップしてみたいと思います。私は今秋あたりから女流タイトル戦を中心に数局観ただけですが、女流の将棋は振り飛車が多く序盤から激しい攻め合いになることも多いので、男性棋戦ではあまり観られない面白さがあると感じています。持ち時間も比較的短いので、せめてタイトル戦だけでも解説付きで動画生中継されると良いなとも思います。
これまでの受賞局は以下のようになっています。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2019年度 女流名局賞 第9期女流王座戦五番勝負第4局
●里見香奈 〇西山朋佳
2018年度 名局賞特別賞 第45期女流名人戦女流名人リーグ
●渡部愛 〇上田初美
女流名局賞 第29期女流王位戦五番勝負(全4局)
●里見香奈 〇渡部愛
2016年度 名局賞特別賞 第43期女流名人戦五番勝負第5局
●上田初美 〇里見香奈
2012年度 名局賞特別賞 第39期女流名人位戦五番勝負第5局
〇里見香奈 ●上田初美
やはりタイトル戦、しかも決着局が受賞しているケースが多いようです。20年度に私が観たのは、清麗戦・女流王将戦・倉敷藤花戦・女流王座戦しかありませんが、この中から候補を選ばせていただくと以下の3局になります。
第10期女流王座戦五番勝負第五局 ●里見香奈 〇西山朋佳
現在の女流タイトルを二分する2人が、今年度唯一タイトル戦の場で顔を合わせた女流王座戦の決着局です。後手の西山女流王座が少し強引に仕掛けたところを、里見女流四冠が的確に対処し勝勢を築いたかに見えました。しかし細い攻めをつないだ西山女流王座が猛追し、最後はどちらが勝ってもおかしくない手に汗握る攻防を繰り広げました。
昨年度も女流王座戦の決着局が選ばれており、本局が受賞すれば2年連続で同じ顔触れとなってしまいますが、現在の女流棋界を牽引する両者の攻防は見応えがありました。
第28期倉敷藤花戦三番勝負第二局 ●中井広恵 〇里見香奈
長らく女流タイトル戦の常連だった中井女流六段が、13年ぶりに女流タイトル戦の場に戻ってきました。すっかり第一人者となった里見倉敷藤花のゴキゲン中飛車に真っ向から挑み、序盤から積極的に仕掛けていきましたが、玉頭からの反撃に合い局面は次第に苦しくなっていきます。中井女流六段は端攻めに命運を託しましたが、ここで里見倉敷藤花は強烈なカウンターを放って寄せ切りました。
中井女流六段の堂々としつつも積極的な指し回しは、丁度同じ時期に豊島竜王に挑んだ羽生九段に通じるものを感じました。中井女流六段にとっては残念な結果になりましたが、両者の持ち味が出た好局だったと思います。
第42期女流王将戦三番勝負第三局 〇西山朋佳 ●室谷由紀
このシリーズは、相振り飛車からお互いに攻め合う激しい攻防が見所となりました。決着局となった本局は、後手の室谷女流三段が玉頭から金銀を前進させて相手の飛車角を抑え込み、少し優勢の局面を築いたように見えました。しかし西山女流王将も粘り強く反撃に転じ、最後は香を取っての詰めろ飛車取りが炸裂し寄せ切りました。
室谷女流三段にとっては初タイトル獲得もちらつく惜しい将棋でしたが、両者が激しく攻め合った内容は、観る将を楽しませてくれる好局だったと思います。
1月17日には、今年度の女流タイトル戦の最後を飾る女流名人戦が開幕します。名局が生まれることを期待しつつ、観戦したいと思います。