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「観る将」が観た第4回ABEMAトーナメント予選Bリーグ第三試合

5月15日にABEMAトーナメント予選Bリーグ第三試合が放映されました。チーム康光「シン・レジェンド」対チーム菅井「一刀流」の顔合わせとなっています。チーム康光は第二試合でチーム糸谷を破っており、この試合で3勝すれば予選通過が決まります。チーム菅井は予選通過のためには一局目からペースを掴んで一気に決着させるしかありません。

■一局目 森内九段vs菅井八段
初戦から勢いを付けたいチーム菅井は、リーダーが先陣を切ります。後手の菅井八段がゴキゲン中飛車を採用し積極的な姿勢を見せると、森内九段は超速3七銀戦法で対抗します。菅井八段は美濃囲いから、4二にいた銀を8二まで大移動し穴熊に組み替えます。森内九段はその間に中央に厚みを築き、相手の飛車を捕獲し優勢の局面を築きます。苦しくなった菅井八段は角交換から総攻撃を仕掛けます。森内九段は玉を上部に脱出しましたが、菅井八段が△5五金と王手角取りに打った辺りで形勢が逆転し、玉の遠さを活かした菅井八段が大逆転勝利を収めました。

■二局目 佐藤(康)九段vs菅井八段
チーム菅井は、大逆転勝ちで勢いに乗るリーダーの連投です。先手の菅井八段は、作戦会議で話していた通り、中飛車で穴熊に囲います。佐藤九段は角道を開けず、2筋の歩を伸ばしてから▲1三角と覗きます。菅井八段がうまくさばいて優勢の局面となりましたが、佐藤九段は馬を作って桂香を拾い、穴熊を崩しにかかります。着実に相手玉に迫った菅井八段が、最後は▲8六角のラインを活かして寄せ切りました。

■三局目 谷川九段vs郷田九段
先手の谷川九段が角換わりに誘導し、郷田九段も受けて立ち相腰掛け銀の定跡型となりました。谷川九段は飛車を6筋に転回し、郷田九段も飛車を4筋に回します。郷田九段が先に6筋から仕掛けて位を確保し、△6四角と好位置に据えます。更に郷田九段は角で銀を食いちぎり、相手の玉頭から殺到します。谷川九段も必死の粘って反撃しましたが届かず、郷田九段が寄せ切りました。

■四局目 森内九段vs深浦九段
3連敗と苦しくなってきたチーム康光は、流れを変えるべくエース投入です。先手の深浦九段は矢倉に誘導し、森内九段も受けて立ち脇システムになりました。深浦九段から角交換し、森内九段は6-7筋の歩を突き捨て馬を作ります。森内九段は研究範囲か、持ち時間を6分27秒まで増やしています。森内九段は相手の玉頭から殺到しますが、深浦九段も持ち前の粘りを発揮し1筋から反撃します。森内九段は盤石の指し回しで逆転を許さず、最後は即詰みに討ち取りました。

■五局目 佐藤(康)九段vs菅井八段
もう負けられないチーム菅井はエースを投入し、二局目と同じリーダー対決となりました。後手の菅井八段はまたも中飛車に振り、相穴熊の将棋となりました。先に菅井八段が7筋から仕掛け、佐藤九段も2筋から反撃します。菅井八段はまだ6分以上残しています。菅井八段は、穴熊攻略のお手本のような攻めを魅せ、懸命に粘る佐藤九段を押し切りました。

■六局目 谷川九段vs郷田九段
後がなくなったチーム康光は谷川九段を投入し、三局目と同じ顔合わせとなりました。後手の谷川九段が角道を止め雁木を目指すと、郷田九段は機敏に3筋から仕掛け銀交換に成功します。郷田九段は更に流れるような攻撃を魅せ、相手玉を追い詰めます。谷川九段も相手の玉頭から反撃し詰めろを掛けて下駄を預けましたが、時間に余裕のあった郷田九段は慎重に読み切り、即詰みに討ち取りました。

【チーム菅井 5勝 vs チーム康光 1勝】
第二試合までの結果により、かなり不利な状況にあったチーム菅井ですが、リーダーの菅井八段の獅子奮迅の活躍により予選突破を果たしました。振り返ると、一局目に菅井八段が森内九段に対して敗勢の将棋を逆転し、二局目も連投して佐藤(康)九段に圧勝したことでチームに勢いが付き、チーム康光は最後まで流れを取り戻すことができませんでした。
チーム菅井は、リーダーの菅井八段の3勝0敗に加え、第一試合では精彩を欠いた郷田九段がフィッシャールールに慣れてきたのか2勝0敗と大きく貢献しました。第一試合では手つきに焦りが感じられましたが、第三試合では谷川九段との対局で落ち着いて指せたことが良い結果に結びついた様に思います。
チーム康光は、個人的には優勝候補と考えていましたが、まさかの予選敗退となりました。レジェンドらしくオーダーも固定して堂々とした戦いぶりでしたが、団体戦における流れというものを軽視してしまったのかもしれません。

この結果、チーム戦としては3チームが1勝1敗で並びましたが、チーム菅井は7勝6敗(+1)、チーム糸谷は8勝7敗(+1)、チーム康光は6勝8敗(-2)となり、チーム菅井とチーム糸谷が1位突破を懸けてリーダー同士の決定戦を行うこととなりました。

■Bリーグ1位決定一番勝負 糸谷八段vs菅井八段
振り駒の結果後手となった菅井八段は、三間飛車から美濃囲いに構えます。これを見た糸谷八段は天守閣美濃に構え、5筋から仕掛けます。一時は糸谷八段が中央を制圧したかに見えましたが、菅井八段もうまく対応して5-6筋の位を取り返します。糸谷八段は2筋を突破し竜を作りますが、菅井八段は飛車を取らせる間に竜を取り、1位決定戦に相応しい激闘となりました。目まぐるしく攻守が入れ替わる難しい終盤戦となりましたが、最後は糸谷八段の踏み込みが届かず、菅井八段が長手数の即詰みに討ち取りました。

予選Bリーグは、チーム菅井「一刀流」が1位通過、チーム糸谷「FREESTYLE」が2位通過となりました。個性的な両チームが、本戦でも面白い将棋を魅せてくれることを期待したいと思います。

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