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ABEMAトーナメント2024 本戦準決勝第一試合

8月31日、ABEMAトーナメント2024の本戦準決勝第一試合が放映されました。1回戦でチーム渡辺を圧倒したチーム藤井「パイナップル」と、エントリーチームを降したチーム永瀬「川崎家」の、優勝候補同士の激突となっています。


一局目:羽生善治九段 vs 森内俊之九段

いきなりレジェンド同士の注目対局が実現します。振り駒で先手となった羽生九段が角換わり模様の出だしから菊水矢倉に組むと、森内九段は雁木に構えます。羽生九段は飛車を5筋に回してから歩を合わせ、森内九段が6筋の歩を突き捨ててから5筋の歩を取ると、▲6六銀とかわします。森内九段が同角と食いちぎり、△5七銀と放り込んで角銀交換し、先手陣に角を打ち込んで攻め掛かると、羽生九段は▲5三歩と金頭を叩き、桂取りに▲6四角と打って攻め合います。森内九段は△7七銀から銀交換して先手陣を崩し、桂を犠牲に馬を飛車と交換して竜を作り、羽生九段も▲5一飛から竜をつくると、△5九角と打ち込んで先手玉を追い詰めます。羽生九段は▲4三馬と銀を食いちぎり、▲2一竜と王手しますが、後手玉の上部脱出は阻止できず投了を告げました。
チーム藤井:0勝 - チーム永瀬:1勝

二局目:青嶋未来六段 vs 永瀬拓矢九段

チーム永瀬はリーダーが出陣し、同門対決となります。後手の青嶋六段は雁木に構え、永瀬九段が矢倉に組むと、6筋から仕掛けて△6五桂と跳ね、角道を通して間接的に9筋の香を睨みます。永瀬九段が5筋の歩を突き捨ててから▲3五歩とぶつけると、青嶋六段は8筋の歩を突き捨て、△8七歩と垂らして先手陣を乱します。永瀬九段は▲7四歩と伸ばし、青嶋六段が飛車を7筋に寄せて受けると、桂交換してから▲4六桂と打って銀桂交換し、▲6四銀打から2枚の"と金"を作って攻め込みます。青嶋六段は△5六桂~△7八歩と角を追い、金銀両取りに△6六桂と打って銀桂交換し、永瀬九段が▲5三桂成と飛び込んで角と交換すると、△3八銀から飛銀交換します。お互いに玉を上部に脱出して相入玉となり、持将棋が成立しました。

指し直し局は先後を入れ替え、永瀬九段が55秒、青嶋六段は13秒の持ち時間となります。後手の永瀬九段が一手損角換わりを採用すると、青嶋六段は右玉に構え、4筋から仕掛けます。永瀬九段が桂をぶつけて交換し、4筋の位を取ってから1筋を端攻めすると、青嶋六段は▲2六銀と後手の角の利きを遮ります。永瀬九段が△2五歩と打って銀を追い、△1七歩成と"と金"を作り、△3七角成と馬を作って先手玉に迫ると、青嶋六段は金の両取りに▲4四桂と打って反撃します。永瀬九段は馬で飛車を追って交換し、△5九飛と打ち込んで寄せ切りました。
チーム藤井:0勝 - チーム永瀬:2勝

三局目:藤井聡太竜王名人 vs 増田康宏八段

連敗スタートとなったチーム藤井はリーダーが出陣します。先手の藤井竜王名人が角換わりに誘導して相腰掛け銀の将棋となり、お互いに手待ちで間合いを測ります。藤井竜王名人は▲4五桂から仕掛け、増田八段が歩で桂を取りに行くと、1筋の香を歩で吊り上げてから▲5八角と打って香を取ります。増田八段は4筋の桂を取り、藤井竜王名人が▲7六香と据えると、銀香両取りに△6四桂と打ちます。藤井竜王名人は構わず▲7四歩と伸ばし、増田八段が銀桂交換してから△8五桂とぶつけると、銀交換に応じてから▲7四桂~▲8二銀と後手の飛車を攻めます。増田八段が△8四銀と打って角と交換すると、藤井竜王名人は▲6二銀と打って飛車を捕獲します。増田八段は金取りに△7五香~△6八角と反撃しますが、藤井竜王名人は▲5二桂成から即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - チーム永瀬:2勝

四局目:羽生善治九段 vs 永瀬拓矢九段

チーム藤井は自ら手を挙げて羽生九段が出陣します。後手の羽生九段が横歩取りに誘導し、両者とも浮き飛車に構えます。永瀬九段が▲8五歩と伸ばして角を交換すると、羽生九段は△8六歩と垂らします。永瀬九段は飛車取りに▲6五角と打ち、羽生九段が飛車をかわしてから△6四歩と角を追うと、▲7六角と引いてから8筋の歩を成り捨て、△8二歩と垂らして"と金"を作ります。羽生九段は7筋の歩を取り込んで角を追い、永瀬九段が"と金"で香を取ると、△4七歩~△4六銀と先手玉に迫ります。永瀬九段は▲8三角成と馬を作り、羽生九段が△7五銀とタダ捨てして△7六歩と桂頭を叩くと、▲5六銀と飛車を追ってから4筋の垂れ歩を除去します。羽生九段は△5五桂から攻め掛かりますが、永瀬九段は王手金取りに△4四桂と打ち、金を剥がして寄せ切りました。
チーム藤井:1勝 - チーム永瀬:3勝

五局目:青嶋未来六段 vs 森内俊之九段

リードしたチーム永瀬は森内九段を送り出します。先手の青嶋六段が向かい飛車に振り穴熊を目指すと、森内九段は角を交換して1筋の位を取ります。青嶋六段が▲6六角と間接的に後手玉を睨むと、森内九段は△9二角と遠見の角を放ち、5筋の歩を取ります。青嶋六段は飛車を3筋に回し、森内九段が飛車を走って竜を作ると、5筋に歩を垂らして"と金"を作り、3筋の歩をぶつけて銀交換します。森内九段は歩で先手の飛車の利きを止め、青嶋六段が角取りに▲5二銀と打つと、角で銀を食いちぎり、△3七銀と放り込んで穴熊を崩し、△2五桂と畳み掛けます。青嶋六段は"と金"で銀を剥がして自陣に埋めて粘りますが、森内九段は銀桂交換してから△3五香と飛金を田楽刺しにして、最後は即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - チーム永瀬:4勝

六局目:藤井聡太竜王名人 vs 増田康宏八段

後がなくなったチーム藤井はリーダーが出陣します。先手の増田八段は矢倉を選択し、藤井竜王名人は現代調の駒組みを進めます。増田八段が4筋の歩を交換すると、藤井竜王名人は6筋から仕掛けて銀桂交換し、△6五歩と叩いて銀交換し、角金両取りに△6六銀と打って金銀交換します。増田八段は飛金両取りに▲7二銀と打ち、藤井竜王名人が手抜いて飛車取りに△5五角と飛び出すと、▲5八飛と角に当て返します。藤井竜王名人は△4六角と王手し、飛金両取りに△6七銀と放り込み、増田八段が構わず▲4四歩と銀頭を叩くと、△5二銀とかわしてから飛車を取ります。増田八段は▲6三銀不成と金を取り、▲6二金~▲5二銀不成と後手玉に迫りますが、藤井竜王名人は△8七歩と垂らして詰めろを掛け、先手からの連続王手を凌いで逃げ切りました。
チーム藤井:2勝 - チーム永瀬:4勝

七局目:羽生善治九段 vs 森内俊之九段

チーム藤井は順番通り羽生九段を送り出します。先手の羽生九段は相掛かりに誘導し、森内九段が飛先の歩を交換し、7筋の歩をを縦歩取りしてから8筋に歩を合わせると、角を交換して▲8二角と打ち込み馬を作ります。森内九段は△5四角と据え、羽生九段が長考して3筋の歩を突くと、9筋の歩をぶつけます。羽生九段は手抜いて▲5六馬と引き付け、森内九段が9筋に"と金"を作ると、馬で飛車を追ってから9筋の香を取り、角取りに▲5六香と打ちます。森内九段が角を見捨てて2枚目の"と金"を作り、△9八飛成と竜を作ると、羽生九段は▲4五桂~▲3三歩成と攻め合います。森内九段は△6四香と打って馬に当てますが、羽生九段は▲7六馬と寄って竜に当て返し、▲2三飛成と銀を食いちぎって▲5三銀と後手玉を追い詰め、竜を取って▲4二飛と王手し寄せ切りました。
チーム藤井:3勝 - チーム永瀬:4勝

八局目:青嶋未来六段 vs 永瀬拓矢九段

追い上げられたチーム永瀬はリーダーが決着を付けに出陣します。後手の青嶋六段は雁木に組み、お互いに角の位置を変えながら間合を図ります。永瀬九段は4,1筋の歩を突き捨ててから2筋の歩を交換して角で取ると、青嶋六段は角の利きを活かして△2六歩と先手の飛車の利きを止めます。永瀬九段が▲4五桂と跳ね、1筋の香を吊り上げてから桂交換し、角で金を食いちぎって▲1三香成と飛び込むと、青嶋六段は6筋の歩をぶつけて反撃します。永瀬九段は後手の角を追って▲4五香と田楽刺しにして角香交換し、青嶋六段が△7七香と王手すると、▲6八玉とかわしてから根元の桂を取ります。青嶋六段が△6八香成と王手してから、飛車取りに△3八銀と打つと、永瀬九段は構わず▲4四歩と銀を取り、▲3三角~▲7三銀と挟撃態勢を作り、▲7七角成と後手の攻めの拠点となっていた成香を抜いて逃げ切りました。
チーム藤井:3勝 - チーム永瀬:5勝

準決勝第一試合の結果

チーム永瀬は、リーダーの永瀬九段が3戦3勝の活躍でチームを決勝進出に導き、森内九段も2勝して大きく貢献しました。増田八段は相手のチームリーダーと2戦して白星はありませんでしたが、その分決勝での活躍が期待できそうです。優勝候補同士の戦いを制し、チームの2大会連続優勝に向けて死角はありません。
チーム藤井は、リーダーの藤井竜王名人が2戦2勝で意地を見せましたが、リーダー対決できなかったことが、チームとして厳しい結果になった要因のひとつだったかもしれません。2枚看板として期待された羽生九段はこの日も1勝に留まり、前の試合まで大きく貢献してきた青嶋六段もこの日は白星に恵まれず、残念ながらここで敗退となりました。

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