女流ABEMAトーナメント2023 1回戦第二試合
3月18日、女流ABEMAトーナメント2023の1回戦第二試合が放映されました。チーム里見「微動」とチーム加藤「キングペンギン」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の呼称で記載させていただきます。
一局目:川又咲紀女流初段 vs 中村真梨花女流三段
チーム加藤は初出場の中村女流三段が先陣を切ります。後手の川又女流初段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、中村女流三段は向かい飛車に振り金無双に構えます。中村女流三段が9筋の位を取り▲9七桂と跳ねて端攻めを目指すと、川又女流初段は5筋の歩を突き捨て、3筋に歩を合わせて飛車で5筋の歩を取り返します。中村女流三段が▲8五桂~▲9三桂成と飛び込むと、作戦会議室では加藤女流三段が「真梨花攻めだ!大丈夫かなぁ」とつぶやきます。川又女流初段が桂で取ると、中村女流三段は9筋の歩を伸ばして桂を取り返します。川又女流初段が飛車を2筋に回すと、中村女流三段は6筋の歩をぶつけて飛車の横利きを止めますが、構わず2筋の歩を突き捨て△3四桂と打って攻め掛かります。中村女流三段も7筋の歩をぶつけて攻め合いますが、川又女流初段は△2六桂と王手し、玉を引かせて△3八歩と銀頭を叩きます。中村女流三段が7筋の歩を王手で成り捨てると、川又女流初段は玉で取り、作戦会議室では両チームのメンバーが「えーっ」と声を揃えて叫びます。中村女流三段は▲7六飛~▲9五角と連続王手しますが、川又女流初段は歩で角道を止めると△3九歩成と銀を取って王手し、△3八桂成と先手玉に迫ります。お互いに時間に追われる中、中村女流三段が▲3二"と"と入って下駄を預けると、川又女流初段は△7七歩成と銀を取って王手し、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム里見:1勝 - チーム加藤:0勝
二局目:里見香奈女流五冠 vs 加藤桃子女流三段
両チームとも連投を打診しましたが一休みしたいということで、早くもリーダー対決が実現します。先手の里見女流五冠が珍しく四間飛車に振り美濃囲いに構えると、加藤女流三段はミレニアムに囲います。里見女流五冠が4筋の歩を突いて角を追い、5筋の歩を突き捨ててから6筋の歩を突いて角道を通すと、加藤女流三段は△7三角と上がって先手玉を間接的に睨みます。里見女流五冠が2分近い長考で▲6六銀と上がると、加藤女流三段は1分程考えて5筋の歩を伸ばします。里見女流五冠が6筋の歩をぶつけると、加藤女流三段は8筋の歩を突き捨ててから角で6筋の歩を取ります。里見女流五冠が銀を前進して角に当てると、加藤女流三段は△8六角~△9五角と動いて飛成を狙います。里見女流五冠は歩で飛成を防ぐと、陣形を引き締めてから3筋の歩を突き捨てて桂頭を狙いますが、加藤女流三段は角取りに△6五桂と跳ねて攻め合います。加藤女流三段は△5七桂成と飛び込み飛角交換し、△3七歩と銀頭を叩いて玉で取らせ、△6七飛と角取りに打ち込みます。里見女流五冠は▲3五角打と2枚目の角を打って紐を付けますが、加藤女流三段は△5六歩と打って畳み掛けます。作戦会議室では清水女流七段が「これ嫌じゃない?」とつぶやいていますが、里見女流五冠は金で歩を取り、加藤女流三段の△5四飛が金銀両取りの十字飛車になります。里見女流五冠は▲3三銀と桂を取って飛び込み、金を取らせる代わりに▲3二成銀と後手陣の金を剥がしますが、加藤女流三段は△3六銀と王手し攻め掛かります。里見女流五冠は懸命に粘って竜を追い返しましたが、加藤女流三段は緩まず攻め続け最後は即詰みに討ち取りました。
チーム里見:1勝 - チーム加藤:1勝
三局目:清水市代女流七段 vs 渡部愛女流三段
両チームともこの日初登場の2人を送り出します。先手の渡部女流三段が矢倉を選択すると、清水女流七段は得意の右玉に構えます。渡部女流三段が飛先の歩を交換すると、清水女流七段は5筋の歩を伸ばして取り込みます。渡部女流三段が角取りに▲4五桂と跳ね、角を引かせてから5筋の歩を金で取ると、清水女流七段は桂をぶつけて交換します。清水女流七段が歩で飛車を吊り上げ、飛車取りに△1五角と飛び出しますが、渡部女流三段は冷静に飛車を引いて角成を防ぎます。早くも時間に追われた清水女流七段は飛車を2筋に回しますが、渡部女流三段は1筋の歩を突いて、角を追い返してから歩う打って飛成を防ぎます。清水女流七段が△8五桂と跳ねると、渡部女流三段は銀を上がってかわします。清水女流七段が9筋を端攻めして香を吊り上げ、歩で金頭を叩いて桂で取らせて△9七桂成と飛び込むと、渡部女流三段は6筋の歩をぶつけて反撃の狼煙を上げます。清水女流七段は△9五桂と打って攻め合いますが、渡部女流三段は▲8八香と打って受けると、▲6五桂と跳ねた手が金取りかつ角の利きが通って桂取りになります。清水女流七段は飛頭を歩で叩きますが、渡部女流三段は構わず金をを取り、▲6五桂と打って後手玉に迫ります。清水女流七段は銀を取って飛金両取りに△6七銀と打ちますが、渡部女流三段は構わず▲5三銀から王手を続け、そのまま長手数の即詰みに討ち取りました。
チーム里見:1勝 - チーム加藤:2勝
四局目:川又咲紀女流初段 vs 中村真梨花女流三段
チーム加藤は振り飛車党の中村女流三段が後手番を買って出て、一局目と同じ顔合わせになりました。先後は変わりましたが、川又女流初段が三間飛車で美濃囲い、中村女流三段が向かい飛車で金無双と、前局と同じ陣形になります。川又女流初段は9筋の位を取りますが、中村女流三段は△2五銀と前進し、4筋の歩をぶつけてから3筋の歩も突き捨てます。中村女流三段が1分程時間を使い、2筋の歩を合わせてから△3六銀と前進すると、川又女流初段は角で4筋の歩を取って飛車に当てます。中村女流三段が飛車を8筋に回すと、川又女流初段は歩を突いて飛成を防ぎ、▲3七歩と打って銀を交換します。中村女流三段は△6五銀と打って飛車を引かせ、△5六歩と突いて角の利きを飛車に当てますが、川又女流初段は▲5三歩と金頭を叩いてから▲5五歩と角の利きを止めます。中村女流三段が△2六歩と叩いて玉を引かせ、△4四金とぶつけると、川又女流初段は歩で飛頭を叩いて位置を変えてから金銀交換します。川又女流初段は歩で飛頭を叩いて先手を取ろうとしますが、中村女流三段は△5七歩成と飛び込みます。作戦会議室で加藤女流三段が「同金で切りちょんぱで勝ちか」と叫ぶと、声が届いたかのように中村女流三段は飛車を切って角を取り、王手で△2七角と打ち込みます。中村女流三段が銀を犠牲に金を剥がして馬を作り、飛車取りに△6六銀と打って攻め掛かると、川又女流初段は▲4一飛と後手陣に打ち込んで下駄を預けます。中村女流三段は馬を先手玉に近づけると、竜を作って即詰みに討ち取りました。
チーム里見:1勝 - チーム加藤:3勝
五局目:清水市代女流七段 vs 渡部愛女流三段
両チームとも順番を変えましたが、結果的に三局目と同じ顔合わせとなりました。先手の渡部女流三段が前局と同様に矢倉を選択すると、清水女流七段は飛車先を角で受けて手を変えます。渡部女流三段が角を引くと、清水女流七段は右玉に構えますが、飛先の歩を交換して角をぶつけます。清水女流七段は△4四角とかわしますが、渡部女流三段は銀を繰り出して3筋の歩をぶつけます。清水女流七段が△6五銀と出て圧力を掛け、7筋の歩を突き捨てて△8五桂と跳ねて桂交換し、飛銀両取りを狙って△4二桂と控えて打ちます。渡部女流三段は▲3五銀と出て桂跳ねを防ぎますが、清水女流三段は△5五角と出て、飛車を7筋に寄せて攻め掛かります。渡部女流三段が▲7四桂と王手で飛車が走るのを防ぐと、清水女流七段は金で桂を食いちぎって飛車を走ります。渡部女流三段が取った金で飛車を追い返すと、清水女流七段は歩で角を引かせ、△7七桂と打って銀と交換します。渡部女流三段が桂で王手してから▲5七歩と打って銀を捕獲すると、清水女流七段は8筋の歩を成り捨て、△9九角成と香を取って馬を作ります。お互いの玉頭で激しい戦いとなりましたが、清水女流七段は王手金取りに△8五角と打ち、先手の攻撃の要となっていた金を剥がして自陣を安全にすると、△6七歩成から鮮やかな即詰みに討ち取りました。
チーム里見:2勝 - チーム加藤:3勝
六局目:里見香奈女流五冠 vs 中村真梨花女流三段
チーム加藤は「後手番なので」と振り飛車党の中村女流三段が出陣します。先手の里見女流五冠が三間飛車に振ると、中村女流三段は向かい飛車に振り、川又女流初段戦と似た進行になります。9筋の位を取った里見女流五冠が▲9七桂と跳ねると、中村女流三段は△8四歩と突いて桂跳ねを防ぎます。里見女流五冠が8筋の歩をぶつけると、中村女流三段は△4五歩と突いて飛車の横利きと角の利きを同時に通します。里見女流五冠が角交換して▲6六角と打ち直すと、中村女流三段は金を4筋に寄せて桂に紐を付け、2筋と3筋の歩を突き捨ててから飛車取りに△8七角と打ちます。里見女流五冠は飛車を浮いてかわし、中村女流三段が9筋に馬を作ると、▲8五桂と跳ねて攻め掛かります。中村女流三段は飛車取りに馬を寄りますが、里見女流五冠は▲7四歩と打って飛馬交換を甘受します。中村女流三段が△8九飛と打ち込むと、里見女流五冠も金取りに▲5一角と打ち込みます。里見女流五冠が馬を作って飛車を追い、▲7四銀と後手陣に攻め掛かると、作戦会議室では清水女流七段が「お強い人です」とつぶやきます。時間に追われた中村女流三段は△2六歩と合わせて嫌味を付けますが、里見女流五冠も少し迷った手つきで▲7三歩と打ち、清算してから▲5五馬と王手します。里見女流五冠が取った金を自陣に打って飛車を追い、王手銀取りに歩頭桂を放ちますが、歩を打たれたと勘違いした中村女流三段は△2七歩成と指してしまい、王手放置で反則負けとなりました。
チーム里見:3勝 - チーム加藤:3勝
七局目:清水市代女流七段 vs 加藤桃子女流三段
チーム加藤は明るい笑顔で中村女流三段を労い、じゃんけんに勝ったというリーダーが出陣します。先手の加藤女流三段が相掛かりに誘導し、清水女流七段は先に飛先の歩を交換して四段目に引きます。加藤女流三段が角を交換して▲4五桂と跳ねると、清水女流七段は△4四銀とかわします。加藤女流三段は▲5三桂不成と飛び込み、銀で取らせて飛香両取りに▲6六角と打ち、▲1一角成と香を取って馬を作ります。清水女流七段は△3三角と合わせ、加藤女流三段が▲2一馬と桂を取ると、△9九角成と香を取り返して馬を作ります。加藤女流三段は飛先の歩を交換して▲3四飛と横歩も取り、清水女流七段が△3三香と飛車を追うと、▲5四飛と銀を食いちぎって王手金取りに▲5三桂と打ちます。早くも残り1分を切った清水女流七段は△5一玉と寄って金に紐を付けますが、加藤女流三段は飛車取りに▲8六香と打って追撃します。清水女流七段は飛車を5筋にかわしますが、加藤女流三段は▲4一銀の割り打ちから飛銀交換します。清水女流七段が△2九飛と打ち込むと、4分半程残していた加藤女流三段は30秒程考えて▲8二飛と打ち込み、▲4二馬と金を取って詰めろを掛けます。清水女流七段は△6九銀の王手から先手玉に迫りましたが届かず、加藤女流三段の快勝となりました。
チーム里見:3勝 - チーム加藤:4勝
八局目:川又咲紀女流初段 vs 渡部愛女流三段
チーム里見は相手がリーダーを温存すると予想し、川又女流初段に最終局につなぐ大役を託します。先手の川又女流初段が中飛車に振ると、渡部女流三段は左美濃に構えます。川又女流初段が美濃囲いに構えて▲6五銀と出ると、渡部女流三段は飛車を浮いて追い返します。川又女流初段も飛車を浮き6筋に回すと、渡部女流三段も飛車を6筋に回して受けます。渡部女流三段が4筋の歩をぶつけて角道を開けると、川又女流初段は飛車を5筋に戻して歩を支えます。渡部女流三段が銀取りに△6五飛と浮くと、川又女流初段は飛車を6筋に戻して銀を支えます。渡部女流三段が飛車取りに△5五角と出ると、お互いに飛車と角を取り合う激しい戦いとなります。渡部女流三段が銀取りに△6九飛と打ち込むと、川又女流初段は構わず▲7四角と打ちます。渡部女流三段は銀を取って竜を作りますが、川又女流初段も"と金"で後手陣の金を剥がし、▲6一飛~▲8一飛成と桂を取って竜を作ります。渡部女流三段が先手玉を間接的に睨む△6四角と打つと、川又女流初段は竜角両取りに▲6五金と打ちます。渡部女流三段は桂で先手玉のコビンをこじ開け、角で王手してから竜を逃がしますが、川又女流初段は"と金"を作って攻め掛かります。渡部女流三段は先手陣の桂頭を攻めますが、川又女流初段が歩で馬を追うと、△3三馬と自陣に引き付け竜に当てます。川又女流初段は▲4五桂と馬取りに跳ねて竜を素抜かれ、作戦会議室の里見女流五冠が「あ゛ーーっ」と叫びます。川又女流初段は数手指し続けましたが、渡部女流三段は手堅く応じて寄せ切りました。
チーム里見:3勝 - チーム加藤:5勝
1回戦第二試合の結果
チーム加藤は、リーダーが自身の初戦でリーダー対決を制してチームに勢いをつけ、タイスコアに追いつかれた七局目にも快勝して流れを引き戻しました。渡部女流三段も2勝してチームに貢献し、初出場の中村女流三段も初めは緊張で駒を持つ手が震える様子が画面越しにも感じられましたが、貴重な1勝を挙げて徐々に大会の雰囲気にも慣れてきたようです。決勝では、頼もしいリーダーを支える2人が、経験豊富な相手チームからどれだけ白星を挙げられるかが勝敗を左右しそうです。
チーム里見は、里見家の母親のお手製のブローチを身に付けて戦ったそうで、前回と同じメンバーを揃えたチームの結束力は高く、全員が白星を挙げてあと一歩のところまで迫りました。八局目に勝てば最終局はリーダー同士の再戦という状況の中、川又女流初段が優勢の局面を築きながら惜しくもバトンをつなぐことはできませんでしたが、見事な戦いぶりだったと思います。
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