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「観る将」が観た第47期棋王戦挑決トーナメント 藤井二冠vs斎藤(明)四段

9月2日に棋王戦の挑決トーナメント2回戦、藤井聡太王位・棋聖と斎藤明日斗四段の対局がありました。藤井二冠はタイトルホルダーの資格でシードされ挑決トーナメントからの出場です。斎藤(明)四段は予選で本田(奎)五段らを破り、挑決トーナメントへの進出を果たしました。斎藤(明)四段は今年度12連勝を記録するなど好調で、勝ち数ランキングでは全棋士中2位の17勝(9月1日対局分まで、未放映のテレビ対局を除く)を挙げています。両者は今回が初めての対局となりました。

本局は振り駒で先手となった藤井二冠の誘導で、相掛かりの将棋となりました。藤井二冠は飛先の歩を交換した後、▲9七角と出て後手の銀を△6三銀と引かせ、▲4五銀と出て後手の金を△3三金と上がらせるなど、積極的に動いて後手の駒組みに制約を与えます。斎藤(明)四段が28手目を考慮中、昼休となりました。形勢はほぼ互角、残り時間は藤井二冠が3時間25分、斎藤(明)四段が2時間49分となっています。

昼休明け、斎藤(明)四段が3三金型の陣形を整えようと2筋の歩を突くと、藤井二冠は4五にいた銀を▲3六銀と引いて仕掛ける構えを見せます。斎藤(明)四段は△1三桂と跳ねて受けましたが、藤井二冠は桂頭を狙って1筋から端攻めします。藤井二冠は銀を取らせる間に▲2三桂成と後手の角を質駒にしたまま、▲3四歩と垂らして戦火の拡大を図ります。更に7筋の突き捨てを入れてから▲3三歩成と後手陣に殺到すると、苦しくなった斎藤(明)四段は角を差し出して先手の攻め駒を1枚削ります。

防戦一方だった斎藤(明)四段は△4七香~△7六香と2枚の香を打って反撃し、△7七香成と角を取り返して迫りますが、飛車と金銀に守られた先手玉にはなかなか届きません。最後は藤井二冠が飛車で成香を食いちぎったところで、後手玉には長手数で持ち駒が1枚も余らない即詰みが生じたようです。藤井二冠が105手目に▲7二歩と王手すると、斎藤(明)四段は秒読みの声を聞きながら投了を告げました。

本局は藤井二冠が序盤から積極的に動いて、後手が目指す駒組みを許しませんでした。斎藤(明)四段も若手精鋭らしく柔軟な発想で凌ぎ、中盤まで互角の形勢を維持しました。しかし藤井二冠は後手の端桂を咎めて桂得すると、徐々に駒得を拡大して形勢もリードします。寄せに入ってからの手順はいつも通り緩みなく、鮮やかに即詰みに討ち取る完勝となりました。解説の高見七段が、ABEMAトーナメントでチームリーダーを務める藤井二冠にフィッシャールールで勝つコツを聞いたところ、「自然にやってください」とアドバイスされたという裏話を披露していましたが、まさに自然な手を積み重ねて勝つお手本のような将棋だったと思います。

藤井二冠はこれまで棋王戦での活躍がなく、意外なことに本局が挑決トーナメント初勝利となりました。今年度は、同様に挑戦権争いに絡めなかった叡王戦や竜王戦で壁を突き破っていますので、棋王戦でもタイトル挑戦への期待が膨らみます。次局3回戦では、順位戦A級で無傷の3連勝と好調な斎藤慎太郎八段との対局となりますので、白熱した好局を期待したいと思います。

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