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ABEMAトーナメント2023 本戦1回戦第二試合

8月5日に、ABEMAトーナメント2023の本戦1回戦第二試合が放映されました。Dリーグ2位のチーム康光「駅伝」とBリーグ2位のチーム斎藤「飛慎隊」の顔合わせとなっています。


一局目:大橋貴洸七段 vs 黒田尭之五段

チーム康光は青いジャケットの大橋七段が先陣を切ります。振り駒で先手となった黒田五段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換してから7筋の歩も取ります。黒田五段は2度に渡り飛車をぶつけますが、大橋七段は交換を拒否し、角道を止めて穏やかな駒組みを目指します。黒田五段は飛車で3筋の歩も取り、2筋の歩を合わせて後手の金を上ずらせ、角を交換して攻め掛かります。黒田五段が飛車を7筋に回して桂取りに▲7四歩と伸ばすと、早くも時間に追われた大橋七段は飛車取りに△6五銀と出て切り返します。黒田五段が飛車を見捨てて桂を取って"と金"を作ると、大橋七段は飛車を引いて"と金"に当てます。黒田五段が金取りに▲4三角と打ち、▲6三桂と追撃すると、大橋七段は△4二金と角に当てます。黒田五段が▲6一角成と飛車に当てて馬を作り、▲4三"と"と寄って詰めろを掛けると、大橋七段は攻防に△8四角と打って凌ぎます。黒田五段は細い攻めをつなぎ、大橋七段が懸命に先手陣に攻め掛かるのを手堅く受けて寄せ切りました。
チーム康光:0勝 - チーム斎藤:1勝

二局目:高見泰地七段 vs 斎藤慎太郎八段

チーム斎藤はリーダーが出陣し、同学年対決となります。先手の高見七段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換すると、斎藤八段は銀冠の形を作ります。高見七段も▲7七桂と跳ねて飛車を追ってから銀冠の形を作ると、斎藤七段は飛先の歩を合わせて桂交換し、下段飛車に構えます。高見七段が9筋から端攻めすると、斎藤七段は△7二金と寄って受けます。高見七段が香を犠牲に飛金両取りに▲8四桂と打って金桂交換すると、斎藤八段は8筋に歩を合わせて攻め掛かります。高見七段は▲9七金と打って辛抱しますが、斎藤八段は△8一香と打って畳み掛けます。高見七段は飛車を4筋に回して飛先の歩を交換し、飛交換を目指しますが、斎藤七段は飛交換を避けつつ金を取って馬を作ります。最後は斎藤八段が馬で金を食いちぎって竜を作り、一気に寄せ切りました。
チーム康光:0勝 - チーム斎藤:2勝

三局目:佐藤康光九段 vs 黒田尭之五段

チーム康光はリーダーが出陣し、この日既に1勝している黒田五段との初対局となります。オールラウンダーの両者の戦型が注目されましたが、相居飛車の将棋となり、後手の佐藤九段が飛先の歩を交換して角も交換します。黒田五段が左美濃に囲うと、佐藤九段は雁木に構えます。黒田五段が▲5六角と自陣に据えて3筋の歩をぶつけると、佐藤九段は6筋の歩を突き捨ててから3筋の歩を取ります。黒田五段が▲2三角成と飛び込むと、佐藤九段は飛頭を歩で叩いてから飛車取りに△3六角と打ちます。黒田五段が▲3二馬と金を食いちぎってから飛車と角を交換すると、佐藤九段は△2九飛と打ち込み竜を作ります。黒田五段は▲4四銀と突進し、佐藤九段が構わず△6五桂と跳ねると、銀を交換して飛車取りに▲6四角と打って馬を作ります。佐藤九段が△4四角と攻防に放つと、黒田五段は▲5三銀と打ち込んで清算します。黒田五段が▲4四角から後手玉に絡みつくと、佐藤九段は自陣に飛車角を打って粘ります。最後は黒田五段が金桂で竜を奪って寄せ切りました。
チーム康光:0勝 - チーム斎藤:3勝

四局目:大橋貴洸七段 vs 冨田誠也四段

チーム斎藤は予選で3勝してリーダーから贈られたオーダースーツを着用した冨田四段が出陣します。後手の冨田四段が四間飛車に振り美濃囲いに構えると、大橋七段は▲5五角~▲4六角と転回し、飛先の歩を交換します。冨田四段が△4四角と出て6筋の歩をぶつけると、大橋七段は2筋の歩を伸ばします。冨田四段は6筋の歩を取り込んでから△2六歩と打って飛車の利きを止め、桂をぶつけて交換します。大橋七段が飛車を走って2筋に"と金"を作ると、冨田四段は6筋に飛車を回し、角を取らせる代わりに△5五金~△6六金と突進します。冨田四段は更に△6七歩~△6八金と畳み掛けますが、大橋七段は構わず飛車取りに▲5三"と"と攻め合います。冨田四段は飛車を見捨てて攻め込みますが届かず、大橋六段は9筋を端攻めして即詰みに討ち取りました。
チーム康光:1勝 - チーム斎藤:3勝

五局目:大橋貴洸七段 vs 斎藤慎太郎八段

チーム康光は勝った大橋七段が連投します。先手の斎藤八段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となります。斎藤八段は▲4五桂と仕掛け、大橋七段が銀を2筋に引くと、桂を5筋に成り捨てて7筋の桂を取りにいきます。斎藤八段が4筋の歩を突き捨ててから▲3七角と据えると、大橋七段は玉を6筋に寄せて受けます。斎藤八段は6筋の歩を突き捨ててから飛車を6筋に回し、大橋七段が金を上がって受けると、▲5五銀とぶつけて銀交換し角で取ります。大橋七段が銀と桂で角を追うと、斎藤八段は▲5五桂と王手し、銀桂交換してから▲1一角成と香を取って馬を作ります。大橋七段が飛車を4筋に回すと、斎藤八段は桂取りに▲5三銀と打ち、▲3二銀と金を取って馬を取らせる代わりに▲4三銀成と後手玉に迫ります。斎藤八段が▲6五香と打って後手の玉頭を狙うと、大橋七段は△5五桂と打ち、歩で飛車の利きを止めます。斎藤八段は▲6四香から後手玉を追い詰め、大橋七段の反撃をかわして逃げ切りました。
チーム康光:1勝 - チーム斎藤:4勝

六局目:高見泰地七段 vs 黒田尭之五段

勝利まであと1勝となったチーム斎藤は、リーダーからのオーダースーツ贈呈が懸かる黒田五段が出陣します。後手の黒田五段が前の2局とは変えて三間飛車に振り美濃囲いに構えると、高見七段は▲6八角~▲3五銀と前進します。黒田五段は歩で銀を追い返すと、金銀を盛り上げて3筋から逆襲しますが、高見七段は▲7七角~▲6五歩と1筋の香を狙います。黒田五段が銀を引いて角の利きを止めると、高見七段は2筋に"と金"を作り、角をぶつけて交換します。黒田五段は2筋の歩を突いて飛車の活用を図りますが、高見七段は▲1六角と打って飛車に当てます。黒田五段は飛車を諦めて△3七角成と桂を取って馬を作りますが、高見七段は▲7一飛と打ち込み香を取って竜を作ります。苦しくなった黒田五段が9筋を端攻めすると、お互いに自陣の傷を消して仕切り直します。黒田五段が馬を自陣に引き付けて竜と交換し、△6九飛と打ち込んで竜を作ると、高見七段は桂で後手玉のコビンを開けて▲4六角の王手竜取りで竜を取ります。黒田五段は懸命に粘りますが、大きく駒得した高見七段は焦らずに寄せ切りました。
チーム康光:2勝 - チーム斎藤:4勝

七局目:佐藤康光九段 vs 冨田誠也四段

後がないチーム康光はリーダーが出陣します。先手の冨田四段は中飛車に振り、佐藤九段が6筋に銀を繰り出すと、飛先の歩を交換してから美濃囲いに構えます。佐藤九段が5筋の位を取り△6五銀左とぶつけると、冨田四段は銀交換に応じます。佐藤九段は△7六銀と突進し、冨田四段が飛車を7筋に回して受けると、△7五銀と打って銀を支えます。佐藤九段は2枚の銀で先手の大駒を押さえ込み、△8七飛成と竜を作ると、△4七銀成と銀交換します。冨田四段は6筋の歩を伸ばして銀に当て、桂で取らせて▲7二飛成と竜を作ると、銀と金を取り合ってから竜を交換します。冨田四段が▲8一飛と打ち込み自陣に竜を引き付けると、佐藤九段は△6九飛と打ち込んで攻め掛かります。両者時間に追われる中、冨田四段は▲7七角と王手竜取りから竜を抜きますが、佐藤九段は銀を取って▲5七角と打ち込みます。冨田四段は自陣に飛車を打って凌ぐと、▲5五角と王手し守りにも利かせます。冨田四段は1筋を端攻めして▲1三歩と垂らし、いつの間にか1分以上に増やした時間を使って▲5六銀と自陣を補強してから▲1一飛と打ち込みます。佐藤九段は自陣に金を打って粘りますが、冨田四段は▲5三歩と垂らして金銀両取りに▲4五桂と打ち、後手陣の金銀を剥がして即詰みに討ち取り、241手の大激戦を制しました。
チーム康光:2勝 - チーム斎藤:5勝

第二試合の結果

チーム斎藤は、黒田五段が一局目と三局目に勝利し、チームに勢いを呼び込みました。冨田四段も決着局では若々しい将棋で劣勢を跳ね返し、チームの勝利に大きく貢献しました。リーダーの斎藤八段は、3勝すればオーダースーツをプレゼントする公約(?)でメンバーのモチベーションを上げるとともに、自身も安定した成績を残していることが、若い2人に伸び伸びと指させる要因になっているように思います。
チーム康光は、リーダーの佐藤九段が白星に恵まれず、波に乗ることができませんでした。2局とも優勢な局面を築きましたが、終盤の難所で時計の叩き合いとなり、若手の勢いに呑まれてしまった気がします。高見七段と大橋七段はそれぞれ1勝して意地を見せましたが、勝ち越すまでには至りませんでした。今大会での安定した成績により、次回大会でもどこかのチームに指名され活躍されるのを期待したいと思います。

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