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「観る将」が観た第49期女流名人戦第三局

2月5日に千葉県野田市の関根名人記念館で、岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第三局が行われました。0勝2敗とカド番に立たされた伊藤沙恵女流名人が反撃の狼煙を上げるのか、西山朋佳女流二冠が一気に奪取に成功するのか、注目の一局となっています。

前日に行われた歓迎セレモニーで、伊藤女流名人は「苦しい星取りになりましたが、自分の将棋を指すことに集中して、シリーズを盛り上げられたらと思います」、西山女流二冠は「明日は目の前の対局に集中して、皆さまに楽しんでいただける将棋を指せればと思います」と挨拶しています。

挑戦者の三間飛車

先手の伊藤女流名人が飛先の歩を伸ばすと、西山女流二冠は角道を止め、本シリーズでは3局連続となる三間飛車に振り美濃囲いに構えます。伊藤女流名人が左美濃に構えてから5筋の歩を突いて後手の銀を引かせると、西山女流二冠は高美濃に組み替えます。

挑戦者の仕掛け

伊藤女流名人が銀冠に組み替えると、西山女流二冠は5筋の歩を突き捨ててから飛車を5筋に回します。伊藤女流名人は2筋の歩を突き捨ててから4筋の歩をぶつけますが、西山女流二冠は25分の熟考で角取りに△6五桂と跳ねて攻め掛かります。伊藤女流名人が角をかわすと、西山女流二冠は銀を5筋に上がります。伊藤女流名人が金を5筋に上がって対抗すると、西山女流二冠は4筋の歩を取って角をぶつけます。

中盤の難所

伊藤女流名人が▲4四歩と垂らして角交換を拒否すると、西山女流二冠は角を5筋に引いて先手からの歩成を先受けします。伊藤女流名人が次の53手目を考慮中に昼休となりました。中盤の難所を迎えていますが、形勢はほぼ互角のようです。各3時間の持ち時間の内、残り時間は伊藤女流名人が1時間56分、西山女流二冠が1時間34分となっています。

決戦

伊藤女流名人が昼休を挟む16分の熟考でじっと8筋の歩を伸ばし、後手から角を8筋に転回する手を防ぐと、西山女流二冠は△5五歩と金頭を叩いて決戦を挑みます。伊藤女流名人は▲4五金と上がって銀に当てますが、取ると"と金"を作られてしまうので、西山女流名人は飛車を浮いて防ぎます。形勢はわずかに伊藤女流名人に傾いてきたようです。

女流名人の攻勢

伊藤女流名人が金を銀と交換し、すぐに▲4五銀と打って金に当てると、西山女流二冠は囲いを崩して△6三銀と上がって受けます。伊藤女流名人が銀を金と交換して飛車取りに▲4三金と打つと、西山女流二冠は銀で取ります。伊藤女流名人は飛車取りに▲4五桂と跳ねてから銀を取り返し、飛車取りに▲5四銀と打って攻め込みます。

四方にらみの角

西山女流二冠は飛車を2筋にかわしますが、伊藤女流名人は▲5五角と出て四方を睨みます。西山女流二冠は桂に当てて△4四歩と打って香を取られるのを防ぎますが、伊藤女流名人は手順に▲5三桂成と攻撃に厚みを加えます。苦しくなってきた西山女流二冠は残り時間も1時間を切り、角に当てて△5六金と打ちます。

玉頭からの反撃

伊藤女流名人は▲6四角と出て王手し、西山女流二冠に銀で合い駒させてから8筋に引きます。伊藤女流名人が角取りに▲5二歩と打ち、成桂で角を捕獲しに行くと、西山女流二冠は構わず8筋と7筋の歩を突き捨てて玉頭から反撃し、△5五金と引いて銀に当てます。

包囲網

伊藤女流名人の残り時間も1時間を切り、▲6三銀成と後手玉に迫ると、西山女流二冠は取られそうな角を引いて飛車の横利きを成桂に当てます。伊藤女流名人は▲5一歩成と"と金"を作って金を追い、▲5三成桂と寄って着々と包囲網を狭めます。西山女流二冠は自陣に持ち駒の金を投じて粘りますが、伊藤女流名人は歩で後手の飛車の横利きを止めます。

着実な寄せ

西山女流二冠が4筋の歩を突き、角の利きを通して間接的に先手玉を睨むと、伊藤女流名人は成銀を金と交換し、後手の玉頭で金を交換してから▲6六角と引いて詰めろを掛けます。西山女流二冠は銀を引いて自玉の退路を作りますが、伊藤女流名人は慎重に2分考え、守りの銀を▲8六銀と攻撃に加えます。西山女流二冠は後手陣を苦しめた先手の角を取って形を作りますが、後手玉には即詰みが生じており、▲7五銀と王手を掛けられると投了を告げました。

まとめ

本局は昼休明け、伊藤女流名人がじっと力を溜めたところ、西山女流二冠が積極的に攻め掛かりました。伊藤女流名人は的確に対応して後手の美濃囲いを崩し、大駒を押さえ込んで攻め切る快勝となりました。
伊藤女流名人は1勝2敗となりカド番の状況は続きますが、対局後のインタビューでは「少しほっとはしています」と言いつつも次局に向け「一生懸命頑張りたい」と話しました。西山女流二冠も「少し間が空くので、しっかり準備して臨みたいと思います」と話しており、次局以降の熱戦を期待したいと思います。

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