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「観る将」が観た第12期加古川青流戦決勝三番勝負

10月15-16日、加古川青流戦決勝三番勝負が兵庫県加古川市「鶴林寺」で行われました。加古川青流戦は、四段・奨励会三段上位者・女流棋士2名・アマチュア3名によるトーナメント戦で、決勝のみ三番勝負が行われます。若手にとっては登竜門とも言うべき棋戦で、過去の優勝者には永瀬拓矢王座や佐々木勇気七段が名を連ねています。持ち時間は各1時間と短く、フルセットになった場合は第二局と同日に行われます。

徳田拳士四段は2022年4月にプロ入りしたばかりの24歳で、先日行われた里見香奈女流五冠の棋士編入試験では第一局の試験官を務めています。プロ入り後は19勝1敗と驚異的な成績を残しており、現在16連勝中と絶好調です。今期は準々決勝で高田明浩四段、準決勝で冨田誠也四段を破って決勝に駒を進めました。

齊藤優希三段は2年前の新人王戦で決勝三番勝負に進出した経験があり、今期の新人王戦でもベスト4に進出している俊英です。三段リーグでは毎回昇段を期待されていますが年齢制限の壁も近づいてきており、本棋戦に優勝してプロ入りに弾みを付けたいところです。今期は準々決勝で里見香奈女流四冠(当時)、準決勝で山本博志四段を破って決勝に駒を進めました。

第一局 10月15日 14時開始

好所の角

振り駒で先手となった徳田四段が角換わりに誘導し、齋藤三段も受けて立ち相腰掛け銀の将棋となります。徳田四段が銀矢倉に組み4筋から仕掛け、1筋も突き捨ててから3筋の歩をぶつけると、齋藤三段は8筋を継ぎ歩で攻め6筋の歩もぶつけます。徳田四段は18分考えて4筋に歩を垂らしますが、齋藤三段は構わず△6四角と左右を睨む好所に据えます。

顔面受け

少し苦しくなった徳田四段は6筋の歩を突いて桂で取らせ、銀取りに構わず2筋の歩を突き捨てて後手陣に攻め掛かります。齋藤三段が11分考えて銀桂交換すると、徳田四段は▲3六桂と打って攻め駒を足します。齋藤三段は持ち時間を使い切って1分将棋となり、3筋の歩を取り込んで催促します。徳田四段が桂を跳ねて銀桂交換すると、齋藤三段は△3三玉と顔面受けで飛車に当てます。

角の痛打

徳田四段も1分将棋となり、飛車取りに構わず▲4三角と打ちます。齋藤三段は飛車を取ると金を取られて馬を作られるので△4三同金と応じますが、徳田四段は▲2二飛成と竜を作って後手玉に迫ります。

手堅い終息

齋藤三段は△8七歩の王手から先手玉を追い、持ち駒の角を△3六角と打って王手しますが、徳田四段は▲4七銀と手堅く受けます。齋藤三段はやむなく△4六角と援軍を送りますが、徳田四段は銀で角を取って▲2五角と打ち、そのまま寄せ切りました。

第二局 10月16日 10時開始

齋藤三段の研究か

先手の齋藤三段が相掛かりに誘導し、徳田四段が先に飛先の歩を交換します。齋藤三段が角道を開けると、徳田四段はその歩を飛車で取り1歩得となります。齋藤三段も飛先の歩を交換し、徳田四段が銀で7筋の歩を支えると、▲2三歩と角頭を叩きます。この手は角を1筋に上がれば受かると解説されている手で、齋藤三段の研究手順がありそうです。

戦線拡大

徳田四段が当然△1三角とかわして飛車に当てると、齋藤三段は飛車を五段目に引き、1筋の歩を突いて角頭を狙います。徳田四段は△2四歩と打って先手の飛車を4筋に追い、4筋の歩を突き捨てて角で取らせてから△3一角と引きます。齋藤三段が▲7七桂と跳ねると、徳田四段は△6四銀と上がって受けます。齋藤三段が9筋の歩を突き捨てて▲9三歩と垂らすと、徳田四段は7筋の歩を伸ばして先手の飛車の横利きを遮断しつつ桂頭を狙います。

徳田四段が押え込み

齋藤三段が9筋の香を走らせると、徳田四段は角取りに△4三銀と上がります。齋藤三段は読みを外されたのか11分の考慮で角を引きますが、徳田四段は△4四歩と打って飛車も引かせます。徳田四段は8分の熟考で桂取りに△7六歩と伸ばしますが、齋藤三段は構わず9筋の歩を成り捨てて▲9三歩と香取りに打ち直します。徳田四段は△7七歩成と王手で桂を取り、金頭を歩で叩いて引かせてから飛角両取りに△5四桂と打ちます。

齋藤三段の反撃

齋藤三段は▲9二歩成~▲8六香と後手の飛車を追いますが、徳田四段は冷静にかわします。齋藤三段は▲8四角と王手で飛び出し両取りを逃れ、徳田四段が△7三銀と合い駒すると、角で銀を食いちぎってから▲7六飛と回します。徳田四段は飛車で9筋の香を取り、齋藤三段が▲7三飛成と竜を作ると、△7二香と打って飛車と金を田楽刺しにします。

盤石の寄せ

齋藤三段が竜をかわすと、徳田四段は歩で先手陣を乱してから王手で△9八飛成と竜を作ります。齋藤三段は銀を自陣に投じて詰めろを逃れ、▲7三桂と打って詰めろを掛けますが、徳田四段が金をかわして逃れると続きません。持ち時間を使い切り1分将棋となった齋藤三段は金を寄せて自玉を守りますが、徳田四段が金銀3枚の堅陣に玉を早逃げすると、後手玉に迫る手がありません。徳田四段が△7七角と詰めろを掛けると受けも効かなくなり、齋藤三段は投了を告げました。

まとめ

棋戦初優勝

第一局は、徳田四段の仕掛けに齋藤三段が好所に角を配して優勢となりましたが、終盤に1分将棋となった齋藤三段が見せた隙を突いて徳田四段の逆転勝ちとなりました。第二局は齋藤三段が工夫を魅せましたが、的確に応じた徳田四段が徐々にリードを拡げ、そのまま押し切る快勝となりました。
二局を通してプロ入り後に快進撃を続ける徳田四段の勢いが勝り、2連勝で嬉しい棋戦初優勝を成し遂げました。

表彰式のコメント

表彰式では、徳田四段は「こういう賞をいただくために日々努力して、またこういう舞台に戻ってきたいと思います」と話しており、今後の活躍への期待が益々高まります。齋藤三段も「結果としては残念だったのですが、それでも加古川の大舞台で戦えて、本当にいい経験になりました。準優勝という結果でしたが、この経験を生かしてまた頑張りたいと思います」と話しており、晴れてプロ入りを果たす日を楽しみにしたいと思います。

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