「観る将」が観た第32期銀河戦本戦トーナメントHブロック決勝 藤井竜王名人vs近藤(誠)七段
10月31日に、銀河戦本戦トーナメントHブロック決勝が放映されました。銀河戦の本戦トーナメントは、持ち時間15分(切れたら1手30秒未満、1分の考慮時間10回)の早指し棋戦です。全棋士と女流棋士2人とアマ2人を8つのブロックに分け、各ブロックでパラマス式トーナメントが行われ、各ブロックの最終勝ち残り者と最多勝ち抜き者が決勝トーナメントに進出します。
3度目の優勝を目指す藤井聡太竜王名人は本戦トーナメント決勝からの登場です。近藤誠也七段は10回戦から登場し、三浦九段を降して決勝に進出しています。本局の勝者は、最終勝ち残り者として決勝トーナメントに進出します。
戦型は角換わり相腰掛け銀
振り駒で先手となった藤井竜王名人が角換わりに誘導し、9筋の位を取ると、近藤七段は飛車を4筋に回して先手からの仕掛けを牽制します。藤井竜王名人は▲6八銀と引き、近藤七段が飛車を8筋に戻すと、4筋の歩をぶつけます。近藤七段が再度飛車を4筋に回すと、藤井竜王名人は4筋の歩を取り込み、▲4五歩と打ち直して飛車を追い返してから▲4六角と据えます。
藤井竜王名人の仕掛け
近藤七段は狙われた6筋の歩を突き捨ててから飛車を8筋に戻し、藤井竜王名人が▲6七銀と立って備えると、7筋の歩もぶつけます。藤井竜王名人は手抜いて1筋と3筋の歩を突き捨ててから4筋の歩を伸ばし、近藤七段が8筋の歩を突き捨てて△8七歩と垂らすと、▲4五桂と跳ねて仕掛けます。
藤井竜王名人が角切りの強襲
近藤七段は△3四銀と立ってかわしつつ桂に当て返し、藤井竜王名人がいきなり▲7三角成と桂を食いちぎると、金で取ります。藤井竜王名人は▲5三桂成と飛び込み、近藤七段が△4七歩と金頭を叩くと、構わず銀の両取りに▲4六桂と打ちます。3筋の銀を取られると王手になるので、近藤七段が△3三金と上がって3筋の銀に紐を付けると、藤井竜王名人は▲5七金と寄ってかわします。
近藤七段の反撃
近藤七段は飛車取りに△3八角と打ち込み、藤井竜王名人が飛車を3筋に寄って角に当て返すと、4筋の歩を成り捨ててから△6六歩と銀頭を叩きます。藤井竜王名人は悠々と角を取り、近藤七段が銀を取ってから8筋の飛車を走ると、▲7七角と打って飛車に当てつつ間接的に後手玉を睨みます。近藤七段は王手角取りに△8八銀と打ち、藤井竜王名人が玉を6筋に上がってかわすと、角銀交換してから△8一飛と引いて守りに利かせます。
"と金"を作っての攻め合い
藤井竜王名人が▲5四成桂と銀を取ると、近藤七段は再度△6六歩と銀頭を叩いて先手陣を乱してから、△8八歩成と"と金"を作ります。藤井竜王名人は飛頭に歩を連打して後手の飛車の横利きを消し、3筋で銀桂交換してから▲4三歩成と"と金"を作ります。
逆転を許さない受け
近藤七段が△8九"と"と潜ると、次に王手で飛成を許すと先手玉も一気に危うくなるので、藤井竜王名人は歩で飛車を近づけてから▲7七銀と打って追い返し、自玉を安全にしてから▲3三歩と垂らして後手玉に迫ります。近藤七段は△2五金と上部に脱出路を作って粘りますが、藤井竜王名人は▲1四歩と垂らし、香で取らせて退路を封鎖し、▲3二歩成と2枚目の"と金"を作って王手します。近藤七段は、観戦者にもわかりやすい詰みの形まで指し続けてから投了を告げました。
まとめ
本局は藤井竜王名人が積極的に仕掛け、角切りの強襲から主導権を握りましたが、形勢はまだまだ互角で近藤七段も果敢に反撃に転じました。藤井竜王名人は的確に後手陣の急所を捉えてリードを奪い、近藤七段の飛車の侵入を許さず寄せ切りました。
藤井竜王名人は決勝トーナメントに進出し、1回戦で期待の新鋭岡部四段との対戦が決まっています。岡部四段が絶対王者を相手にどのような作戦で挑むのか、楽しみにしたいと思います。
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