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第83期順位戦A級8回戦

1月28日、順位戦A級8回戦の一斉対局がありました。

私が注目していたのは、5勝2敗で暫定トップに立つ佐藤天彦九段と、渡辺明九段の手術明けの膝に配慮して椅子席で行われた対局です。先手の佐藤九段が3手目に▲7七角と上がって向かい飛車に振る、意欲的な作戦を見せます。2度に渡る角交換の後、佐藤九段が飛車を7筋に寄って▲7五飛と走ったところで夕休となりました。AIの評価値は渡辺九段の56%とわずかに傾いていましたが、渡辺九段は休憩中に体調不良を理由に投了の意思を告げ、急転直下の終局となりました。
佐藤九段は、「座りながらの対局が辛いようであれば寝ながらでも」と対局続行を打診したそうですが、対局中も椅子に斜めに座るなど辛そうにしていた渡辺九段としては、とても続けられる状態ではないと判断したようです。かつてマスク不着用で対局途中に反則負けの裁定を下されたこともある佐藤九段ですが、この紳士的な対応は「棋士はこうあるべき」という姿勢を示しているように思います。

他の対局結果は以下の通りです(左が勝者)。
 中村太地八段 - 豊島将之九段
 永瀬拓矢九段 - 千田翔太八段
 菅井竜也八段 - 佐々木勇気八段
 増田康宏八段 - 稲葉陽八段

佐藤(天)九段が6勝2敗で暫定トップを維持し、永瀬九段が5勝2敗、増田(康)八段が5勝3敗で追っています。挑戦権争いはこの3人に絞られました。
一方、2人が降級する残留争いは、残念ながら2勝6敗の稲葉八段の降級が決まりました。残り1枠を巡り、3勝4敗の渡辺(明)九段、3勝5敗の豊島九段と菅井八段が厳しい状況に追い込まれています。
最終9回戦では、佐藤(天)九段vs佐々木(勇)八段、永瀬九段vs増田(康)八段千田八段の対局が組まれており、挑戦者が決まるのか、プレーオフにもつれ込むのか、非常に注目されます。渡辺(明)九段vs菅井八段、豊島九段vs千田八段の対局も組まれており、残留争いに直結する負けられない戦いとなります。また、膝の状態が懸念される渡辺(明)九段は、延期されている永瀬九段との対局が2月21日に予定されています。優勝争いと残留争いに影響する重要な一局であり、体調が回復することを祈念したいと思います。


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