Number将棋特集「藤井聡太と将棋の冒険」を読んで
ビジュアル・スポーツ総合誌「Sports Graphic Number」の将棋特集第2弾、「藤井聡太と将棋の冒険」を早速入手し読んでみた。昨年9月の第1弾からまだ4か月しか経っていないし、今回は少し内容が薄いかもしれないなという懸念は正直あったのだが、読み終えた今満足感に浸っている。
将棋に関するページ数は、前回と同様約70ページ。Numberの特徴である大きな写真をふんだんに使って棋士の魅力を伝えている。羽生さんやタイトルホルダーの記事はもちろん、ベテラン・中堅・若手・女流、色々な立場の棋士が、将棋の魅力を語っている。駒師やタイトル戦の舞台となるホテルの話も、とても興味深い。今号から連載となる大川慎太郎さんの「令和名棋士案内」も、将棋ファンとしては見逃せないものになりそうだ。
これから読まれる方もいると思うので個々の記事内容詳細に触れることは避けるが、特に私の心に残ったのは以下の記事である(もちろんすべての記事が魅力的なのは言うまでもない)。
地獄で見た光。
「藤井聡太、三段リーグ敗戦譜」というサブタイトルが付いている通り、三段リーグで藤井さんに勝った2人のインタビューだ。プロ入り直後に無傷の29連勝を成し遂げた藤井さんが、直前の三段リーグを1期抜けしたものの5敗(13勝)もしたというのは、地獄と呼ばれる三段リーグの過酷さを表す有名な話である。実際に戦い勝利した側が、当時の藤井さんをどのように見ていたのかを語っており興味深い。
さらなるフロンティアを目指して。
羽生さんが、竜王戦を戦いながら感じていたこと、藤井さんのタイトル獲得への想い、将棋はスポーツかという論議に対する見解など、淡々とインタビューに答えている。史上最高の棋士が、まだまだ強くなりたいという意欲を感じさせ、タイトル獲得通算100期の夢に期待を抱かせる内容だ。
生命としての将棋。
永瀬さんが少年時代を振り返り、現在の棋風を作り上げた経過を淡々と語っている内容は、ある意味衝撃的だ。「将棋に必要なのは努力のみ」と公言する永瀬さんの人間的な魅力が輝いていて、永瀬ファンが急増することを予感させる記事だ。
私の最盛期はこれからです。
十八世名人資格保持者であり、46歳でフリークラス宣言をした森内さんが、「将棋の技術はいまが一番高い。来年の方がもっと高くなる。」と言う。
昨夏のAbemaTVトーナメントで、藤井さんや永瀬さんを撃破したことも、「別に驚くこともない」と言う。森内さんの活躍を心から願いたくなるし、若々しいというより子供のような笑顔が印象的だ。
第1弾は、藤井二冠が誕生し将棋界(あるいは日本中)が興奮していた時期を、見事に切り取った一冊だったと思う。第2弾は、将棋界も落ち着きを取り戻し、次の時代を見据えてそれぞれの立ち位置を見つめ直している状況を的確に捉えている。
編集後記には「ナンバーは今後も将棋の魅力を伝えていきます」と明言している。今後の特集にも期待したいと思う。
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