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第5回ABEMAトーナメント 予選Eリーグ第二試合

7月16日に、ABEMAトーナメントの予選Eリーグ第二試合が放映されました。第一試合でチーム藤井を撃破したチーム渡辺「マンモス」と、エントリートーナメントを勝ち上がった3人がチームを組むエントリーチーム「下克上」の顔合わせとなりました。チーム渡辺は第一試合でも勝ち星を挙げた近藤誠也七段と渡辺和史五段が、好調のリーダーを支えます。エントリーチームは、いずれも初出場となる折田翔吾四段、黒田尭之五段、冨田誠也四段の3人が力を合わせて強豪に挑みます。

一局目:渡辺和史五段 vs 折田翔吾四段

エントリーチームは一局目からリーダーが登場します。先手となった折田四段が相掛かりに誘導し、先に飛先の歩を交換します。渡辺五段が角道を開けると、折田四段は飛先の歩を合わせて再度交換します。渡辺五段が角を交換して銀を上がって受け銀冠の形を作ると、折田四段はノータイムで▲4六角と打ちます。作戦会議室では渡辺名人が「えーっ!予定だね」と声を上げています。渡辺五段が△4二角と打って受けると、お互いに駒組みに戻って折田四段は金矢倉に組みます。折田四段が▲2六銀と上がって棒銀を見せると、渡辺五段は△4五歩と突いて角を追います。渡辺五段は8筋の歩を突き捨て、銀で取らせてから6筋の歩も突き捨てますが、作戦会議室では渡辺名人が一手一手ダメ出しをしています。渡辺五段は△6五同桂と跳ね、桂を取らせる代わりに銀を前進させて△7六銀と攻め込みます。折田四段が▲9五角と飛び出すと、残り10秒を切った渡辺五段は飛車を寄って角成を防ぎます。折田四段は▲7四歩と垂らして飛車で取らせて▲6二角成と馬を作りますが、渡辺五段は金銀交換してから△7六金と打って7筋突破を図ります。折田四段が▲7八玉と寄って顔面受けすると、渡辺五段は△5三角と打って先手の馬の位置を変えます。折田四段は▲7四金と打って飛車を追い、玉の上部脱出を図りますますが、渡辺五段は角を銀と刺し違えて竜を作ります。渡辺五段が△7六銀と引いて王手すると、作戦会議室では冨田四段が「痛ってぇ」と叫びます。渡辺五段は△7三角の王手竜取りから竜を取り、2枚飛車で入玉してきた先手玉を捕まえ即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:1勝 - エントリーチーム:0勝

二局目:渡辺明名人 vs 冨田誠也四段

先勝したチーム渡辺はリーダーが登場し、エントリーチームは冨田四段が表情を引き締めて「結果に拘っていきたい」と言って出陣します。後手の冨田四段が得意の四間飛車に振り9筋の位を取ると、渡辺名人は穴熊に囲います。冨田四段は高美濃から銀冠に組み替えますが、渡辺名人は角を転回して2筋に狙いを定めます。冨田四段が先に6筋の歩をぶつけると、渡辺名人は2-3筋の歩を突き捨ててから▲6五歩と応じます。冨田四段は9筋の歩を突き捨て△9七歩と打って香を吊り上げてから△6五桂と跳ね、先手の金を上ずらせてから△4六飛と走ります。渡辺名人は銀取りに▲5五歩と突いて桂を取りますが、冨田四段は△9五歩と端攻めに託します。渡辺名人は1分以上考えて▲5七角と上がり、後手に竜を作らせてから▲3四歩と角頭を叩きます。冨田四段が△4四角とかわすと、渡辺名人は▲6四歩と打って後手陣に攻め掛かります。冨田四段も端攻めで得た香を△7六香と打って先手陣に攻め掛かりますが、渡辺名人は▲9三角成と馬を作り▲2四飛と走って挟撃態勢を作ります。作戦会議室では近藤七段が「穴熊の堅さが活きている」とつぶやきます。冨田四段は上部脱出を図って入玉を果たし、両者時間に追われながらの激闘となりました。冨田四段の懸命の粘りに一時は逃げ切ったかにも見えましたが、渡辺名人は自玉の周りに金銀を埋めて安全にしながら大駒で後手玉を追い返し即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:2勝 - エントリーチーム:0勝

三局目:近藤誠也七段 vs 黒田尭之五段

両チームとも順番通り、同い年の2人の対決となりました。先手の黒田五段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、近藤七段は穴熊を目指します。黒田五段が▲7五歩と飛先の歩を伸ばすと、近藤七段は飛車を浮いて受けます。黒田五段は▲9五角と飛び出し後手の飛車を9筋に閉じ込めると、飛車先の歩を突き捨ててから後手に馬を作らせ▲7四飛とぶつけます。近藤七段が△7三歩と打って飛成を防ぐと、黒田五段はじっと▲7五飛と引き、作戦会議室では冨田四段が「おっさすが」と叫びます。近藤七段が馬で桂香を拾う間に、黒田五段も8筋から飛車を成り込み桂香を拾います。近藤七段が△9五馬とぶつけると、黒田五段は馬交換に応じて▲6四銀とタダ捨ての勝負手を放ちます。作戦会議室では両チームから「おぉっ」と声が上がり、折田四段は「かっこええな」とつぶやいています。近藤七段が△6四同銀と応じると、黒田五段は金の両取りに▲4四桂と打ちます。近藤七段はもらった銀を△4三銀と打ちますが、黒田五段は▲4一角と追撃します。黒田五段は金桂交換してから角を見捨てて▲4四香と打ち、近藤七段が金で角を取ると▲4一同竜と大駒2枚を切っての猛攻を見せます。黒田五段は▲3二金から後手玉に迫りますが、近藤七段は自陣に銀と角を打って粘ります。黒田五段が▲3一金打から清算すると、近藤七段はたまらず△2二玉から脱出を図ります。黒田五段は▲3二銀から後手玉に迫り、そのまま寄せ切りました。
チーム渡辺:2勝 - エントリーチーム:1勝

四局目:渡辺和史五段 vs 黒田尭之五段

エントリーチームは快勝した黒田五段が連投です。後手の黒田五段が四間飛車に振り、すぐに角を交換して美濃囲いに構えます。渡辺五段が7筋の位を取ると、黒田五段は△6四歩~△6三銀と上がります。作戦会議室では渡辺名人が「それは流石に後手が勝てる気がしません」とつぶやきます。渡辺五段は玉頭に厚みを築き8筋の位も取りますが、黒田五段は一度3二に上がった金を△5四金と前進します。渡辺五段が▲3五歩と取り込んで銀頭を狙うと、黒田五段は△1二角と自陣角を打って凌ぎます。渡辺五段は▲2二歩と叩いて飛車で取らせて4筋からの攻撃を緩和しますが、黒田五段は△2五歩と突いて逆襲します。渡辺五段は▲4三角と打って歩で後手の飛車の利きを遮断しますが、黒田五段は飛車を4筋に戻して角を捕獲します。渡辺五段が▲7二馬と金と刺し違えると、黒田五段は△4九角~△2七角成と馬を作って飛車を追います。渡辺五段は▲6三歩と垂らしてから▲8五歩と継ぎ歩攻めをしますが、黒田五段は手抜いて△3六歩と桂頭を叩きます。渡辺五段は▲6四飛と銀を食いちぎって飛金両取りに▲5三銀と打つと、黒田五段は△6三玉と上がって金に紐を付けます。渡辺五段は▲4一飛と打ち込み桂を取って▲8一飛成と竜を作りますが、黒田五段は玉を中段に逃がし、両者時間に追われながらの激闘となりました。作戦会議室は渡辺名人が「いやぁー恐るべし粘り強さ。どうやって鍛えたらこうなるの」とつぶやいています。黒田五段は馬をぶつけて竜と交換し、△8九飛と打ち込んで寄せにいきます。渡辺五段も相手の歩頭に桂を打って粘りを見せましたが、最後は黒田五段が即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:2勝 - エントリーチーム:2勝

五局目:渡辺明名人 vs 冨田誠也四段

タイスコアとなり、二局目と同じ顔合わせになりました。先手の冨田四段が中飛車に振ると、渡辺名人は左美濃に構えます。冨田四段が穴熊を目指すと、渡辺名人は2筋の位を取って△1三角と覗きます。渡辺名人は銀冠に組み替え、お互いに金銀4枚の堅陣を築きます。渡辺名人が3筋の歩を交換して△4五歩と仕掛けると、冨田四段も7筋の歩をぶつけます。渡辺名人は△1五歩と端歩をぶつけますが、冨田四段は構わず7筋の歩を成り捨て桂取りに▲7九飛と寄ります。渡辺名人が歩で桂を支えると、冨田四段は▲1五歩と手を戻します。渡辺名人が△4七歩成と角道を通して飛金両取りを掛けると、冨田四段は▲3三歩成と桂を取り、歩で角道を遮断して"と金"と金の交換を甘受します。渡辺名人は△1六歩と垂らして△1五角と歩を取り、△3七歩と叩いて桂で取らせます。渡辺名人が△1七金と先手玉に迫ると、冨田四段は歩で香を吊り上げてから銀香両取りに▲2五桂と跳ねます。渡辺名人は再度△3七歩と金頭を叩きますが、冨田四段は桂で香を剥がしてから▲4八金とかわします。渡辺名人は首を傾げて玉を引きますが、冨田四段は▲3四桂~▲2六香と王手で玉頭戦に持ち込み、▲1七香と後手の攻め駒を剥がします。時間に追われた渡辺名人は飛車で角を食いちぎって△3九角と金銀両取りに打ちますが、冨田四段は▲2一飛と王手で打ち込み、▲1六銀と角に当ててかわします。渡辺名人は△2六角と香を食いちぎり、△4八角成と金を取った手が詰めろになったようで、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:3勝 - エントリーチーム:2勝

六局目:近藤誠也七段 vs 折田翔吾四段

先攻されたエントリーチームはリーダーが出陣します。後手の折田四段が角道を止めて雁木に構えると、近藤七段は左美濃に組みます。折田四段が飛先の歩を交換して横歩も取ると、近藤七段は水を口にして1分程考え▲3七桂と跳ねます。折田四段も2分近く手を止め△8六歩と合わせますが、近藤七段は▲7七角と上がり銀冠を組みます。近藤七段は更に時間を使って2筋の継ぎ歩攻めを見せ、折田四段が△8二飛と引くと、▲2四歩と取り込みます。近藤七段が▲4五歩と突くと、折田四段は△4五同歩と応じ、角を交換します。近藤七段は2筋の歩を成り捨て▲2二歩と桂頭を叩きますが、折田四段は手抜いて△8六歩と銀頭を叩きます。折田四段は△4五銀と桂を食いちぎり、金の両取りに△6六桂と打つと、作戦会議室では冨田四段が「おぉー、強気!」と叫び、渡辺名人は「痛いじゃん、これ」とつぶやきます。折田四段は金桂交換してから飛車取りに△4六角と打ち、銀取りに△6六金と打って後手陣に攻め込みます。近藤七段は歩で飛車を吊り上げて飛車取りに▲7五桂と打ちますが、折田四段は構わず金で銀を取り、△8七歩成と"と金"を作って金と交換します。折田四段は飛車取りに△3八銀と打ちますが、近藤七段も手抜いて▲1五角と王手します。折田四段は△3三桂と跳ねて受けますが、近藤七段は空いたスペースに▲2一飛と王手で打ち込み、▲5三桂と詰めろを掛けます。折田四段は△7九角と王手し、△5七角成から即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:3勝 - エントリーチーム:3勝

七局目:渡辺和史五段 vs 折田翔吾四段

タイスコアに戻したエントリーチームは勢いに乗るリーダーが連投し、一局目と同じ顔合わせになりました。先手の折田四段は宣言通り雁木を採用し、渡辺五段は金矢倉に組みます。渡辺五段は△6四角と上がりますが、折田四段は右銀を繰り出し▲6五歩~▲6六銀と角を追い返して6筋に厚みを築きます。渡辺五段が入城すると、折田四段は2分以上考えて▲4六歩~▲4七金と陣形を整えます。渡辺五段は△8四銀と上がり、折田四段が▲5七角と7筋に備えると、飛車を7筋に寄せて攻め駒を足します。渡辺五段が△7五歩と仕掛けると、折田四段は手抜いて▲4五歩と反発します。渡辺五段は△4五同歩と応じ、桂を跳ねさせて△4四銀とかわしてから7筋の歩を取り込みますが、折田四段は▲6四歩と伸ばして攻め合います。渡辺五段が飛車を6筋に寄せて、△7三銀と引くと、作戦会議室では渡辺名人が「渋い!渋谷の将棋指しだ、これは」と叫びます。渡辺五段は細かく飛車を動かしますが、早くも時間が10秒を切り、作戦会議室では渡辺名人が「時間だよ、おーい」とつぶやいています。渡辺五段は△8五桂から桂交換し、△5四桂と打って角を捕獲します。渡辺五段が角桂交換して△7七角と打ち込むと、折田四段は▲2六桂と打って反撃します。両者時間に追われての激闘となりましたが、渡辺五段が△7五角と銀を食いちぎり△5六金~△6六角成と先手玉に迫ると、折田四段は△5二銀から後手陣の金を1枚剥がし▲4一角と打ち込んで攻め合います。渡辺五段は先手からの攻撃を凌ぐと△4八馬と捨ててからの即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:4勝 - エントリーチーム:3勝

八局目:渡辺明名人 vs 黒田尭之五段


ここまで2連勝している好調の2人の対決となりました。後手の黒田五段が四間飛車に振り、角交換してから向かい飛車に振り直すと、渡辺名人は矢倉に組みます。黒田五段は△3五歩から仕掛けますが、渡辺名人は飛車取りに角を打って再度角交換して収めます。黒田五段が美濃囲いに組んでから△8四歩と玉頭の歩を突くと、渡辺名人は7筋と6筋の位を取ります。黒田五段が2分以上考えて△4四銀と引くと、渡辺名人は▲7六銀~▲6七金と玉頭に厚みを築きます。黒田五段も銀冠に組み替えると、渡辺名人は左右に睨みを利かして▲6六角と据えます。黒田五段は再び2分程考え、作戦会議室の冨田四段の「いやぁー指してくれ」という声が届いたかのように残り3秒で△3三歩と打ちます。お互いの陣形に隙がなく手待ちが続きましたが、時間に追われた黒田五段は飛車を5筋に回して勝負を賭けます。渡辺名人も飛車を5筋に回して受けると、黒田五段は桂取りに△2六角と打ちます。渡辺名人が飛車を3筋に回して桂を支えると、黒田五段は△4四銀と出て攻め掛かります。お互いに時間に追われる中、渡辺名人は桂を犠牲に"と金"を作りますが、黒田五段は△3七桂成から飛車を追い馬を作ります。渡辺名人が"と金"で後手陣の金を剥がすと▲7二金~▲5四角と王手飛車に打って飛車を取ると、黒田五段は9筋の端攻めに命運を託します。大きく駒得となった渡辺名人は▲3一飛と打ち込んでから自陣の飛車も▲5九飛と活用し、力強い手つきで▲9八歩と受けます。作戦会議室で冨田四段が「ひぇっ、マジか」とつぶやく辛い一手に、たまらず黒田五段は投了を告げました。
チーム渡辺:5勝 - エントリーチーム:3勝

第二試合の結果

チーム渡辺は、リーダーの渡辺名人が3戦3勝と貫録を見せ、力強くチームを予選1位通過に導きました。第一試合で藤井竜王を倒すなど、エース級の活躍を見せていた近藤七段は、この試合では白星に恵まれませんでしたが、渡辺(和)五段がきっちり2勝して穴を埋める活躍で、チームの勝利に大きく貢献したのは頼もしい限りです。過去の大会ではあまり目立った活躍のなかった渡辺名人が本来の力を発揮し、未知数だった初出場の渡辺(和)五段も結果を残したことで、このチームが優勝を争う力があることを示したと思います。
エントリーチームは黒田五段が2連勝するなど、チーム名となっている下剋上を起こす力があることを示しました。折田四段や冨田四段も粘り強い将棋を魅せ、強敵を相手に一歩も引かずに戦いました。次戦もチーム藤井という強豪が相手となりますが、どのような勝負を見せてくれるのか楽しみにしたいと思います。

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