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第4回ABEMAトーナメント本戦準決勝第一試合

9月4日に第4回ABEMAトーナメント本戦準決勝の第一試合が行われました。予選Dリーグ1位で本戦ではのチーム渡辺を破ったチーム永瀬「川崎家」と、予選Cリーグ1位で本戦ではチーム稲葉を破ったチーム木村「エンジェル」との対戦です。両チームともドラフト終了時に私が優勝候補に挙げた8チームの一角であり、ここまでリーダーが強烈なリーダーシップを発揮して勝ち上がってきています。永瀬王座と木村九段は王座戦五番勝負でも対決中であり、団体戦となるこの試合でも好勝負が期待されます。

■一局目 永瀬拓矢王座 ● vs 〇 池永天志五段
チーム永瀬は一局目からリーダー投入です。振り駒で先手となった池永五段は矢倉に誘導し、作戦会議での読み通りとなった永瀬王座は急戦調の駒組みを進めます。池永五段は中住まいに構えて相掛かり調に変化する趣向を見せ、永瀬王座は珍しく序盤から時間を使い角で飛車を取り交換します。池永五段は馬を作りますが、永瀬王座も竜を作ると馬と竜を交換します。激しく駒を取り合う中盤戦となり、永瀬王座が△5五角と金銀両取りに打ちますが、池永五段も王手馬取りで返します。池永五段は▲8一竜から寄せに入り、永瀬王座も必死に粘りますが、最後は▲5二桂成から即詰みに討ち取りました。

■二局目 増田康宏六段 〇 vs ● 木村一基九段
池永五段が金星を挙げたチーム木村は、後手番でリーダーが出陣です。先手の増田六段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。木村九段が右玉に組み替えると、増田六段は作戦会議で「あの作戦」と言っていた作戦なのか不明ですが、穴熊に組み替えます。木村九段が4筋から仕掛けると、増田六段も2筋の歩を突き捨て6筋から反発します。木村九段は△4七角と金銀両取りに打ち金を取って馬を作りますが、増田六段は飛車をぶつけて馬と交換します。木村九段は△4九飛と反撃しますが、増田六段も▲5一飛と打ち込み寄せに入ります。木村九段は頑強な粘りを魅せますが、増田六段は自玉の遠さを活かして詰めろの連続で迫り、最後は即詰みに討ち取りました。

■三局目 屋敷伸之九段 ● vs 〇 佐々木勇気七段
両チーム1勝1敗のタイとなり、三局目はこの日初登場の2人の対局となりました。先手の佐々木七段は角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。佐々木七段が3筋から仕掛け、7-5筋に戦火を拡大し銀桂交換の駒得となります。屋敷九段は歩で先手陣を乱して△7六桂と王手銀取りに打ちますが、佐々木七段は金で食いちぎって▲7五銀から後手の角を抑え込みます。屋敷九段は△4六角と飛び出し取られる間に金を取りますが、攻撃を封じられて早めの投了となりました。

■四局目 永瀬拓矢王座 〇 vs ● 池永天志五段
一局目と同じ顔合わせとなりました。同じ相手に連敗できない永瀬王座は先手で相掛かりに誘導し、飛先の歩を交換して7筋の歩も取ります。池永五段も飛先の歩を交換し、永瀬王座が角道を開けると△7二飛と寄って歩を狙います。永瀬王座は▲7七金~▲9七角と反発し金を前線に繰り出すと、更に2筋の継ぎ歩攻めから▲2四歩と垂らします。激しく駒を取り合う中盤戦となり、池永五段は△8八角と打ち込み馬を作りますが、永瀬王座も▲1二飛と打ち込み竜を作ります。池永五段が先手の竜を追って抑え込むと、永瀬王座は▲7三角から馬を捕獲し大駒4枚を独占します。永瀬王座は攻めを急がず受けに回り、池永五段は懸命に攻めをつなぎます。長手数の熱戦となりましたが、最後は永瀬王座が▲1三桂から即詰みに討ち取りました。

■五局目 増田康宏六段 ● vs 〇 佐々木勇気七段
チーム木村は先手番で佐々木七段を送り出します。佐々木七段は角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。増田六段は9筋の端歩を手抜いて△6五桂と仕掛けます。佐々木七段も4筋から反撃しますが、増田六段は△4七歩~△4八角と反発します。増田六段は駒損ながら先手陣を崩し優勢の局面と思われましたが、佐々木七段も▲5三馬と王手飛車で飛車を抜いて後手陣に迫ります。時計のたたき合いとなり、好調同士らしくどちらが勝ってもおかしくない大熱戦となりました。最後は増田六段が△7八飛から先手玉に迫りましたがわずかに届かず、佐々木七段が馬を守りに利かせて反撃し即詰みに討ち取りました。

■六局目 永瀬拓矢王座 〇 vs ● 木村一基九段
黒星が先行したチーム永瀬は順番を崩してリーダーを投入し、王座戦を戦うリーダー同士の対決が実現しました。先手の永瀬王座が相掛かりに誘導し、四局目と同様に飛先の歩を交換して7筋の歩も取ります。木村九段が△7五銀と棒銀を見せると、永瀬王座は▲9七角と端角で受けます。永瀬王座は1筋の歩を突き捨て香を吊り上げますが、木村九段は桂で受けます。永瀬王座は飛車を8筋に回して竜を作り、木村九段は竜を押し戻してから飛車を2筋に回して△2八角と打ち込みます。永瀬王座は▲3五角と飛車金両取りに打ちますが、木村九段は飛車を見捨てて△3九角成と馬を作り△5六桂と先手玉に迫ります。永瀬王座は凌いで▲1一飛から後手玉に迫り、木村九段の反撃をかわして勝利を掴みました。

■七局目 屋敷伸之九段 ● vs 〇 佐々木勇気七段
3勝3敗のタイとなり、チーム木村は好調の佐々木七段を「頑張ってね」という声で送り出します。先手の佐々木七段が三たび角換わりに誘導すると、屋敷九段は早繰り銀で対抗し△7五歩から仕掛けます。佐々木七段も2筋の継ぎ歩攻めを見せましたが、屋敷九段は△4四角と打ち8筋の突破を狙います。佐々木七段は▲5六角と牽制しますが、屋敷九段はいったん飛車を浮いてから△8六歩を決行します。佐々木七段は取った角を受けに使って粘りますが、屋敷九段は竜を作って先手玉に迫ります。先手陣はかなり危険な状態となりましたが、佐々木七段は後手陣の銀を奪って相手の竜を捕獲し、駒音高く▲5九香から反撃します。時間が少なくなっていた屋敷九段は粘りましたが、佐々木七段が寄せ切りました。

■八局目 増田康宏六段 ● vs 〇 木村一基九段
後がないチーム永瀬は増田六段を起用し、チーム木村は佐々木七段が推す池永五段ではなくリーダーが自ら出陣します。先手の増田六段は角換わりに誘導し、二局目と同様の駒組みが進みます。木村九段は再び右玉に組み替え、5筋の歩を突き合う形になりました。増田六段は4筋から仕掛け▲1七角と端角を打ちますが、木村九段は△4一飛と回って受けます。増田六段は9筋から端攻めし、入手した香を▲9八香と打ち二段ロケットを設置しますが、木村九段は△9六桂と打ち更に飛車を9筋に回して反発します。増田六段が香で飛車を攻めると、木村九段は馬を犠牲に8筋を突破して竜を作ります。増田六段は▲2二角から馬を作って反撃しますが、木村九段はひるまず寄せ合いを目指し即詰みに討ち取りました。

【チーム木村 5勝 vs チーム永瀬 3勝】
これまで驚異的な勝率で勝ってきた両チームのリーダーが相次いで敗れる波乱の幕開けから、七局目まで全局先手番が勝つという一進一退の展開となりました。
チーム木村は木村九段がすべて後手番で戦い、佐々木(勇)七段と池永五段にできるだけ先手で勝たせようという采配が光りました。特に佐々木(勇)七段は木村九段の思いに3連勝で応え、朝6時からフィッシャーの練習をしてきたという成果を魅せました。池永五段は一局目に相手のリーダーを破る殊勲の星を挙げ、チームの勝利に大きく貢献しました。このチームはリーダーがメンバーのモチベーションを高め、非常に良い雰囲気で決勝に臨むこととなりました。勝負強い木村九段、本戦に入って6連勝と絶好調の佐々木(勇)七段、大物食いの池永五段が、決勝でも素晴らしい戦いを魅せてくれることを期待したいと思います。
チーム永瀬は増田六段が二局目に相手のリーダーを破る殊勲の星を挙げましたが、五局目に佐々木(勇)七段との接戦を落として波に乗れませんでした。屋敷九段もこの日は後手番で2局戦い、勝ち星を挙げることはできませんでした。永瀬王座は六局目までに3局登場し2勝を挙げて気を吐きましたが、残念ながら2連覇はなりませんでした。


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