第64期王位戦挑戦者決定リーグの展望
お~いお茶杯王位戦は、前期成績によりシードされた4名と予選を勝ち上がった8名が、6名ずつ紅白2組に分かれて挑戦者決定リーグ(王位リーグ)を戦い、優勝者同士が挑戦者決定戦を行います。挑戦者は藤井王位との七番勝負に挑むことになります。先日、紅組と白組の組み合わせが発表されましたが、今期は王位リーグに初参戦となる棋士が6名も入るフレッシュな顔ぶれとなっています。
紅組
実績十分の3人と、新鋭3人が入る楽しみな組み合わせとなりました。2期連続で藤井王位に挑戦している豊島九段が優勝候補筆頭だと思いますが、大ベテランの羽生九段と若手の服部四段、徳田四段らの対局も楽しみです。
豊島将之九段
2007年プロ入りの32歳です。2期連続で藤井王位に挑戦しましたが、いずれも1勝4敗で敗退し、今期は3度目の正直を狙います。今年度は王位戦の他に王座戦でも挑戦者となり、王将リーグではあと一歩のところで挑戦権を逃しましたが、安定感は抜群です。
羽生善治九段
1985年プロ入りの52歳です。ご存じの通り王将戦七番勝負が進行中で、タイトル獲得通算100期を目指しています。今年度は棋王戦でも挑戦権獲得まであと2勝と迫るなど、昨年度の不振を脱却し新たな羽生将棋を築きつつあるようです。
永瀬拓矢王座
2009年プロ入りの30歳です。前期は予選敗退の憂き目を見ましたが、今期は予選で中村(修)九段や郷田九段らを降して王位リーグに戻ってきました。今年度は王座戦4連覇を果たした他、棋聖戦でも挑戦者となっています。
石井健太郎六段
2013年プロ入りの30歳です。居飛車も振り飛車も指しこなすオールラウンダーで、予選では佐藤(天)九段や青嶋六段を破って王位リーグ初参戦を果たしました。今年度は順位戦C級1組でも6勝1敗と好調で、安定感が増してきたように感じます。
服部慎一郎五段
2020年プロ入りの23歳です。予選では稲葉八段、糸谷八段、菅井八段と3人のA級棋士を倒して王位リーグ初参戦を果たしました。今年度は叡王戦で挑戦者決定戦に進出し、王将リーグでは渡辺名人と永瀬王座を破って自信を付けました。いつタイトル戦に登場しても不思議ではありません。
徳田拳士四段
2022年にプロ入りしたばかりの25歳です。予選では久保九段や都成七段を破って王位リーグ初参戦を果たしました。今年度の成績は勝率8割以上を維持しており、現在最も注目される新鋭の一人です。
白組
実績十分の渡辺名人に、20代の若手5人が挑む構図となりました。実力的には渡辺名人がリードしていると思いますが、優勝候補筆頭には敢えて増田(康)六段を挙げておきたいと思います。残留組の池永五段、佐々木(大)七段にも十分チャンスがあると期待しています。
池永天志五段
2018年プロ入りの29歳です。前期は惜しくも挑戦者決定戦で敗れましたが、堂々の残留を果たしました。3期連続の王位リーグで、今期は挑戦権獲得を目指しています。
佐々木大地七段
2016年プロ入りの27歳です。前期は3勝2敗で残留を果たし、6期連続の王位リーグ参戦となります。そろそろ殻を打ち破ってタイトル戦に登場して欲しい若手実力者の一人です。
渡辺明名人
2000年プロ入りの38歳です。タイトル獲得数は歴代4位の通算31期を誇りますが、王位戦とは相性が悪く、これまで挑戦者になったこともありません。今期の予選では木村九段や横山(泰)七段らを破って第58期以来の王位リーグ参戦を果たし、初の王位挑戦を目指します。
増田康宏六段
2014年プロ入りの25歳です。新人王戦を連覇したこともある期待の新鋭です。予選では丸山九段、千田七段、広瀬八段らを降して王位リーグ初参戦を果たしました。今年度は11月以降公式戦で10連勝し、朝日杯本戦2回戦では藤井王位をあと一歩のところまで追い詰めるなど好調です。
冨田誠也四段
2020年プロ入りの26歳です。予選では山崎八段や高田四段らを破って王位リーグ初参戦を果たしました。白組唯一の振り飛車党で、旋風を巻き起こすことができるか注目されます。
岡部怜生四段
2022年にプロ入りしたばかりの23歳です。予選では近藤(誠)七段、佐々木(勇)七段、佐藤(康)九段らを倒して、堂々の王位リーグ初参戦を果たしました。今年度前半は5割前後の成績でしたが、秋以降急速に勝率が上がっており、本リーグ戦での活躍が期待されます。