第5回ABEMAトーナメント 予選Cリーグ第二試合

6月4日に、ABEMAトーナメントの予選Cリーグ第二試合が放映されました。初めて参加したドラフト会議で同世代の松尾歩八段と阿久津主税八段を引き当てたチーム山崎「厄払い」と、麻雀を趣味とする青嶋未来六段と三枚堂達也七段をメンバーに選んだチーム広瀬「国士無双」の顔合わせとなりました。第一試合に勝ったチーム広瀬は、この試合で4勝すると予選突破が決まります。

一局目：阿久津主税八段 vs 三枚堂達也七段

チーム山崎は、個人戦だった第1回大会に出場経験のある阿久津八段が先陣を切ります。先手の阿久津八段が角道を止めて三間飛車に振り美濃囲いに構えると、三枚堂七段も左美濃に構えます。相居飛車を予想していた三枚堂七段が慎重に時間を使って高美濃に組み替えると、阿久津八段は6筋から仕掛けます。激しい駒の取り合いとなり、先手の駒台には角、後手の駒台には銀2枚と桂が乗ります。阿久津八段が▲7二角と打ち込むと、三枚堂七段は飛車取りに△4四桂と打ちます。阿久津八段は角で桂を食いちぎり、馬を作って▲4四馬と銀を取ります。三枚堂七段は飛車取りに△6七角と打ち、竜で金を食いちぎってから飛車角交換します。三枚堂七段が竜を作って先手陣を崩しましたが、阿久津八段も▲6一飛と打ち込んで金銀4枚で固められた後手陣に迫ります。作戦会議室では山崎八段が「これ勝ちそうですね」と話しています。阿久津八段は▲3三桂成から踏み込み、少し慌てた手つきで▲5一飛成と桂を食いちぎります。阿久津八段は▲3三馬と銀を食いちぎって攻め込みますが、三枚堂七段は△5二飛と自陣に打って凌ぎます。両者秒読みの中、どちらが詰まされるかという大熱戦になりましたが、2枚の角で詰めろを掛けた三枚堂七段が先手からの連続王手をかわして逃げ切りました。
チーム山崎：0勝　－　チーム広瀬：1勝

二局目：山崎隆之八段 vs 広瀬章人八段

チーム広瀬は絶好調の青嶋六段を残してリーダーが出陣し、リーダー同士の対決となりました。先手の広瀬八段が矢倉を選択して横歩を取ると、山崎八段は銀冠を作って袖飛車に構えます。山崎八段が飛車取りに△5五同銀と取ると、広瀬八段は構わず角取りに▲4五桂と跳ね、角を銀と刺し違えます。山崎八段は△4四角打と角2枚を連結しますが、広瀬八段は▲5三銀と打ち込んで後手玉を吊り上げます。広瀬八段は▲6六金と打って角と交換しますが、山崎八段は自陣に金を打って角打ちの隙を消します。後手の駒が躍動し始め、作戦会議室では青嶋六段が「やばいですねぇ」とつぶやいています。お互いに陣形の整備に戻り、山崎八段が自陣に持ち駒の銀を投じて補強すると、両チームの作戦会議室から「おぉー」「ひょえぇぇ」と叫び声が上がります。山崎八段が角道を開けて攻め掛かり角を取らせる間に金を取りますが、広瀬八段も金取りに▲7四桂と打ち2枚の角を続けて打ち後手陣に攻め掛かります。広瀬八段は角を飛車と交換し、山崎八段が△4七角と打って馬を作ると、広瀬八段も▲5一飛と打って竜を作ります。またもどちらの玉が詰まされるかという激闘となり、山崎八段が△6九角と詰めろを掛けると、広瀬八段は連続王手で後手玉に迫りましたが届かず投了となりました。
チーム山崎：1勝　－　チーム広瀬：1勝

三局目：松尾歩八段 vs 青嶋未来六段

タイスコアとなり、両チームともリーダーがエースと信頼するメンバーを投入します。後手の青嶋六段が三間飛車に振ると、両者松尾流穴熊を目指します。松尾八段が飛車をぶつけて交換し、お互いに飛車を敵陣に打ち込みます。松尾八段は角をぶつけますが、青嶋六段は△6七歩成と"と金"を作ります。松尾八段が▲4四角と角を取りますが、青嶋六段は構わず△6八"と"と金を取ります。両者の飛車の間に角が入り、松尾八段が1分半程考えて角金交換に応じると、青嶋六段は角を取らせて飛車を取ります。松尾八段が竜取りに▲4二歩と打ちますが、青嶋六段は構わず指をしならせて銀取りに△6七歩と打ちます。作戦会議室では三枚堂七段が「あやしーぃ」と叫びます。松尾八段は少し考えて▲6七同銀と応じ、青嶋六段も先手陣を乱してから△5一竜と馬に当ててかわします。青嶋六段が銀桂両取りに△6九飛と打ち込むと、松尾八段は▲2二角と打って銀に紐を付けます。青嶋六段は桂香を拾うと△8四桂～△7六歩と打ち、7七の地点に駒を打ち込んで先手陣の金駒を1枚ずつ剥がします。青嶋六段が竜で桂を食いちぎって△7七桂と打ち込むと、両チームの作戦会議室から「カッコいいー」と掛け声が掛かり、そのまま鮮やかに寄せ切りました。
チーム山崎：1勝　－　チーム広瀬：2勝

四局目：松尾歩八段 vs 三枚堂達也七段

チーム山崎は血が煮えたぎっていると言う松尾八段の連投です。後手の松尾八段が横歩取りに誘導し、三枚堂七段が横歩を取ると、△2六歩と垂らします。作戦会議室の阿久津八段が「新手なんじゃない」という手に、三枚堂七段も思わず1分程考え▲2八歩と受け、一手一手時間を使って飛車を引き▲2六飛と歩を払います。お互いに陣形の整備に戻りましたが、2歩損の松尾八段が8筋から仕掛け、3筋からも歩を交換して△3四銀と前進し、5筋の歩も突き捨てます。松尾八段が更に4筋の歩を突いて角道を開けると、作戦会議室では山崎八段が「燃えたぎってる！」と喜びます。三枚堂七段は角交換に応じ、飛車を1筋に寄せて角を打たれる筋を消します。松尾八段は歩で先手陣を乱してから飛車取りに△3五角と打ち、三枚堂七段は▲4六角と合わせると、飛車角交換してから銀取りに△3五桂と打ちます。三枚堂七段は金香両取りに▲2四桂と打ち、▲3二歩～▲3一角と王手を続けてから香を取ります。松尾八段は△4九飛と打ちますが、三枚堂七段は▲5九桂と打って凌ぐと▲5五香から後手玉に迫ります。両者秒読みの中ギリギリの攻防となりましたが、最後は三枚堂七段が飛車を取って寄せ切りました。
チーム山崎：1勝　－　チーム広瀬：3勝

五局目：阿久津主税八段 vs 広瀬章人八段

チーム広瀬は順番通り、リーダーが出陣します。先手の阿久津八段が角換わりに誘導し、1筋の位を取って早繰り銀に構えると、広瀬八段は腰掛け銀で対抗します。阿久津八段が▲5五銀とぶつけると、広瀬八段は△6三銀と引いて開戦を見送ります。広瀬八段が△4五歩と突いて銀挟みを狙うと、阿久津八段は▲3七角と打ちます。広瀬八段が飛車を4筋に回すと、阿久津八段は▲6四銀とぶつけて交換します。広瀬八段が△4五銀～△3六銀と4筋突破を狙うと、阿久津八段は1分程考えて▲5二銀と飛車に当てて放り込むと、両チームの作戦会議室から「はぁー」「おぉー」と声が上がります。この銀を金で取ると先手の角が成れるので、広瀬八段は30秒ほど考えて△8一飛と逃げますが、阿久津八段は更に▲3三角成と銀を食いちぎって攻め掛かります。阿久津八段は2枚の銀で飛車を捕獲しますが、広瀬八段も△4六角の王手飛車で飛車を取り返します。広瀬八段は△4六歩と伸ばしてから△4八飛と打ち込み寄せに入ります。阿久津八段は受けなしとなって▲6一飛と王手しますが続かず、無念の投了となりました。
チーム山崎：1勝　－　チーム広瀬：4勝

六局目：山崎隆之八段 vs 青嶋未来六段

後がなくなったチーム山崎はリーダーが出陣し、チーム広瀬は一発自摸を狙って今大会負け知らずのエースを投入します。後手の山崎八段が2手目に1筋の端歩を突く怪しい手を指しますが、青嶋六段は平然と四間飛車に振ります。山崎八段は早々に△2三銀～△2五歩と動いて先手の穴熊を牽制しますが、青嶋六段は落ち着いて高美濃囲いに構えます。青嶋六段が中飛車に振り直すと、山崎八段は△6三金と上がり、作戦会議室の阿久津八段が「頑張って欲しいけど狙いがわからない」と笑っています。青嶋六段も▲4六金と上がり、山崎八段が金取りに△1三角と覗くと、銀を上げて金を支えます。山崎八段は3筋の歩をぶつけて銀交換を目指しますが、青嶋六段は1筋の歩を突いて後手の端角を狙います。山崎八段が歩で銀を追うと、青嶋六段は角取りに▲1五同香と走ります。山崎八段が角を諦めて△1一飛と回ると、青嶋六段も▲1九飛と援軍を送ります。山崎八段が△1七歩と打つと、作戦会議室の阿久津八段が「これは一本どころではなく取ったか」とつぶやきます。青嶋六段は1分程考えて▲1七同飛と取りますが、山崎八段は△3六歩と突き銀で取らせて△3五角と飛び出します。作戦会議室では広瀬八段が「国士無双みたいな手があった」とつぶやきます。青嶋六段はやむなく飛車で香を食いちぎり▲1九香と打って辛抱しますが、2分以上残していた山崎八段は1分程考えて△1六香と合わせます。青嶋六段は懸命の粘りを見せましたが、山崎八段は竜を作ってもう1枚の飛車も打ち込み、上部から押さえ込んで即詰みに討ち取りました。
チーム山崎：2勝　－　チーム広瀬：4勝

七局目：山崎隆之八段 vs 三枚堂達也七段

チーム山崎はチームメイトの強い推しでリーダーが連投します。先手の山崎八段が普通に相掛かりに誘導し、三枚堂七段は先に飛先の歩を交換して飛車を五段目に引きます。山崎八段が中住まいに構えると、三枚堂七段は雁木を組んでから右玉に構えます。三枚堂七段が△4五歩と銀を追い、更に△6五桂と追撃すると、山崎八段は手抜いて7筋の歩を取り込みます。三枚堂七段が8筋の歩を合わせると、山崎八段は飛車取りに▲7七桂と跳ね、銀桂交換させて飛車を追い返します。三枚堂七段は角を交換して△4六歩と攻め掛かりますが、山崎八段は構わず▲7三歩成と反撃します。山崎八段が銀桂交換してから▲6五桂～▲7三角と王手を掛けながら後手の飛車を狙うと、三枚堂七段も△7一角と飛頭を受けながら先手の飛車に当てます。山崎八段は下段に引いた飛車をいったん7筋に回して"と金"を作って飛車を奪うと、再度▲2九飛と戻して▲2一飛成と挟撃態勢を作って鮮やかに即詰みに討ち取りました。作戦会議室では阿久津八段と松尾八段が顔を見合わせ、「魔法を観てる」「すげぇ」とつぶやく快勝となりました。
チーム山崎：3勝　－　チーム広瀬：4勝

八局目：阿久津主税八段 vs 広瀬章人八段

リーダーの連勝で勢いを付けたチーム山崎は、「行きます」と宣言した阿久津八段が出陣します。後手の阿久津八段が横歩取りに誘導し、広瀬八段は横歩を取るとすぐに飛車を引いて2筋に戻します。広瀬八段が中住まいに構えると、阿久津八段は右玉に構えて角を交換します。阿久津八段が△2五歩と打って先手に飛車を引かせて△3四飛と回ると、広瀬八段は▲2五桂と跳ねて桂交換を狙います。阿久津八段が△4五桂と跳ね違えると、広瀬八段は桂取りに▲5六角と打って催促します。阿久津八段は△3七歩と銀頭を叩き、広瀬八段が銀をかわすと△3八角と打ち込みます。激しく駒を取り合い、先手は飛角、後手は金銀を得て成桂が残りました。阿久津八段は1分程考えて角取りに△1五銀と打ちますが、広瀬八段は構わず▲2三角成と銀を取って馬を作ります。阿久津八段は角を取って成桂を飛車を交換し、△4九飛と打って先手玉に迫ります。広瀬八段は▲6五桂と跳ねて玉の退路を拡げますが、阿久津八段は△8四桂と打って王手銀取りを狙います。広瀬八段が▲8六飛と打って桂跳ねを阻止すると、阿久津八段は残り2秒まで考えて金を打って桂に紐を付けます。阿久津八段は香を飛頭に打って桂を跳ね銀桂交換を果たしますが、広瀬八段は▲8四香から金を剥がし▲8二金と打って後手玉の退路を断ちます。阿久津八段は△2六馬と引いて自玉のコビンに利かせますが、1分以上残していた広瀬八段は30秒ほど考え、▲5四桂と捨ててこじ開けるとそのまま鮮やかな都詰めに討ち取りました。
チーム山崎：3勝　－　チーム広瀬：5勝

第二試合の結果

チーム広瀬はメンバー3人がそれぞれ着実に白星を挙げ、チームの総合力で予選1位通過を決めました。リーダーの広瀬八段はリーダー対決を落としたものの、決着局では鮮やかな寄せを魅せるなど調子を上げてきました。青嶋六段は予選で4勝1敗の大活躍となり、チームの予選通過に大きく貢献しました。三枚堂七段は2試合とも一局目に勝利し、チームに流れを呼び込む貴重な戦力となりました。メンバー構成に隙がないことを改めて示し、本戦でも勝ち上がることを予感させる戦いぶりでした。
チーム山崎は、リーダーの山崎八段が相手チームの3人全員を撃破してチームを牽引しました。内容的にも山崎ワールド全開という自由奔放な将棋を魅せ、観る将を楽しませてくれました。一方、団体戦初出場の松尾八段と阿久津八段が終盤に時間を残せず、優勢な局面を作りながらも勝ち星を挙げることはできませんでした。次戦ではフィッシャールールにも慣れ、予選突破に貢献できるよう期待します。