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第5回ABEMAトーナメント 本戦1回戦第二試合

8月6日に、ABEMAトーナメントの本戦1回戦第二試合が行われました。Aリーグ2位のチーム三浦「シンジンオウ」とBリーグ2位のチーム斎藤「シン エンジェル」の顔合わせとなっています。

一局目:池永天志五段 vs 木村一基九段

チーム斎藤は、昨年のチームメイト池永五段との対局を「楽しみ」と言う木村九段が出陣します。先手の池永五段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。木村九段が早繰り銀を見せると、池永五段は角を交換して銀で7-8筋を守ります。木村九段は△5四角と好所に据え、△7六銀とぶつけて銀交換します。木村九段が9筋の歩をぶつけると、池永五段は手抜いて▲7二歩と垂らします。木村九段も構わず△8七銀と打ち込むと、池永五段は金を上がってかわします。木村九段はいったん角を引いてから銀を金と交換しますが、池永五段も▲7一歩成から桂を取ります。木村九段が△8七角成と馬を作ると、池永五段は自陣に銀を投じて馬を追い返します。池永五段は取った桂を▲4六桂と打ち、更に▲2五桂と跳ねて2枚の桂で後手陣に迫ります。木村九段は歩で先手陣を乱してから△2五銀と桂を食いちぎり、王手銀取りに△7六桂と打って銀を取り返します。木村九段は更に飛桂両取りに△2四金と打って桂を取りますが、池永五段は▲5五角と香と成桂の両取りに打ちます。木村九段は受けずに角取りに△4五金と前進すると、池永五段も構わず馬取りに▲7三桂成と飛び込みます。技の応酬で大激戦となり、角と馬を取り合い、金と成桂を取り合います。木村九段が馬を作って飛車を打ち込み先手陣に迫りますが、池永五段は▲6六角と攻防に打って反撃します。木村九段は自陣に金銀を投じて粘りましたが、最後は池永五段が即詰みに討ち取りました。
チーム三浦:1勝 - チーム斎藤:0勝

二局目:伊藤匠五段 vs 斎藤慎太郎八段

先行されたチーム斎藤は、リーダーが出陣します。先手の斎藤八段が角換わりに誘導し、お互いに持ち時間を6分以上に増やしながら、相腰掛け銀の将棋となります。伊藤五段が△5二玉~△4一飛と少し珍しい形を採用すると、斎藤八段は少し時間を使って▲2六角と据えます。伊藤五段は6筋の歩を突き捨て7筋の歩もぶつけますが、斎藤八段は▲6四歩と伸ばします。伊藤五段が飛車を8筋に戻すと、斎藤八段は更に時間を使って4筋の歩をぶつけます。伊藤五段は構わず△6五桂と跳ね7筋の歩を取り込みますが、斎藤八段は▲6七金と上がって手厚く受けます。伊藤五段は少し時間を使って9筋の歩を突き捨て、△6九角と打って馬を作ります。斎藤八段は▲6五銀右から銀と桂を取りますが、伊藤五段は馬を角と刺し違え8筋の飛車を走って王手飛車の筋を見せます。斎藤八段は玉を引いて逃れますが、伊藤五段は△8七銀と打って追撃します。斎藤八段が▲7六銀と歩を払うと、4分半程残していた伊藤五段が3分半ほど長考して△7八銀と金と交換します。伊藤五段が△8七角と王手で打ち込むと、斎藤八段は▲7七玉と顔面受けします。伊藤五段は△7六角成と銀を食いちぎって△8九飛成と竜を作りますが、斎藤八段は▲2四桂と待望の反撃です。伊藤五段は竜と銀で先手玉を追いましたが届かず、斎藤八段が即詰みに討ち取りました。
チーム三浦:1勝 - チーム斎藤:1勝

三局目:三浦弘行九段 vs 佐々木勇気七段

チーム斎藤は、前日が誕生日でケーキを贈られた佐々木七段の登場です。先手の三浦九段が角換わりに誘導し1筋の位を取ると、佐々木七段は△7五歩~△6五桂と仕掛けます。三浦九段が銀を上がって受けると、佐々木七段は飛先の歩を交換します。三浦九段は4筋の歩を取り込み、銀で取らせてから飛先の歩を交換しますが、佐々木七段は△7七歩から桂交換して金取りに△4六桂と打ちます。三浦九段は▲4三歩と玉頭を叩いてから▲7四歩と金頭を叩き、後手陣を乱して銀取りに▲5六桂と打ちます。佐々木七段は銀を引いてかわしてから金桂交換し、2分ほど長考して△6二玉と早逃げします。三浦九段は▲8六桂と打って銀を引かせ、再度▲7四歩と金頭を叩いて金を引かせ、銀取りに▲4五桂と跳ねて攻め掛かります。佐々木七段は構わず△4七歩と銀頭を叩いて拠点を作りますが、三浦九段は銀桂交換して▲7三銀と打ち込みます。佐々木七段が金銀交換に応じると、三浦九段は落ち着いて▲4六飛と回って飛成を目指します。佐々木七段は残り1秒まで考えて△4九銀と捨て、玉で取らせて△2七角~△4五金と飛車の侵入を防ぎます。三浦九段はいったん飛車を引き、▲4二金と打ち込んで挟撃態勢を作ると、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム三浦:2勝 - チーム斎藤:1勝

四局目:伊藤匠五段 vs 木村一基九段

両チームとも初戦に敗れたメンバーが出陣します。先手の木村九段が矢倉を選択し、伊藤五段は現代風の急戦調の駒組みを進めます。伊藤五段が6筋と8筋の歩を突き捨ててから△6五桂と跳ねて仕掛けると、木村九段は銀を上がって受けます。木村九段は3筋の歩をぶつけて反発しますが、伊藤五段は7,9,5筋の歩も突き捨て△7五銀と攻め掛かります。木村九段は堂々と銀を取り、伊藤五段は△9九角成と香を取って馬を作ります。木村九段が▲2二歩と桂頭を叩いて後手陣を壁形にすると、▲6五銀と桂を食いちぎります。伊藤五段は取れる銀を取らずに△8八歩と打ちますが、木村九段は▲5四銀と銀を取って前進します。伊藤五段も△8九歩成から"と金"で先手陣の金を剥がします。伊藤五段は銀取りに△5一香と打ちますが、木村九段は飛車取りに▲7三角と打ち込みます。伊藤五段が飛車をかわすと、木村九段は▲5一角成と香を食いちぎり、玉で取らせて▲5三銀と後手玉に迫ります。伊藤五段が攻防に△3六角と打つと、木村九段は▲4五香と打って銀取りを受けます。伊藤五段は△6九銀の王手から先手玉に迫りましたが届かず、最後は木村九段が"と金"を作って寄せ切りました。
チーム三浦:2勝 - チーム斎藤:2勝

五局目:三浦弘行九段 vs 佐々木勇気七段

チーム斎藤は「全員が1勝しよう」と佐々木七段が出陣し、三局目と同じ顔合わせとなりました。先手の三浦九段が前局と同様角換わりに誘導し腰掛け銀に構えると、佐々木七段は早繰り銀に構えます。三浦九段が4筋から仕掛けると、佐々木七段は1分以上考えて△5五銀とぶつけます。三浦九段が銀交換に応じると、佐々木七段は7筋の歩を突き捨ててから△4四銀と歩を払います。三浦九段は歩で後手玉を吊り上げてから▲4一角と打ち込みますが、佐々木七段はじっと玉を引いて受けます。三浦九段が1筋の歩をぶつけると、佐々木七段は角取りに△6一飛と引きます。三浦九段は▲6三角成と馬を作りますが、佐々木七段は△7六歩から反撃します。三浦九段は▲6二歩と飛頭を叩きますが、佐々木七段は構わず△7八銀不成から先手玉に迫ります。三浦九段は飛車を取り、佐々木七段の猛攻を凌ぐと▲5四馬から後手玉に迫ります。最後は三浦九段が▲1三銀から即詰みに討ち取りました。
チーム三浦:3勝 - チーム斎藤:2勝

六局目:伊藤匠五段 vs 斎藤慎太郎八段

チーム三浦は意表を突いてこの日白星のない伊藤五段が出陣し、二局目と同じ顔合わせとなりました。先手の斎藤八段が前局とは変えて相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。斎藤八段は横歩も取りますが、伊藤五段は金を前進して先手の飛車を2筋に帰しません。伊藤五段は△6五銀から飛車の捕獲を狙いますが、斎藤八段は4筋に飛車の逃げ道を作って▲4八飛と引きます。伊藤五段は△3五歩と銀頭を叩いて銀交換し△3六歩と伸ばしますが、斎藤八段も5筋の歩を突き捨ててから▲7六歩と角道を開けます。伊藤五段は3筋の歩を成り捨ててから角を交換し金の両取りに△5五角と打ちますが、斎藤八段は▲5三銀から清算して▲7一角と王手飛車を掛けます。伊藤五段も読み筋なのかノータイムで飛車を諦め△3七角成と金を取って馬を作ります。伊藤五段は更に飛車を追って金で取りますが、斎藤八段は▲7二馬と寄って攻め合います。伊藤五段も△3九飛と打ち込んで激しく攻め合いますが、斎藤八段は自陣に金を投じて補強すると▲8二飛と打って後手玉に迫ります。斎藤八段が時間に追われながら▲4五桂と打って後手玉の退路を断つと、伊藤五段は△4八成桂から先手玉に迫ります。斎藤八段は玉を上部に脱出させて凌ぐと、▲6二馬から王手の連続でそのまま即詰みに討ち取りました。
チーム三浦:3勝 - チーム斎藤:3勝

七局目:池永天志五段 vs 木村一基九段

チーム三浦は「久し振り」と言って池永五段が出陣し、一局目と同じ顔合わせになりました。先手の池永五段が前局と同様相掛かりに誘導すると、木村九段は受けて立ち、棒銀からするすると△6五銀と前進します。木村九段が△5四角と打って△7六銀から銀交換すると、池永五段は▲8六銀と打って飛車の侵入を防ぎます。池永五段が4筋の歩を突き捨て▲4五桂と跳ねると、木村九段は銀を上がって受けます。池永五段が銀取りに▲6六角と打つと、木村九段は△4三銀と持ち駒を投じて受けます。木村九段は△5四角と引いて桂取りを見せると、池永五段は桂の両取りを避けて▲7五銀と先受けします。木村九段は銀取りに△7四歩と突きますが、池永五段は手抜いて2筋の歩を突き捨て▲2二歩と桂頭を叩いて金で取らせます。木村九段が△8六歩から8筋突破を目指すと、池永五段は飛車取りに▲7一銀と打って飛車で取らせる間に攻め掛かりますが届きません。木村九段は力強い手つきで△7六桂と打って先手玉に迫り、そのまま寄せ切りました。
チーム三浦:3勝 - チーム斎藤:4勝

八局目:三浦弘行九段 vs 佐々木勇気七段

カド番となったチーム三浦はリーダーが出陣し、佐々木七段と3局目の対決となりました。後手の三浦九段が横歩取りに誘導しましたが、佐々木七段はしばらく横歩を取らずに駒組みを進めます。三浦九段も飛先の歩を交換せず、5筋の位を取ってから△8四飛と浮いて横歩に紐を付けます。佐々木七段が▲2五飛~▲5五角とぶつけると、三浦九段は桂を跳ねて角交換を拒否します。三浦九段が△5四飛と回って角を引かせてから△7四歩と突くと、佐々木七段は▲8五桂と跳ね▲7三歩と垂らします。三浦九段は金を寄って歩成を防ぎますが、佐々木七段は▲2五桂と跳ねて角交換を狙います。三浦九段は△5五歩と打って角交換を防ぎますが、佐々木七段は▲3三桂成と桂交換し▲4六桂と打って飛車を追います。三浦九段が角取りに△7四歩飛と寄ると、佐々木七段は▲7六飛と回して受けます。三浦九段が飛車取りに△6四桂と打って王手飛車を避けると、佐々木七段も▲8七金と上がって飛角両取りを避けます。技の応酬となりましたが、佐々木七段は角をぶつけて交換し、▲2二桂成と飛び込みます。両者時間に追われながらの寄せ合いとなり、お互いに玉を上部に脱出しての熱戦となりましたが、最後は佐々木七段が竜と馬を作って後手玉に迫り、即詰みに討ち取りました。
チーム三浦:3勝 - チーム斎藤:5勝

第二試合の結果

チーム斎藤は、リーダーが2戦2勝でチームを牽引しました。予選では波に乗れなかった木村九段も2勝1敗と勝ち越し、前回の準優勝チームのリーダーとしての貫録を示しました。佐々木七段は相手のチームリーダーとの3連戦となりましたが、最終局でリベンジを果たしてチームの勝利に貢献しました。元々優勝候補筆頭と思われるメンバーを揃えており、全員が苦しみながらも徐々に力を発揮しており、今後の戦いが楽しみになってきました。
チーム三浦は、予選では不調だったリーダーが2勝しチームを鼓舞しましたが、決着局で敗れて力尽きました。池永五段は第一局に勝ってチームに勢いをもたらすかに思われましたが、前回の優勝チームメンバーとして今回もエース級の活躍が期待された伊藤五段がこの日は勝ち星に恵まれず、流れを作ることができませんでした。残念ながらここで姿を消すことになりましたが、熱戦が多く観る者を楽しませてくれる好チームだったと思います。

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