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「観る将」が観た第6期清麗戦五番勝負第三局

8月6日に大成建設杯第6期清麗戦五番勝負第三局が、栃木県日光市の日光金谷ホテルで行われました。ここまで1勝1敗のタイスコアとなっており、福間香奈清麗が勝って防衛まであと1勝とするのか、加藤桃子女流四段が勝って奪取まであと1勝とするのか、注目の一局となりました。


福間清麗は中飛車

洋室に畳を敷いて設けられた対局室に、加藤女流四段が淡い桜色の着物と灰色の袴で入室し、福間清麗は淡い水色の着物と紫色の袴で入室します。先手の福間清麗は中飛車に振り、加藤女流四段が超速で銀を繰り出すと、銀対抗の形になります。加藤女流四段が4筋の歩を伸ばすと、美濃囲いに構えた福間清麗は2筋の歩を突きます。

加藤女流四段の工夫

第一局と同じ形になり、加藤女流四段が飛車を7筋に寄せて前例を離れると、福間清麗は▲6八角と引きます。加藤女流四段は21分の熟考で△3三角と上がり、福間清麗が▲5七金と上がると、△5五銀とぶつけて銀交換し、1歩得となります。福間清麗が▲6六金と上がって後手の角を追い返し、4筋の歩をぶつけると、加藤女流四段は△2四角と覗きます。

厳しい香の両取り

福間清麗が2筋の歩を伸ばして角に当て、更に▲3六銀と打って角を追うと、加藤女流四段は22分の熟考でやむなく△4六角とぶつけて角を交換します。福間清麗は左右の香の両取りに▲5五角と打ち、加藤女流四段が△3三桂と跳ねて自玉に近い香を守ると、▲9一角成と香を取って馬を作ります。形勢は早くも福間清麗がわずかに指し易くなってきたようです。

加藤女流四段の角

加藤女流四段は△7三桂とかわし、福間清麗が▲8一馬~▲7一馬と飛車を追うと、△9二飛とかわします。福間清麗は▲5五金と繰り出し、加藤女流四段が香取りに△8八角と打ち込むと、▲9三香と浮いてかわします。加藤女流四段は△2六銀と打ち、福間清麗が銀取りに▲2七香と打つと、次の64手目を考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は福間清麗が2時間49分、加藤女流四段が2時間13分となっています。

福間清麗の馬

昼休が明けるとすぐ、加藤女流四段は銀で香を食いちぎり、△4四香と据えます。歩切れの福間清麗は▲3六銀と上がって4筋を補強し、加藤女流四段が28分の長考で△5二金と上がって陣形を整えると、▲6一馬と寄って金に当てます。加藤女流四段は更に37分長考し、4筋の歩を成り捨ててから△5四歩と金頭を叩いて引き寄せ、4筋で銀香交換してから△5七歩と垂らします。

加藤女流四段が角切りの勝負手

福間清麗は同飛と応じ、残り1時間を切った加藤女流四段が△6五桂と跳ねて飛車に当てると、▲5八飛と引いて角に当て返します。加藤女流四段は△9七角成と香を食いちぎり、△2六香と王手する勝負手を放ちますが、福間清麗は▲2七香と合わせて交換します。駒割りは先手の角得となり、形勢は福間清麗に大きく傾いたようです。

堅実な歩の攻め

加藤女流四段は飛車取りに△5七銀と打ち、福間清麗が▲4三金と王手で金交換してから▲7八飛とかわすと、銀と金の田楽刺しに△4四香と打ちます。福間清麗は▲4八歩と銀を支えて銀香交換を甘受し、加藤女流四段が△4六歩と合わせて銀を先手玉に近づけると、▲5三歩と金頭を叩いて吊り上げ、▲4二歩と後手玉の腹に垂らします。加藤女流四段は△4五桂と跳ね、福間清麗が"と金"を作ると、残り8分まで考えて△4四銀と自玉の玉頭をケアしつつ攻め合いを目指します。

2枚馬の寄せ

福間清麗は▲4二角と打って詰めろを掛け、加藤女流四段が△5二歩と先手の馬の利きを止めて逃れると、▲3一角成と王手で2枚目の馬を作り、▲2一馬~▲4二"と"と王手を続けます。かわすと銀を抜かれてしまうので、加藤女流四段は同玉と応じますが、福間清麗は▲3一銀から即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は第一局と同一の局面から加藤女流四段が工夫を見せましたが、福間清麗は角交換を強要し、両取りから香を取りつつ馬を作って優勢となりました。加藤女流四段は角切りの勝負手で攻め合いを目指しましたが、福間清麗は歩で後手陣を崩し、2枚目の馬を作って寄せ切りました。
持ち時間を1時間半以上残して快勝し、クイーン清麗の称号獲得まであと1勝となった福間清麗は、対局後「引き続き先後が決まっているので。コンディションを整えて頑張りたいと思います」と話しました。加藤女流四段も「約2週間後になりますが、体調を整えることなど、準備をして挑みたいと思います」と話しており、両者が力を出し切っての熱戦になることを期待したいと思います。

大成建設杯清麗戦は大成建設が主催しています。棋譜は下記サイトをご確認ください。


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