「観る将」が観た第14期女流王座戦挑戦者決定戦
9月6日、リコー杯第14期女流王座戦の挑戦者決定戦が行われました。第12-13期は挑決で敗れている西山朋佳女流三冠と、自身初の女流王座挑戦を目指す香川愛生女流四段の顔合わせとなりました。
西山女流三冠は第9-10期に女流王座を戴冠しており、今期は1回戦から宮澤女流1級、中井女流六段、室谷女流三段を降しています。香川女流四段は上田女流四段、和田(あ)女流二段、加藤(桃)女流四段を破って勝ち上がっています。
両者の対戦成績は西山女流三冠の9勝1敗です。昨年度は女流王将戦で三番勝負を戦い、西山女流王将が2勝0敗で防衛しています。
先手の角を巡る攻防
振り駒で後手となった西山女流三冠が四間飛車に振り美濃囲いに構えると、香川女流四段は13分の考慮で▲5五角と飛び出して後手玉を間接的に睨みます。西山女流三冠は飛車を3筋に寄せ、香川女流四段が▲3七角と引くと、△4二角と引いて飛車の利きを通します。香川女流四段が▲2六角と上がって3筋の歩交換を防ぐと、西山女流三冠は飛車を2筋に寄せて先手の角頭を狙います。香川女流四段が4筋の歩を突くと、西山女流三冠は2筋の歩を交換し、角を間に挟んで飛車が睨み合います。
後手の角の活用
香川女流四段は6筋の歩を伸ばし、西山女流三冠が6筋の歩を突き捨ててから5筋の歩を突いて角道を開けると、2筋に歩を打って飛車を吊り上げてから▲3七桂と跳ねて追い返し、4筋の歩をぶつけます。次の46手目を西山女流三冠が考慮中に昼休となりました。形勢はわずかに後手が指し易いようで、各3時間の持ち時間の内、残り時間は西山女流三冠が2時間8分、香川女流四段が1時間54分となっています。
銀と桂の取り合い
昼休が明けるとすぐ、西山女流三冠は△6四角と飛び出して先手の飛車を間接的に睨み、香川女流四段が4筋の歩を取り込んで銀を吊り上げてから▲4七金と桂に紐を付けると、3筋の歩をぶつけます。角を動かせない香川女流四段は▲6五歩と打って後手の角を追い、▲4五歩と銀頭を叩きますが、西山女流三冠は構わず△3六歩と取り込み、銀を取らせる代わりに桂を取って"と金"を作ります。
自陣飛車の粘り
香川女流四段は角で"と金"を取り、西山女流三冠が飛交換して角金両取りに△2七飛と打つと、▲4八飛と自陣飛車で角と金に紐を付けて粘ります。西山女流三冠は香取りに△4四角と出て、香川女流四段が▲6六銀打と防ぐと、△3三桂と跳ねて遊び駒の活用を図ります。香川女流四段は5筋の歩をぶつけて後手の角の利きを止め、西山女流三冠が△2六角と出て飛角交換から角を素抜く筋を見せると、2筋に底歩を打って角に紐を付けます。
全軍躍動
西山女流三冠は金取りに△3五桂と畳み掛け、香川女流四段が金を上がってかわすと、△4八角成と飛角交換し、銀取りに△4九飛と打ち込みます。6筋の金を食いちぎられて一間竜の形を作られると厳しいので、香川女流四段は▲5七銀引と銀に紐を付けつつ飛車の横利きを止めますが、西山女流三冠は味良く△4五桂と跳ねて銀に当てます。
天使の跳躍
香川女流四段が飛車の両取りに▲3八角と打つと、西山女流三冠は△6九飛成と金を食いちぎり、△5七桂成と天使の跳躍で銀を取り、△6七銀と詰めろを掛けます。先手玉には受けがなく、後手陣は美濃囲いが健在で有効な王手もなく、香川女流四段はここで投了を告げました。
まとめ
本局は香川女流四段が角を天王山に飛び出し、西山女流三冠はその角を攻撃目標にして主導権を握りました。西山女流三冠は交換した飛車を打ち込んで攻め掛かり、香川女流四段が自陣飛車を打って粘ると、最後は自陣にいた左桂の天使の跳躍を決めて寄せ切りました。
福間女流王座への挑戦権を獲得した西山女流三冠は、終局後「久しぶりの女流王座戦出場でうれしい。福間女流王座との対局はたくさんあるが、今回も一局一局全力で指したい」と話しており、五番勝負が熱戦になることを期待したいと思います。
リコー杯女流王座戦は、株式会社リコーと日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。