ABEMAトーナメント2023 予選Aリーグ第一試合
4月15日に、ABEMAトーナメント2023の予選Aリーグ第一試合が放映されました。注目の開幕局は、チーム永瀬「川崎家」とチーム豊島「百折不撓」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の段位で記述させていただきます。
一局目:増田康宏六段 vs 木村一基九段
両チームとも、初戦にエースとしての活躍が期待される2人が出陣します。振り駒で後手となった木村九段が横歩取りに誘導し、増田六段は受けて立ちました。木村九段が飛車をぶつけると、増田六段は飛交換に応じ、お互いに自陣の傷を消して戦機を窺います。木村九段が角を交換してお互いの駒台に飛車角を乗せると、増田六段は▲2三飛と打って竜を作ります。木村九段が△5四角と好所に据え、9筋を端攻めして香を吊り上げ△9九飛と王手で打ち込むと、増田六段は▲8九角と自陣に打って受けます。木村九段が△8七角成と銀を食いちぎり、角金両取りに△9八銀と打つと、増田六段は▲7八角打と2枚目の自陣角で懸命に粘ります。木村九段は香を取って角と交換し、駒得を拡大して寄せ切りました。
チーム永瀬:0勝 - チーム豊島:1勝
二局目:永瀬拓矢王座 vs 池永天志五段
初戦を落としたチーム永瀬はリーダーが出陣します。先手の池永五段が矢倉を選択し、永瀬王座は急戦調の駒組みから雁木に組みます。池永五段が飛先の歩を交換し3筋の歩もぶつけると、永瀬王座は5筋の歩を突き捨て、8筋を継ぎ歩で攻めます。永瀬王座が4筋の歩も突き捨て、飛車取りに△5五角と飛び出すと、池永五段は▲4六歩と打って受けます。永瀬王座が9筋の歩もぶつけて攻め掛かると、池永五段は▲9五銀と香の利きに銀を差し出して凌ぎます。永瀬王座が角を交換して△3九角から馬を作り、△6七馬と金を食いちぎって攻め掛かると、池永五段は上部脱出を図ります。時間を十分残していた永瀬王座は、慎重に少しずつ時間を使って入玉を阻止して寄せ切りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム豊島:1勝
三局目:本田奎五段 vs 木村一基九段
チーム豊島は、木村九段が早くも2局目の登場です。先手の本田五段が角換わりに誘導し、木村九段は受けて立ち、両者6分以上に時間を増やします。木村九段が右玉に構えると、本田五段は飛車を6筋に回して雁木に組み直します。木村九段が△2五桂と跳ね、桂で取らせて△2四歩と突いて取り返すと、本田五段は飛車を2筋の戻して走ります。木村九段が香取りに△3七角と打ち込むと、本田五段は▲2四歩~▲2三桂と攻めをつなぎます。木村九段も飛車を2筋に回して受け、△2七桂~△2六角成と馬を作って飛車を追うと、本田五段は飛車を取らせる代わりに馬を取ります。木村九段は8筋に飛車を戻して△8二香と二段ロケットを設置し、△2九飛と打ち込んで上下から攻め掛かります。本田五段は懸命に粘りましたが及ばず、木村九段が即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム豊島:2勝
四局目:永瀬拓矢王座 vs 豊島将之九段
チーム豊島は満を持してリーダーが登場し、リーダー対決が実現しました。先手の豊島九段が角換わりに誘導し、永瀬王座は受けて立ち相早繰り銀の駒組みが進みます。豊島九段が3筋の歩を交換して仕掛けると、永瀬王座は8筋を継ぎ歩攻めして制圧します。豊島九段は王手飛車に▲8四角と打ちますが、永瀬王座は研究通りなのかノータイムで銀取りに△6二角と打ち返します。豊島九段が飛角交換してから歩で銀を支えると、永瀬王座は△3四歩と銀取りに打ちます。銀が動くと飛車を取られてしまうので、豊島九段は▲2一飛と王手で打ち込みますが、永瀬王座は玉を上がってかわしてから角で飛車を追います。香を取った豊島九段が▲2三飛成と銀を食いちぎって▲4八香と角銀の田楽刺しにすると、作戦会議室では木村九段が「いけっ!リーダー」と叫びますが、永瀬王座は上部に脱出して入玉を目指します。豊島九段は懸命に捕まえにいきましたが届かず、永瀬王座は入玉を果たして逃げ切りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム豊島:2勝
五局目:増田康宏六段 vs 豊島将之九段
チーム豊島は敗れたリーダーが連投します。先手の増田六段が角換わりに誘導して相腰掛け銀の将棋となり、両者とも時間を6分以上に増やします。増田六段が▲4五桂と仕掛けると、豊島九段は△2二銀と引きます。増田六段が桂を5筋に成り捨て、取った歩で7筋の桂を取り返すと、豊島九段はバラバラにされた陣形を懸命に支えます。豊島九段が8筋から反撃し、△8五角と桂を食いちぎると、増田六段も▲6五飛と走って攻め合います。豊島九段は△7六桂打と先手玉に迫りますが、増田六段は▲5三歩成の王手から▲8一角成と飛車を取って下駄を預けます。豊島九段は△8八銀と王手してから2分程残していた時間を使い切り、△9七銀から王手を続けますが先手玉は詰まず、増田六段が逃げ切りました。
チーム永瀬:3勝 - チーム豊島:2勝
六局目:永瀬拓矢王座 vs 池永天志五段
チーム永瀬は早くもリーダーを使い切り、二局目と同じ顔合わせとなります。先手の池永五段が再び矢倉を選択し9筋の位を取ると、永瀬王座は△6五桂と跳ねて仕掛けます。池永五段が銀を引くと、永瀬王座は角を交換して金取りに△3三角と打ち直します。池永五段が▲6六角と合わせると、永瀬王座は飛先の歩を交換して△7六飛と横歩を取ります。池永五段が角を交換して▲7七桂と跳ねると、永瀬王座は△4四角と打ち直します。池永五段は再び角を合わせて交換し金取りに▲8三角と打ちますが、永瀬王座は手堅く△5二角と打って角を捕獲します。池永五段が飛車を追って交換すると、永瀬王座は△6一金と寄って角のタダ取りを狙います。池永五段は▲8一飛と打って角を救出して馬を作りますが、永瀬王座は馬を追って先手玉に迫り、竜取りに△5五角と打って寄せ切りました。
チーム永瀬:4勝 - チーム豊島:2勝
七局目:本田奎五段 vs 木村一基九段
後がなくなったチーム豊島はエース木村九段が出陣し、三局目と同じ顔合わせになります。本田五段が角換わりに誘導し、4筋の位を取ると、木村九段は飛車を4筋に回して受けます。本田五段が左銀を▲5五銀と前進すると、木村九段は飛車を8筋に戻し、一度3筋に引いた玉を6筋に移動します。本田五段が▲6六角と打ち9筋を端攻めすると、木村九段は△6五桂~△7七桂成と桂交換します。本田五段は▲9五角と王手し、木村九段が玉を7筋にかわすと、歩で銀を追って捕獲します。木村九段は角取りに△9四香と走りますが、本田五段は構わず銀を取り、角を取らせて▲9五同香と走ります。木村九段は△8三飛と浮いて受けますが、本田五段は飛車を9筋に回して突破し、竜を飛車と交換して▲8一飛と王手で打ち込み後手玉に迫ります。木村九段が△3六角成と銀を取って下駄を預けると、本田五段は▲4二香成から即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:5勝 - チーム豊島:2勝
第一試合の結果
チーム永瀬は、リーダーの永瀬王座が3勝してチームを牽引しました。エースとしての活躍が期待される増田六段も相手チームのリーダーから、鍵を握ると思われる本田五段も2連勝していた相手チームエースから貴重な白星を挙げ、チームの勝利に貢献しました。優勝候補筆頭として、まずは順当な滑り出しを見せたと思います。
チーム豊島は、木村九段が2勝して意地を見せました。リーダーの豊島九段も自ら連投して勝負を賭けましたが、結果的に連敗してチームの士気を高めることができませんでした。この日は勝ち星に恵まれなかった池永五段も含め、チームの雰囲気は良く、次戦での巻き返しに期待したいと思います。
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