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ABEMAトーナメント2023 予選Cリーグ第三試合

6月10日に、ABEMAトーナメント2023の予選Cリーグ第三試合が放映されました。既に予選突破を決めているチーム天彦「天辺堂」と、予選突破に向け負けられないチーム広瀬「はやぶさ」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の段位で記述させていただきます。

一局目:三枚堂達也七段 vs 近藤誠也七段

両チームともエース級の活躍を期待されるメンバーが先陣を切ります。後手の三枚堂七段が横歩取りに誘導しますが、近藤七段は角道を止めて菊水矢倉に構えます。三枚堂七段が矢倉に組むと、近藤七段は4筋から仕掛けます。三枚堂七段が9筋の歩を突き捨て△9六歩と垂らすと、近藤七段は▲2四桂と歩頭に放ちます。三枚堂七段が△4二金とかわし、香取りに△8四桂と打つと、近藤七段は▲9七銀と出て香を支えます。三枚堂七段が銀をぶつけて交換し、銀取りに△6四角と引くと、近藤七段は▲8八金と寄って銀を支えます。三枚堂七段は飛車取りに△6九銀と打ち込み、近藤七段が6筋に飛車を寄って銀に当てると、構わず△9五香と走ります。近藤七段は歩で角を追いますが、三枚堂七段は角を取らせる間に△9六香と銀を取り先手玉に迫ります。近藤七段は▲4四角打から王手を続けますが届かず、三枚堂七段が逃げ切りました。
チーム天彦:1勝 - チーム広瀬:0勝

二局目:戸辺誠七段 vs 石井健太郎六段

両チームとも予定通りのメンバーを送り出し、公式戦では対戦がないという顔合わせになりました。先手の戸辺七段が中飛車に振ると、石井六段は三間飛車に振り、相振り飛車の将棋になります。戸辺七段が美濃囲いに構え、飛先の歩を交換し、銀冠に組み替えると、石井六段は金銀を前進して中央に厚みを築きます。戸辺七段が9筋を端攻めして桂香交換すると、石井六段は王手金取りに△3六桂と打って金桂交換します。戸辺七段は▲8六桂~▲7四歩と角頭を攻めますが、石井六段は迷わず△3七角成と切り飛ばし、△2五桂~△1六香と先手陣に殺到します。石井六段の攻撃が快調に見えましたが、戸辺七段が飛車取りに▲3五歩と切り返すと、作戦会議室では佐藤九段が「あれっ!えっ!」、広瀬八段が「やばい!」とつぶやきます。AIの評価値も逆転を示しましたが、石井六段は気を取り直して△3八銀から詰めろを掛けて再逆転し、そのまま寄せ切りました。
チーム天彦:1勝 - チーム広瀬:1勝

三局目:佐藤天彦九段 vs 広瀬章人八段

両チームとも奇をてらわず、リーダー同士の対決となりました。後手の佐藤九段が横歩取りに誘導し、広瀬八段は受けて立ちます。佐藤九段も横歩を取り、飛車をぶつけて交換すると、広瀬八段は▲8三飛~▲8五飛成と竜を作ります。佐藤九段が角をぶつけて交換すると、広瀬八段は金取りと角成の両狙いで▲4一角と打ち込みます。佐藤九段は△4三角と打ち、馬を作らせる代わりに7筋の桂頭を攻め、先手陣に生じた隙に△8九飛~△8五飛成と桂を取って竜を作ります。広瀬八段は▲8六金とぶつけて竜を追いますが、佐藤九段は△6三歩から馬を追い角と交換します。佐藤九段が△8四竜と眠っていた竜を呼び覚ますと、広瀬八段は▲1六角と王手し、▲3五竜~▲3四角と角と銀の2枚替えで攻め掛かります。佐藤九段が△8八角から馬を作り、もう1枚の角を△2八角と打って挟撃態勢を作ると、広瀬八段は自陣に金を投じて粘ります。両者時間に追われながら形勢が揺れ動く激戦となりましたが、最後は佐藤九段が先手陣を上部から押しつぶし、寄せ切りました。
チーム天彦:2勝 - チーム広瀬:1勝

四局目:戸辺誠七段 vs 近藤誠也七段

チーム天彦が順番を変え、かつてのチームメイトの対戦が実現しました。先手の戸辺七段が中飛車に振り穴熊を目指すと、近藤七段は左高美濃から銀冠に組み替えます。近藤七段が7筋の歩を突き捨ててから△7二飛と寄せると、戸辺七段は▲6六角と受けます。近藤七段は△7五銀と角にぶつけますが、戸辺七段は飛車を7筋に寄せて後手の銀を釘付けにします。近藤七段が△7六歩と打って押さえ込むと、戸辺七段は飛車を3筋に回し、▲3四歩と角頭を攻めます。近藤七段が角を引いてかわすと、戸辺七段は5筋の歩を突き捨て角の利きを後手陣に通します。戸辺七段は飛車を4筋に寄せ、金銀交換してから飛車取りに▲5五金と打ちますが、近藤七段は△5七桂成と飛車に当てて攻め合います。戸辺七段は▲4四飛と走ってぶつけますが、近藤七段は△5五飛と金を食いちぎります。戸辺七段が飛車を角と刺し違えて後手陣に迫ると、近藤七段は金を自陣に投じて粘ります。戸辺七段が銀取りに▲4五歩と打つと、近藤七段も△4六歩と打ってお互いに金銀を取って"と金"を作ります。最後は戸辺七段の攻めが速く、即詰みに討ち取りました。
チーム天彦:3勝 - チーム広瀬:1勝

五局目:佐藤天彦九段 vs 石井健太郎六段

チーム天彦は、リーダーが後手番を引き受け出陣します。先手の石井六段が四間飛車に振ると、佐藤九段は穴熊を目指します。石井六段がミレニアムに構えると、佐藤九段はお互いの陣形が整う前に、8筋と7筋の歩を突き捨ててから4筋の歩を突いて角をぶつけます。石井六段が角交換に応じ、6筋の歩を突き捨ててから▲3五歩と桂頭を狙うと、佐藤九段は金で桂頭を守り、△8六飛と走ります。石井六段は研究手順なのか決断良く指し進め、▲8七歩と打って飛車を引かせてから自陣を固めます。石井六段が▲6一角から馬を作り、▲4五桂とぶつけて桂交換すると、佐藤九段は△3七桂から成桂を作って銀を剥がします。石井六段も金銀両取りに▲3四桂と打って金を剥がしますが、佐藤九段は竜を作って攻め込みます。時間に余裕のある石井六段は底歩を打って竜の横利きを止めると、▲3二金から後手玉に迫って寄せ切りました。
チーム天彦:3勝 - チーム広瀬:2勝

六局目:三枚堂達也七段 vs 広瀬章人八段

チーム広瀬はリーダーが出陣し、前回のチームメイトの対戦となりました。三枚堂七段が相掛かりに誘導し、広瀬八段は1分程考えて先に飛先の歩を交換します。三枚堂七段が銀冠の形を作ると、広瀬八段は3筋の歩を伸ばしてひねり飛車にします。三枚堂七段も8筋と7筋の歩を伸ばしてひねり飛車にすると、広瀬八段は美濃囲いに入城して受けます。三枚堂七段が9筋を端攻めし、▲5五角と飛び出すと、広瀬八段は△6四銀とぶつけて角を追い、更に△7五銀と前進して飛車を追います。三枚堂七段が▲9四銀と香を取ると、広瀬八段は△7六銀と角に当て、角銀交換してから飛車取りに△4四角と打ちます。三枚堂七段は▲8三歩と玉頭を叩いて引かせると、飛車取りに▲7六香と打ちますが、広瀬八段は△5五歩と突いて飛車に当て返し、更に△5六歩と突いて飛交換します。優勢と思われた三枚堂七段は時間に追われて▲9二飛と打ちますが、広瀬八段は構わず△5七歩~△4五桂と連続王手で反撃します。三枚堂七段は▲7二"と"~▲7五角と攻め込みますが、広瀬八段は手堅く△6四銀と打って防ぐと、△5七桂から先手玉に迫ります。三枚堂七段は竜を作って金を2枚剥がして後手玉に迫りますが届かず、広瀬八段が土壇場で逆転して逃げ切りました。
チーム天彦:3勝 - チーム広瀬:3勝

七局目:戸辺誠七段 vs 近藤誠也七段

チーム広瀬は順番を変えず、四局目と同じ顔合わせとなりました。後手の戸辺七段が向かい飛車に振ると、近藤七段は9筋の位を取り、お互いに穴熊に囲います。戸辺七段が金取りに△3四角~△2五角と角成を狙うと、近藤七段は▲3一角と打って先に馬を作ります。近藤七段が角取りに▲1七桂と跳ね、馬を作らせる代わりに竜を作って桂を取ると、戸辺七段は5筋に"と金"を作って反撃します。近藤七段は馬を飛車と刺し違えて▲2一飛と打ち込みますが、戸辺七段は△5七角と打って攻め合います。近藤七段が▲6三香と打って金銀と桂香の交換を果たすと、戸辺七段は自陣に金を打って竜を追い返し、△7七馬と金を食いちぎって穴熊を崩します。近藤七段は9筋から端攻めしますが、戸辺七段は凌いで△9三香と二段ロケットを設置し先手玉を追い詰めます。近藤七段がギリギリで凌いで▲6四桂と反撃すると、時間に追われた戸辺七段は△7三金とかわして頭を抱えます。近藤七段が▲7三同竜と食いちぎり、▲7一竜ともう1枚金を取ると、戸辺七段は△6四馬と引き付けます。両者とも時間に追われ、評価値が大きく揺れ動く激戦となりましたが、近藤七段が▲7二金と詰めろを掛けて下駄を預けると、戸辺七段は△8五桂から長手数の即詰みに討ち取りました。
チーム天彦:4勝 - チーム広瀬:3勝

八局目:三枚堂達也七段 vs 石井健太郎六段

後がなくなったチーム広瀬は、この試合2戦2勝の石井六段に託します。後手の石井六段が四間飛車に振ると、両者とも少し見慣れない陣形に囲います。三枚堂七段が4筋の歩をぶつけますが、お互い取らずに睨み合いが続きます。三枚堂七段が5筋の歩をぶつけたタイミングで、石井六段は△4五歩と取り、△4四歩と打てば銀を捕獲する形になります。三枚堂七段が構わず▲2二歩と桂頭を叩くと、石井六段は銀を歩で取りにいくのではなく、△5四銀とぶつけて飛車を捌きます。両者とも竜を作り、石井六段は△8三玉と早逃げし、角を捕獲されますが構わず金取りに△4六桂と打って攻め掛かります。桂を打ち合って千日手の気配が漂うと、三枚堂七段が打開しますが、石井六段は△8八金のタダ捨てから寄せ切りました。
チーム天彦:4勝 - チーム広瀬:4勝

九局目:佐藤天彦九段 vs 広瀬章人八段

フルセットにもつれ込み、決着はリーダー対決に委ねられました。振り駒で後手となった広瀬八段が振り飛車を匂わせる立ち上がりから雁木に組むと、佐藤九段は右四間飛車を選択します。広瀬八段は3筋と7筋の歩をぶつけ、佐藤九段が3筋の歩を取ると、7筋の歩を取り込みます。佐藤九段が角交換してから▲4四歩と銀頭を叩き、▲4五桂~▲6六角と攻撃態勢を整えると、広瀬八段は△4二歩~△3二金と辛抱の受けが続きます。佐藤九段は▲5三桂成と飛び込み、広瀬八段が銀と歩で角を追うと、成桂で銀を剥がします。広瀬八段が△5六歩と反撃すると、時間に追われた佐藤九段は、少し迷った手つきで玉を上がって受けます。広瀬八段が飛車取りに△3九角と打ち、飛角交換してから金の両取りに△3九飛と打つと、佐藤九段は▲4七角と自陣に打って受けます。広瀬八段は△1九飛成と香を取って竜を作り、△2八竜と王手して合い駒に銀を使わせ、△4五香と角と玉を田楽刺しにします。佐藤九段が▲7五歩と銀頭を叩いて下駄を預けると、広瀬八段は香で角を取って王手し、上部脱出を図る先手玉を逃がさず寄せ切りました。
チーム天彦:4勝 - チーム広瀬:5勝

第三試合の結果

チーム広瀬は、石井六段がいずれもチームが劣勢の状況で登場し、3戦3勝して窮地を救う活躍でチームの勝利に大きく貢献しました。リーダーの広瀬八段も決着局でリーダー対決を制し、チームを予選突破に導きました。ポイントゲッターとして期待される近藤七段が、この試合では白星に恵まれませんでしたが、本来の調子を取り戻せば優勝を争ってもおかしくないチームだと思います。
チーム天彦は、この試合は敗れたものの、前の試合での貯金が大きく、Cリーグ1位通過となりました。リーダーの佐藤九段は前回大会から続いていた不敗神話が途切れましたが、この試合でも戸辺七段が2勝するなど全員が勝ち越して予選を終え、大きく崩れることなく本戦でも勝ち上がっていけそうです。

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