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「観る将」が観た第4期白玲戦七番勝負第三局

9月21日、ヒューリック杯白玲戦七番勝負第三局が、奈良市の「ふふ奈良」の茶室「たく庵」で行われました。ここまで1勝1敗のタイスコアとなり、西山朋佳白玲にとっても、挑戦者の福間香奈女流五冠にとっても負けられない注目の一局となっています。


西山白玲が向かい飛車

和室にテーブルと椅子が設けられた対局室に、福間女流五冠が深緑色に花柄のワンピースで入室すると、すぐに西山白玲が淡い桃色の着物に亜麻色の袴で入室します。先手の福間女流五冠は5筋の位を取り、西山白玲が向かい飛車に振ると▲5六銀~▲5七銀と2枚の銀で中央を制圧します。西山白玲はすぐに5筋の歩を交換し、福間女流五冠が6筋の位も取ると、飛車先の歩を伸ばしてから△2四角と覗き、△3三桂と跳ねて攻撃態勢を整えます。

西山白玲は穴熊

福間女流五冠が玉を左に移動して陣形を整えると、西山白玲は穴熊に潜ります。福間女流五冠は▲6六角~▲7七桂と穴熊攻略の足がかりを整え、西山白玲が下段飛車に構えると、▲5四歩と伸ばして角道を通します。西山白玲が次の54手目を20分以上考えて昼休の時刻となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は西山白玲が1時間57分、福間女流五冠が3時間5分と1時間以上の差が付いています。着物の西山白玲は暑いのかしきりに扇子を使い、福間女流五冠にはブランケットが用意されたようです。

西山白玲の歩頭桂

西山白玲は昼休を挟む27分の熟考で、一度引いた銀を△4三銀と戻し、福間女流五冠が▲5五銀と上がって歩を支えると、飛車を5筋に回します。福間女流五冠が▲7五角と覗いて角成を狙うと、西山白玲は△4五桂と歩頭に跳ねて、角成を防ぎつつ銀に当てます。福間女流五冠は35分の熟考で同歩と応じ、西山白玲が△7四歩と角を追うと、▲6六角と引いてかわします。

後手の飛車を押さえ込み

西山白玲が△5四銀とぶつけて銀交換すると、福間女流五冠は▲5五銀と打って飛車を追い、4筋の歩を取り込んで"と金"作りを目指します。西山白玲も△4六歩と垂らすと、福間女流五冠は▲5二歩と飛頭を叩いて金で取らせ、飛車の利きを遮断してから▲4六銀引と垂れ歩を取ります。後手には桂損に見合う代償がなく、わずかに先手が指し易くなってきたようです。

後手の角を押さえ込み

西山白玲は△5六歩と銀頭を叩いて金で取らせ、金取りに△4七銀と打ち、福間女流五冠が3筋の歩を突き捨てて後手の角の利きを止めてから▲4五金とかわすと、△3六歩と伸ばして角の活用を図ります。福間女流五冠が▲3五歩と打って再度角の利きを止めると、西山白玲は3筋の歩を成り捨て、5筋の銀頭を歩で叩いて引かせてから△3六銀成といつでも銀交換できる形を作ります。

西山白玲の"と金"

福間女流五冠は9筋の歩を突き捨ててから▲8五桂と跳ね、西山白玲が4筋で銀交換してから△8四銀と打つと、▲5六金と歩を払います。西山白玲は△6二金左と寄って飛車の利きを金に当て、福間女流五冠が▲5四歩と中合いすると、△3六歩と桂頭を叩きます。福間女流五冠は▲4五桂とかわして5筋への歩成を狙い、西山白玲が3筋に"と金"を作って飛車に当てると、▲1八飛とかわします。

福間女流五冠の端攻め

残り1時間を切った西山白玲が△5七歩と垂らすと、福間女流五冠も残り1時間を切り、手抜いて▲9三歩と香頭を叩いて桂香交換し、銀取りに▲8五桂と打ちます。西山白玲は△8四桂と打って先手の角の利きを止め、福間女流五冠が▲9八香打と二段ロケットを設置すると、王手銀取りに△7六桂と跳ねます。福間女流五冠は玉を引いてかわし、西山白玲が飛車取りに△2七"と"と寄ると、構わず玉頭を叩いて吊り上げてから▲9五香と走ります。

二段ロケットの発射

西山白玲は△9四歩と香を吊り上げてから銀で取りますが、福間女流五冠は再度玉頭を叩いて桂で取らせ、もう1枚の香を▲9四香と走って銀を取ります。後手玉は9筋を突破されると、5筋方面に逃げても先手の桂や歩で押さえ込まれており、先手陣は飛車を渡しても速い寄せはなく、西山白玲はここで潔く投了を告げました。

まとめ

本局は福間女流五冠が中央に厚みを築き、西山白玲は穴熊に潜って低い陣形で対抗しました。西山白玲は歩頭に桂を捨てる妙手で飛車角の捌きを目指しましたが、福間女流五冠は冷静に対処し、逆に後手の飛車角を押さえ込んで優勢となりました。西山白玲は先手の飛車を攻めましたが、福間女流五冠は香の二段ロケットで穴熊を攻略して寄せ切りました。
1週間後に行われる第四局に向け、本シリーズを2勝1敗とリードした福間女流五冠は「すぐ対局があるので、体調に気をつけて頑張りたいと思います」、西山白玲は「あまりいい将棋が指せていない感覚があるので、立て直して。またすぐですので、コンディションを整えられたらいいと思います」と話しています。好敵手の頂上決戦が、次局以降も熱戦となることを期待したいと思います。

ヒューリック杯白玲戦は、ヒューリック株式会社と日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。


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