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第5回ABEMAトーナメント 本戦準決勝第一試合

9月10日に、ABEMAトーナメントの本戦準決勝第一試合が行われました。Aリーグ1位のチーム永瀬「川崎家」は、本戦でチーム広瀬をフルセットで降して勝ち上がりました。Dリーグ2位のチーム稲葉「サンライズワン」は、本戦でエントリーチームを5勝0敗で圧倒して勝ち上がっています。

一局目:増田康宏六段 vs 出口若武六段

チーム永瀬は予選から個人8戦無敗の増田六段、チーム稲葉は前試合で一局目から連投連勝でチームを勢いづけた出口六段が先陣を切ります。後手の出口六段が横歩取りに誘導し、増田六段は受けて立ち横歩を取ります。出口六段が角を交換してから桂を跳ね歩で飛頭を叩くと、増田六段は飛車を5筋に回します。出口六段は銀を前進して先手の飛車に圧力を掛けますが、増田六段は7筋の歩を突いて飛車の可動域を拡げます。増田六段が▲6六角と手放し、逆に後手の飛車に圧力を掛けると、早くも残り10秒を切った出口六段は飛車を角と刺し違えて飛車取りに△6四角と打ちます。増田六段は飛車を取らせて後手の玉頭から攻め掛かり、桂で金を剥がし角で銀を食いちぎって寄せ切りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム稲葉:0勝

二局目:斎藤明日斗五段 vs 服部慎一郎四段

両チームとも前日に順位戦を戦った2人が登場し、公式戦では対戦のない顔合わせが実現します。先手の服部四段が矢倉を選択し、斎藤五段は急戦調の駒組みを進めます。斎藤五段が飛車を5筋に回して飛先の歩を交換すると、お互いに陣形を整えます。服部四段が1筋の香を上がってから▲1八飛と回って端攻めを狙うと、斎藤五段も9筋の香を上がって△9二飛と回ります。服部四段が1筋の歩を交換して1歩手にしてから飛車を4筋に回すと、斎藤五段は9筋の歩を突き捨て△9六歩と垂らして端を詰めます。服部四段は5筋の歩を突き捨て、斎藤五段が角で取ると飛車を5筋に寄せます。斎藤五段が1筋で香を取り合い8筋の歩を突き捨ててから銀取りに△8一香と打つと、服部四段も▲5六香と角銀を田楽刺しにします。斎藤五段は構わず銀を取り、服部四段が角を取ると飛金両取りに△7九銀と打って金と交換します。斎藤五段は更に香を成り捨て、飛車を8筋に寄せて先手玉を攻め立てますが、時間に追われて寄せ切れません。最後は服部四段が▲9一飛成~▲1三歩と反撃して飛車取りに▲8六香と打つと、飛車を逃げると詰まされる斎藤五段は投了となりました。
チーム永瀬:1勝 - チーム稲葉:1勝

三局目:永瀬拓矢王座 vs 服部慎一郎四段

チーム稲葉は勝った服部四段が恒例の連投で出陣します。先手の永瀬王座が角換わりに誘導し腰掛け銀の駒組みを進めると、服部四段は早繰り銀で迎え撃ち7筋から仕掛けます。永瀬王座は2筋を継ぎ歩攻めで制圧し、前例もある将棋で持ち時間を6分30秒以上に増やします。服部四段が先手の桂を捕獲すると、永瀬王座も後手の銀を捕獲し取り合います。じっくりした駒組みが続きましたが、永瀬王座は▲2三銀と打ち込んで金と交換してから再び自陣を整備します。永瀬王座が3筋の歩を突き捨て桂頭を狙うと、服部四段は3筋の歩を伸ばして"と金"を作って攻め合います。服部四段が金取りに△4六角と打つと、永瀬王座は少し考えて▲4四銀と打って寄せにいきます。服部四段は玉を中段に逃がして凌ぐと、△5七金から先手玉に迫りますが、永瀬王座も玉を中段に逃がします。服部四段は△6四銀と打って先手玉を上部から押さえ込んで追い込むと、永瀬王座の連続王手をかわして逃げ切りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム稲葉:2勝

四局目:増田康宏六段 vs 服部慎一郎四段

チーム稲葉は服部四段が2度目の3連投3連勝を目指すと、チーム永瀬は予選から9戦無敗のエース増田六段が迎え撃ちます。先手の服部四段が2局目と同様矢倉を選択すると、増田六段はじっくりした駒組みから飛車を5筋に回します。増田六段が5筋から仕掛けて銀交換すると、服部四段は▲4六銀と打って角を追い返します。増田六段は△6五桂~△5七歩と攻めをつなぎ、金取りに△5八銀と打ちますが、服部四段は▲7七桂と跳ねて後手の桂を取りにいきます。増田六段は金銀交換してから角で銀を食いちぎり、桂も交換して角取りに△8五桂と攻め掛かります。服部四段は角を引きますが、増田六段は△7七銀から追撃します。服部四段は懸命に粘りましたが、増田六段は小駒の攻めで先手玉を追い詰め寄せ切りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:2勝

五局目:永瀬拓矢王座 vs 稲葉陽八段

チーム稲葉は満を持してリーダーが登場し、リーダー対決が実現しました。先手の永瀬王座が角換わりに誘導し、稲葉八段は先手から角を交換させて金で取る形を採用します。稲葉八段が早繰り銀で前進すると、永瀬王座は▲6六銀とぶつけます。稲葉八段が銀を引くと千日手模様となりましたが、永瀬王座は7筋に歩を垂らして打開します。永瀬王座は再び銀をぶつけ、▲8六角と打って催促しますが、稲葉八段は△7三歩と先受けします。永瀬王座は銀を交換して▲6四同角と飛び出し、稲葉八段が歩で追い返すと▲5五角と狭い場所に引きます。稲葉八段は△4四銀と打って角を捕獲しますが、永瀬王座は7筋の歩を成り捨ててから角で銀を食いちぎり、桂頭に歩を打って桂も取ります。永瀬王座が▲5五桂と打つと、稲葉八段は6筋の歩を突いてもう1枚の桂を剥がしにいきます。永瀬王座は▲4三銀と打って後手の守りの金を剥がして飛車を走りますが、稲葉八段は△1二角と打って飛成を許しません。永瀬王座は角取りに銀を打ちますが、稲葉八段は角と桂で飛車を追います。永瀬王座は飛車を5筋に回して竜を作りますが、稲葉八段は銀4枚で玉を守る堅陣を築きます。永瀬王座は懸命に後手玉に迫りましたが届かず、稲葉八段は△5六桂と打って香を吊り上げると、△5七金と打って瞬く間に寄せ切りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:3勝

六局目:増田康宏六段 vs 出口若武六段

先行されたチーム永瀬は予選から10戦全勝の増田六段が流れを変えに出陣し、一局目と同じ顔合わせになりました。先手の出口六段が相掛かりに誘導し、増田六段は受けて立ち棒銀で主導権を握ります。増田六段が△4四角と飛び出すと、出口六段は▲5六銀~▲4五歩で角を追います。出口六段は2分半程長考して▲6五銀と出て、後手に6筋の歩を突かせてから▲4六金と前進します。増田六段も1分半程考えて△7三桂と跳ねますが、出口六段は更に1分程考えて▲3筋の歩を突いて桂頭を狙います。増田六段は構わず△6五桂と跳ねますが、出口六段も3筋の歩を取り込み攻め合います。増田六段は△3七歩成と飛車に当てて"と金"を作りますが、出口六段は▲3三桂不成と王手で銀桂交換してから飛車を引きます。増田六段は△3四桂と打って金を捕獲しますが、出口六段は▲6八銀と引いて角の利きを金に当て返します。増田六段はもう1枚の金を寄って金に紐を付けますが、出口六段は桂を打って金を引かせ▲1一角成と香を取って馬を作ります。増田六段が桂で金を取ると、出口六段は▲7三銀と飛車取りに打って挟撃態勢を作ります。増田六段は先手の玉頭から攻め掛かり詰めろを掛けますが、出口六段は▲2一飛から鮮やかな即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:4勝

七局目:斎藤明日斗五段 vs 稲葉陽八段

後がなくなったチーム永瀬は緊迫した空気で斎藤五段が出陣し、チーム稲葉は対照的に明るいムードでリーダーが出陣します。先手の斎藤五段が相掛かりに誘導し、稲葉八段は飛先の歩を交換した後、3筋の歩も取ります。斎藤五段は7筋の歩も取らせてから▲8三歩と垂らし、銀で取らせて▲8二歩から"と金"を作ります。稲葉八段が△8七歩と角頭を叩くと、斎藤五段は角を9筋に逃がします。稲葉八段が△8五桂と跳ね、桂で取らせて△9九角成と馬を作ると、斎藤五段は2分以上考えて飛車に当てて▲7七香と打ち馬の利きを止めます。稲葉八段も1分以上考えて飛車を5筋に逃がすと、斎藤五段は▲7三桂成から後手陣に攻め込みます。斎藤五段が飛車を6筋に回すと、稲葉八段は銀で成桂を食いちぎり、馬を飛車と刺し違えて玉を早逃げします。稲葉八段が歩で先手陣を乱してから△9九飛と打ち込むと、斎藤五段は▲5三角成とタダ捨てして後手陣を乱す勝負手を放ちます。稲葉八段は△8五角と王手で打ち、30秒程確認すると△6九金から即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:5勝

準決勝第一試合の結果

チーム稲葉は、服部四段が二局目からの3連投で2勝しチームに流れを取り戻しました。出口六段も絶好調の相手エースの連勝を止める貴重な白星を挙げ、チームに大きく貢献しました。リーダーの稲葉八段はタイスコアで迎えたリーダー対決を制し、決着局でも苦しい将棋を粘り勝ちするなど貫録を示しました。このチームはメンバーが負けても明るいムードを崩さず、勝てば連投で勢いを加速するところがあり、決勝でも好勝負を期待したいと思います。
チーム永瀬は、この日はリーダーと斎藤五段が白星に恵まれず、チームの勝利に貢献できませんでした。増田六段は恐らく大会記録となる10連勝を記録しましたが、残念ながら最後に力尽きました。相手の粘り強さに屈して惜しくもここで姿を消すことになりましたが、入念に準備した作戦で優勢になる将棋が多く、リーダーの永瀬王座の勝ちに拘る姿勢が浸透したチームだったと思います。

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