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ABEMAトーナメント2024 本戦決勝

9月14日、ABEMAトーナメント2024の本戦決勝が放映されました。準決勝でチーム藤井を降したチーム永瀬「川崎家」と、チーム豊島を破ったチーム稲葉「井上一門」が、2年連続で決勝を戦うこととなりました。
※本稿は収録当時の段位で記述させていただきます。


一局目:森内俊之九段 vs 上野裕寿四段

チーム永瀬はベテランの森内九段に先陣を託します。振り駒で先手となった森内九段が矢倉を選択すると、上野四段はオーソドックスな相矢倉で応じます。森内九段が5筋の歩を交換すると、上野四段は△5四金~△4五金と繰り出して先手の角を押さえ込み、6筋から仕掛けて△6四角と飛び出します。森内九段が▲4六歩と打って角成を防いでから▲7七角と上がると、上野四段は角取りに△8五桂と跳ねて銀桂交換します。森内九段は2筋の歩を突き捨てて▲2三歩と垂らし、上野四段が手抜いて△7五歩とぶつけると、▲9五角~▲5一角成と馬を作って後手玉に迫ります。上野四段は8筋の歩を突き捨ててから△8七歩と玉頭を叩いて嫌味を付けますが、森内九段は鉄板流の受けから寄せに転じ、最後は王手竜取りを掛けて寄せ切りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム稲葉:0勝

二局目:永瀬拓矢九段 vs 藤本渚五段

チーム永瀬はリーダーが出陣し最多勝を目指す2人の直接対決となります。先手の藤本五段が角道を止め、相雁木の将棋となります。藤本五段が右玉に構えると、永瀬九段は△6五銀~△7六銀と繰り出し、8筋の歩を突き捨ててから飛車を6筋に寄せ、1筋を端攻めして香を交換します。藤本五段は▲1九飛と寄って角に当て、永瀬九段が△1六歩と受けると、▲6六歩と打って傷を消し、▲1八香と打って反撃します。永瀬九段が△2六香と打って挟撃態勢を作ると、藤本五段は▲1八桂と打って香を取り、お互いに玉を上部に脱出します。白熱の攻防が続きましたが、お互いに入玉し持将棋が成立しました。

指し直し局は永瀬九段が1分34秒、藤本五段が1分19秒の持ち時間で行われます。後手の藤本五段は飛車先の歩を交換し、7筋の横歩も取って力戦調の将棋となります。永瀬九段が銀を繰り出して飛車を攻め、飛車を4筋に回して角取りに▲4五桂と跳ねると、藤本五段は角を交換し、△4五銀と桂を食いちぎってから飛車を取り合います。藤本五段は△2九飛と王手し、永瀬九段が銀で合い駒すると、金取りに△7六桂と打ちます。永瀬九段も▲4一飛と王手し、▲2一飛成と桂を取って金に当てると、藤本五段は△5九角と詰めろを掛けます。永瀬九段が▲8八桂と打って逃れると、藤本五段は桂交換後に角で金を食いちぎり、△3一金打と竜を追ってから先手玉を追い詰めます。永瀬九段は▲7二角成から連続王手で迫りましたが届かず、藤本五段が逃げ切りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム稲葉:1勝

三局目:増田康宏八段 vs 上野裕寿四段

チーム稲葉はリーダーを温存し上野四段を送り出します。先手の増田八段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換してから角も交換します。上野四段が菊水矢倉から銀冠に組み替えると、増田八段は2筋に歩を合わせて桂交換し、▲4一角と打ち込みます。上野四段は△5二桂と打って角を閉じ込め、増田八段が3筋を継ぎ歩攻めすると、△3一玉と引いて角金交換します。上野四段が自陣に打った桂の活用を図り、銀を繰り出してから△6四桂と跳ねると、増田八段は▲3六桂と据えます。上野四段は△7六歩と桂頭を叩いてから銀で桂を食いちぎり、王手金取りに△5六桂打と継ぎ桂し、△7七歩成と成り捨ててから王手金取りに△7八角と打って畳み掛けます。増田八段は▲2四歩から反撃しますが届かず、上野四段が寄せ切りました。
チーム永瀬:1勝 - チーム稲葉:2勝

四局目:永瀬拓矢九段 vs 稲葉陽八段

チーム稲葉は相手のオーダーを読み切りリーダー対決となります。先手の稲葉八段は三間飛車に振り、永瀬九段が穴熊を目指すと、▲3七桂と跳ね▲2九玉と潜ります。永瀬九段が8,5筋の歩を突き捨てて△2四角と覗くと、稲葉八段は4筋に歩を合わせて金を繰り出し、▲4五桂と跳ねます。永瀬九段が△3四金と繰り出し、金交換後に角で銀を食いちぎり、飛車取りに△3五金と打つと、稲葉八段は▲3三桂不成と勝負手を放ちます。永瀬九段は△4六金と飛車を取り、稲葉八段が▲2一桂成と桂交換してから金を取り返すと、△3六歩と垂らします。稲葉八段は飛銀両取りに▲7一角と打ち込んで攻め合いますが、永瀬九段は△8六飛と走って角に当て、△3七桂の王手から寄せ切りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:2勝

五局目:森内俊之九段 vs 藤本渚五段

チーム稲葉は好調の藤本五段を送り出します。後手の藤本五段が角道を止めて雁木に構えると、森内九段は矢倉を組み、3筋の歩を交換します。藤本五段は8筋を継ぎ歩で攻めて押さえ込み、森内九段が▲6八角~▲8六銀と歩を取ると、△5六銀と繰り出します。森内九段は▲6六歩と突いて銀ばさみを狙い、藤本五段が△8五桂~△6六角と銀を救出すると、銀をぶつけて銀交換し、▲4六銀と打って角を追ます。藤本五段は△5六銀~△3四金と繰り出し、森内九段が▲8五銀と桂を食いちぎって角取りに▲3六桂と打つと、△4五銀と桂を取り、角を取らせる代わりに金取りに△5八銀と打ち、△6五桂~△6六桂と2枚の桂を打って畳み掛けます。森内九段は▲8五桂と反撃しますが、藤本五段は△7八銀と金を取って即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:3勝

六局目:永瀬拓矢九段 vs 上野裕寿四段

リードされたチーム永瀬はリーダーが出陣します。後手の永瀬九段が一手損角換わりを選択し、上野四段が早繰り銀を見せると、銀矢倉を組んで受けます。上野四段が1筋を端攻めすると、永瀬九段は△6五桂と跳ね、8筋を継ぎ歩で攻めます。上野四段は▲3七角~▲8二歩と飛車を追い、永瀬九段が1筋で香を取って△8四香と据えると、▲8八香と受けてから、▲1四歩と桂頭を叩いて攻め合います。永瀬九段は慎重に△1二歩と受け、△6九角と王手で打ち込んで馬を作り、上野四段が▲6六香と据えると、再度△8四香と打って挟撃態勢を作ります。上野四段は6筋の歩を成り捨てて▲7三角成と馬を作り、▲5七馬と引き付けてから▲1三香と打ち、飛香交換して後手玉に迫ります。永瀬九段は自陣に駒を埋めて懸命に粘りましたが、上野四段は落ち着いて寄せ切りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:4勝

七局目:増田康宏八段 vs 稲葉陽八段

大逆転勝ちに意気上がるチーム稲葉はリーダーが決めにいきます。後手の稲葉八段が飛先の歩を突くと、意表を突かれた増田八段は苦笑いを浮かべて横歩取りに応じます。稲葉八段は△3六歩と垂らし、増田八段が角を交換して飛銀両取りに▲5六角と打つと、構わず左右の香取りに△5五角と打ちます。増田八段は▲3四歩と伸ばして桂を取り、稲葉八段が△9九角成と香を取って馬を作ると、▲7七桂と跳ねて馬の利きを遮ります。稲葉八段が△4四飛と角にぶつけて激しい駒の取り合いとなり、後手が飛角を得る代わりに先手は金銀桂を得て"と金"を作ります。稲葉八段が△9七角~△7九角成と銀を食いちぎり、△9八飛と王手で打ち込むと、増田八段は▲7八金と受けます。稲葉八段は銀で金を剥がして△5七飛成と飛び込み、一気に即詰みに討ち取りました。
チーム永瀬:2勝 - チーム稲葉:5勝

決勝の結果

チーム稲葉は、藤本五段の勢いが止まらず、この日も2戦2勝でチームの優勝に大きく貢献しました。上野四段も2勝1敗と勝ち越し、若い2人が原動力となったのは間違いありません。リーダーの稲葉八段は2度目の優勝となりましたが、初優勝の時も後輩2人を率いての優勝であり、若手の力を引き出す能力は素晴らしいものがあると思います。
チーム永瀬は、森内九段が幸先良く1勝しましたが、リーダーの永瀬九段が1勝2敗と振るわず、エースの増田八段もこの日は白星に恵まれず、惜しくも連覇はなりませんでした。増田八段のA級昇級に伴い、来期はリーダーとして参戦する可能性があり、5年間続いた永瀬九段とのコンビは最後になるのかもしれません。

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