「観る将」が観た第29期銀河戦決勝
12月23日、第29期銀河戦の決勝が放映されました。5回目の優勝を目指す渡辺明名人と、初優勝を目指す菅井竜也八段の顔合わせとなっています。ここまで渡辺名人は、服部四段・木村九段・藤井竜王を破って勝ち上がりました。菅井八段は、黒田五段・星野五段・増田(康)六段を降して決勝に駒を進めています。
振り駒で先手となった菅井八段は、初手▲5六歩から向かい飛車に振り対抗形の将棋となりました。渡辺名人が左美濃に囲うと、菅井八段は穴熊に囲います。渡辺名人が5筋から仕掛けて銀交換し△9九角成と馬を作りますが、菅井八段も▲6六角と好位置に据えて反撃します。渡辺名人が銀で角を追うと、菅井八段は角で銀を食いちぎり▲6三銀と打ち込んで攻撃の拠点を作ります。形勢は菅井八段に傾いてきたようです。
渡辺名人は飛車取りに馬を寄りますが、菅井八段は手抜いて5筋に"と金"を2枚作って攻め掛かります。菅井八段が小駒で後手陣の金銀を剥がすと、防戦一方となった渡辺名人は角を犠牲にして粘ります。菅井八段は角で王手を掛け、この角を取らせる間に後手陣で守りに効いていた飛車を奪います。菅井八段が馬取りに▲5一飛と後手陣に打ち込むと、渡辺名人は無念の投了となりました。
本局は菅井八段が金銀3枚の穴熊に囲い、大駒を切り捨てて後手陣に攻め込みました。"と金"を使った波状攻撃は途切れることなく後手玉に迫り、自陣は全く手つかずのまま投了に追い込む完勝となりました。菅井八段は王位獲得経験がありますが、意外なことに全棋士参加棋戦での優勝は初めてのことになります。元々早見え早指しには定評がありましたが、第4回ABEMAトーナメントでの活躍が自信になったのかもしれません。これを機に他の棋戦での活躍も楽しみにしたいと思います。
渡辺名人は、惜しくも5度目の優勝はなりませんでしたが、準決勝で藤井竜王を破るなど存在感を示しました。年明けからタイトル戦が続きますが、好勝負を魅せてくれることを期待します。
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