「観る将」が観た第53期新人王戦三番勝負第二局
10月24日、新人王戦三番勝負第二局が関西将棋会館で行われました。第一局に勝った黒田尭之五段が連勝して優勝を決めるのか、服部慎一郎五段が勝って決着を最終局に持ち越すのか、注目の一局となりました。
対抗形の相穴熊
先手の黒田五段が三間飛車に振り穴熊に囲うと、服部五段も松尾流穴熊に囲います。お互いにがっちりと組み合ったところで、黒田五段が49手目を40分程考えて昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は黒田五段が1時間31分、服部五段が2時間31分となっています。
"と金"攻め
昼休が明けるとすぐ、黒田五段が飛車を4筋に寄せて攻撃態勢を整えると、服部五段は12分の熟考で8筋の歩を突き捨て7筋の歩もぶつけて仕掛けます。黒田五段は6筋の歩を突き捨ててから歩を垂らして"と金"作りを狙いますが、服部五段は構わず7筋に桂を跳ねて攻め合います。黒田五段は4筋の歩を突き捨てて角道を通してから"と金"を作り、服部五段が桂を跳ねて角に当てると、角を交換して"と金"を5筋に寄ります。
激しい攻め合い
服部五段は飛車を走り、黒田五段も飛車を走ると、26分の熟考で△6七角と打ち込みます。黒田五段が▲4一飛成と竜を作ると、服部五段も△5六角成と馬を作ります。黒田五段は▲5一角と打ち込みますが、服部五段は△8九飛成と桂を取って竜を作ります。両者一歩も譲らない攻め合いとなりました。
黒田五段の攻勢
黒田五段が▲3三角成と金を食いちぎり▲4三金と打ち込むと、服部五段は31分の熟考で残り時間が1時間を切り、△4三同金と応じます。黒田五段が▲3一竜と銀を取って後手玉に迫ると、服部五段は△2二金と埋めて凌ぎます。
服部五段の反撃
黒田五段は▲3二銀と金取りに打ちますが、服部五段は△3八馬と金を食いちぎり、金取りに△5六角と打ちます。黒田五段も残り時間が1時間を切り、27分の熟考で歩を打って金を守りますが、服部五段は力強い手つきで△5七桂成と攻めをつなぎます。
難解な終盤戦
黒田五段は取れる金を取らずに▲2三銀成とし、金で取らせて▲3二角と打ち込みます。服部五段が△2二金打と手厚く受けると、黒田五段は更に▲2三角成と金を食いちぎります。服部五段は手抜いて△4七成桂と寄り、金で取らせて△2九竜と桂を食いちぎります。先手が桂を持ち駒にしたことで後手玉には詰めろが掛かりましたが、服部五段は△4七角成と王手で迫って桂を合い駒に使わせ、更に銀を打って金も守りに使わせます。
小駒の寄せ
服部五段が金で自玉に迫る馬を取ると、黒田五段は竜と並べて飛車を打ち詰めろを掛けます。服部五段は再び△2二金打と受け、△3二角と打って飛車を追います。自玉を安全にした服部五段は桂と歩の攻めで先手陣を崩し、最後は成銀で桂を取って即詰みに討ち取りました。
まとめ
本局はお互いに穴熊でがっちり組み合ってから、両者譲らず激しい攻め合いとなりました。黒田五段が先に"と金"を絡めて相手玉に迫りましたが、服部五段は三度に渡り自陣に金を埋めて穴熊を修復し、歩や桂を駆使した小駒の攻めをつないで寄せ切りました。
本シリーズは1勝1敗となり、決着は11月1日に予定されている最終第三局に持ち越されました。両者とも悔いのないよう、全力を出し切っての好局を期待したいと思います。
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