「観る将」が観た第32期女流王位戦五番勝負第二局
5月18日に札幌市の京王プラザホテル札幌で女流王位戦第二局が行われました。第一局は里見香奈女流王位が148手の激闘の末、山根ことみ女流二段を破っています。本局の記録係は、前期挑戦者の加藤桃子女流三段が務めています。
本局は、先手の里見女流王位が初手▲5六歩から中飛車に構えます。山根女流二段も12手目に飛車を2筋に振り、相振り飛車の将棋となりました。里見女流王位は早めに▲6五銀と上がり5筋から圧力を掛けましたが、じっくりした駒組みが続きます。31手目に里見女流王位が▲9七角と上がって5三の地点に睨みを効かせると、山根女流二段は△5二飛と回って受けました。対局後に里見女流王位は「△5二飛と回ってもらえて、こちらの主張が通ったかなと思った」、山根女流二段は「△5二飛と回ってしまったのがちょっと弱気だった」と語っており、この辺りは作戦の分岐点だったようです。
昼休まで歩以外の駒はぶつからず、素人目には穏やかな序盤戦に見えましたが、歩切れの山根女流二段は少し苦しいと感じていたようです。ここまで消費時間は、先手1時間16分、後手1時間27分とほぼ互角です。
自陣を整備する里見女流王位に対し、山根女流二段は4筋に戦力を集めて△4五銀とぶつけます。里見女流王位も8筋の歩を伸ばして継ぎ歩攻めで相手陣の急所を突きます。山根女流二段も歩で相手陣を乱してから飛車角金銀での総攻撃を目指します。ここで里見女流王位は、女流としては大長考となる74分を使っていったん金で4筋を補強します。山根女流二段は構わず△4六金から殺到し、△4六同角と王手を掛けた局面では、お互いの駒台に飛車と金と銀が乗りました。
里見女流王位は歩合いで王手を避けますが、ここで山根女流二段も34分の長考で△2七歩から攻め合いを選択します。里見女流王位は▲8三銀~▲3一飛で瞬く間に挟撃態勢を作ります。更に▲3九金で相手の飛車をはじいてから▲7二歩と決め手を放ちます。山根女流二段は王手で相手玉に迫りますが届かず、無念の投了となりました。
本局はじっくりした序中盤から、お互いに一気に攻め合う激しい終盤戦となりました。先に仕掛けた山根女流二段に最後の決め手が見つからず、相手陣の急所を的確に攻めた里見女流王位の寄せが光りました。
この結果、里見女流王位は連勝で防衛に王手を掛けました。次局への抱負を聞かれ「体調に気をつけてコンディションを整えたい」と淡々と答える里見女流王位に死角はありません。早くもカド番に追い込まれた山根女流二段は「しっかり準備をして体調に気をつけて臨みたい」と話しましたが、先手番の次局では開き直って力を出し切って欲しいと期待しています。