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「観る将」が観た第42回JT杯2回戦 藤井三冠vs千田七段
9月25日に将棋日本シリーズJTプロ公式戦(JT杯)2回戦、藤井聡太王位・叡王・棋聖と千田翔太七段の対局がありました。JT杯はタイトル保持者と前年度賞金ランク上位の12名で行われるトーナメントで、通常は全国各地で公開対局が行われ、本局も高松での開催が予定されていましたが、今回はコロナ禍のためABEMAスタジオでの対局に変更されています。
JT杯は持ち時間10分で、使い切ると一手30秒未満(他に1分の考慮時間が5回)という早指し棋戦になっています。藤井三冠は今回が3回目の出場となりますが、本局は自身初のベスト4進出を懸けた一局となります。今回が初出場となる千田七段は、1回戦で羽生九段を破りシードされた藤井三冠との対局となりました。
両者の対戦成績はこれまで藤井三冠の3勝1敗ですが、早指しの朝日杯で藤井三冠が4年間で唯一の黒星を喫した相手が千田七段です。千田七段は将棋AIを使った研究の先駆者と言われ、奨励会三段時代の藤井三冠に将棋AIの導入を勧めたのも千田七段でした。千田七段がどのような研究手順を魅せ、藤井三冠が少ない持ち時間でどのように対処するのか注目されます。
JT杯は和服の着用も特徴の一つとなっており、藤井三冠は白の着物に淡い水色の爽やかな羽織で、千田七段は薄茶色の着物に渋い濃い茶色の羽織で登場します。振り駒で先手となった藤井三冠は、早指し棋戦でもいつも通りお茶を口にしてから飛先の歩を突き、相掛かりに誘導します。
藤井三冠が▲7七角と上がると、千田七段も△3三角と上がります。藤井三冠が▲5六銀と上がると千田七段は角を交換し、角換わりの定跡形の駒組みに変化します。千田七段が先に10分の持ち時間を使い切り、玉を横に動かして手待ちします。藤井三冠が43手目を考慮中にJT杯特有の封じ手が行われ、両対局者は15分ほどの休憩に入ります。AIの評価値はほぼ互角です。
藤井三冠の封じ手は▲8八玉でした。千田七段が△5四銀と上がると、藤井三冠は▲4五桂と仕掛けます。お互いに歩で桂取りの形になりましたが、千田七段は△2六歩と飛車の利きを止めます。藤井三冠は構わず▲7三歩成と桂を取り、▲6二角~▲7三歩と垂らします。ここで藤井三冠も持ち時間を使い切り、▲2二歩と手裏剣を飛ばします。
千田七段は、△5二玉と寄って先手の角を取りに行きますが、藤井三冠は角を金と交換して後手陣を薄くします。千田七段は△8六歩から先手陣を乱し、△2七歩成~△2六角と打って先手の右辺を攻めます。千田七段は更に△7五桂と金取りに打って先手玉に迫りますが、藤井三冠は手抜いて▲5五香と反撃します。千田七段は5回の考慮時間を使い切り、桂で金を取ってから自玉の守りを固めます。
藤井三冠は▲7五桂と打って後手からの△7五桂を防いでから▲5四香と後手玉に迫ります。藤井三冠は▲7二歩成と後手が飛車を守りに使うのを防ぐ盤石の寄せを魅せ、千田七段の投了となりました。
本局は相掛かりの出だしから角換わりの定跡形になりましたが、藤井三冠が終始決断良く指し続けたのが印象的で、終局時にも考慮時間を2回残しての完勝となりました。千田七段も随所に工夫を魅せましたが、ご本人が対局後に語った通り「うまく攻め倒されて」しまいました。
この結果、藤井三冠は次の準決勝で永瀬王座と対局することが決まりました。ベスト4には現在のタイトルホルダー4人が残り、日本シリーズの名に相応しい顔ぶれが揃いました。準決勝・決勝でも熱戦が観られることを期待したいと思います。