ABEMA地域対抗戦 決勝
4月13日、ABEMA地域対抗戦の決勝が放映されました。チームの総合力で勝ち上がってきたチーム関東Bと、藤井竜王名人の圧倒的強さで勝ち上がってきたチーム中部という顔合わせとなりました。
先発棋士3人は以下の通り発表されました。
関東B:伊藤匠七段、永瀬拓矢九段、増田康宏八段
中部:服部慎一郎六段、藤井聡太竜王名人、八代弥七段
一局目:伊藤匠七段 vs 服部慎一郎六段
振り駒で先手となった服部六段が矢倉を選択し、伊藤七段は現代調の駒組みで中住まいに構え、△6五桂と跳ねて飛先の歩を交換します。服部六段が▲7七桂とぶつけて桂交換すると、伊藤七段は両取りを避けて玉を早逃げし、△7三桂~△8五桂と先手の玉頭に攻め掛かります。服部六段は▲7九桂と辛抱し、伊藤七段が桂を成り捨てて金を取ると、▲5五銀と出て反撃します。伊藤七段が歩で銀を追うと、服部六段は銀を取り合ってから▲2三飛成と竜を作り、金の両取りに▲5二銀と打ち込みます。伊藤七段は△7七金と打ち込んで角と交換しますが、服部六段は▲2六角~▲8二歩と後手の飛車を押さえ込み、竜を見捨てて飛車を取り、▲4四飛の王手から即詰みに討ち取りました。
チーム関東B:0勝 - チーム中部:1勝
二局目:永瀬拓矢九段 vs 服部慎一郎六段
先手の永瀬九段が角換わりに誘導しますが、服部六段は角道を開けず力戦を志向します。永瀬九段は角で4筋と6筋の歩を取り、服部六段が△4五銀と角に当てると、角を見捨てて玉を戦場から遠ざけます。永瀬九段は桂を交換してから歩の小技を利かせて金銀両取りに▲3五桂と打ち、金桂交換してから飛車先突破を図ります。服部六段は△4四角~△2五角と2枚の角で飛車を追い、永瀬九段が角取りに▲4五銀と打つと、角を見捨てて△7七歩成と桂を取って攻め合います。永瀬九段は▲3三飛成と竜を作り、▲7四角と詰めろを掛け、服部六段が△6三歩と辛抱すると、後手の攻め駒を一掃して自玉を安全にしてから寄せ切りました。
チーム関東B:1勝 - チーム中部:1勝
三局目:永瀬拓矢九段 vs 藤井聡太竜王名人
後手の永瀬九段が角道を止めて雁木に組み、藤井竜王名人が早繰り銀をみせると、△7五金~△7六金と繰り出し、△8七歩と打って金銀交換します。藤井竜王名人が▲1五角と王手し、▲3四銀とぶつけて銀交換し、▲3七角とぶつけて角交換すると、永瀬九段は△6四角と飛車に当てつつ先手の玉頭に利かせます。藤井竜王名人は玉を早逃げし、永瀬九段が飛角交換して△3九飛と打ち込むと、攻防に▲9六角と打ちます。永瀬九段が△1九飛成と香を取って竜を作ると、藤井竜王名人は▲6三角成と馬を作って詰めろを掛けます。永瀬九段が△5二銀と打って馬を追うと、藤井竜王名人は飛車取りに▲6四角と打って2枚目の馬を作り、▲8四香と打って飛車と交換し、▲8一飛と打ち込んで寄せ切りました。
チーム関東B:1勝 - チーム中部:2勝
四局目:増田康宏八段 vs 藤井聡太竜王名人
先手の増田八段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換してから藤井竜王名人が△7四飛と縦歩取りを狙うと、増田八段は角を交換します。藤井竜王名人は9筋を端攻めし、増田八段が3筋の桂頭を狙うと、△4四角と受けます。増田八段は飛車取りに▲2六角と打って飛角交換し、藤井竜王名人が左右の香の両取りに△6四角と打つと、▲6五桂~▲5三桂成と飛び込み、角桂交換してから▲2一飛と攻め掛かります。増田八段は▲3一角と打ち込んで馬と交換しますが、藤井竜王名人は金取りに△2九角と打って反撃に転じ、飛銀両取りに△4四桂と打ちます。増田八段は飛車で桂を食いちぎって猛攻を掛けますが、藤井竜王名人は攻防に△5四角と打って凌ぎ、△9八飛と打ち込んでから即詰みに討ち取りました。
チーム関東B:1勝 - チーム中部:3勝
五局目:森内俊之九段 vs 藤井聡太竜王名人
関東Bは棋士チェンジし、森内九段を送り出します。先手の藤井竜王名人が角換わりに誘導すると、森内九段は角道を開けずに9筋の位を取ります。藤井竜王名人は9筋から反発し、飛車をぶつけて交換すると、角もぶつけて交換します。森内九段は桂取りに△8四飛と打ち、藤井竜王名人が▲8八角と王手しつつ桂を守ると、△9八角と打ちます。藤井竜王名人は▲8二飛と打って飛車を追い、森内九段が△8九角成と桂を取って馬を作り、△7六飛と寄って2枚替えを狙うと、▲7七銀と持ち駒を投じて防ぎます。藤井竜王名人が▲7三角成~▲5一馬と金を食いちぎり、▲4五香と飛車を捕獲して▲3一飛と詰めろを掛けると、森内九段は△6九成香から連続王手で先手玉に迫りましたが届かず投了を告げました。
チーム関東B:1勝 - チーム中部:4勝
六局目:渡辺明九段 vs 藤井聡太竜王名人
関東Bは棋士チェンジし、監督にすべてを託します。先手の渡辺九段が矢倉を選択すると、藤井竜王名人は△6五桂と跳ね、銀桂交換してから飛角両取りに△1四銀と打ちます。渡辺九段が飛車を取らせる代わりに王手金取りに▲5三桂と打ち、角交換後に金を取り、飛車取りに▲7三角と打って攻め掛かると、藤井竜王名人は構わず△5八歩と金頭を叩きます。渡辺九段は取れる飛車を取らずに▲5一角成と後手玉に迫り、藤井竜王名人が王手香取りに△2九飛と打ち込み、取った香を金取りに△5六香と打ち、△8八角と打ち込むと、▲7八玉~▲8九金と馬を捕獲します。藤井竜王名人は馬で桂を食いちぎって先手玉に攻め掛かり、渡辺九段が▲7一角の王手から反撃すると、ギリギリでかわしてから先手玉の退路を封鎖し寄せ切りました。
チーム関東B:1勝 - チーム中部:5勝
決勝の結果
チーム中部は、藤井竜王名人がこの日も圧巻の4連勝でチームを優勝に導きました。四局目や六局目では劣勢の局面もありましたが、容易には崩れない強さが光ります。服部六段も待望の本大会初白星を挙げ、エースの負担を軽減しました。豊島九段や八代七段も準備万端だったと思いますが、出番すら回って来ない快勝となりました。
チーム関東Bは、総合力を活かすべく5人全員を登場させるオーダーで臨みましたが、相手の勢いを止めることはできませんでした。予選から永瀬九段と増田八段の調子が上がらない中、伊藤七段と森内九段の活躍で勝ち上がってきた辺りは、優勝候補筆頭の片鱗を見せましたが、惜しくも最後に力尽きた印象です。
本大会の総括
予選・本戦を通してフルセットの熱戦が多かった印象ですが、チーム中部だけが藤井竜王名人の圧倒的強さで危なげなく勝ち進み、優勝を遂げました。始まる前はこんなにも1人が連勝するとは思いませんでしたが、藤井竜王名人以外にも4-5連勝するケースが何度もあり、団体戦という観点では1人の力で勝ち上がれるルールは違和感を感じます。優勝チームメンバーながら、服部六段は4局、八代七段は1局しか指しておらず、2人を応援するファンにとっても物足りなかったのではないかと思います。
本大会はチームの勝ち負けもありますが、地域対抗という形で地元との交流を深めるという意義があったと思います。そういう意味で、各地域のパブリックビューイングで応援するという試みは斬新で、ファンの方々の熱気は画面越しにも十分感じられました。恐らくこの企画は来年以降も続くと思いますが、ルールの見直しも含めブラッシュアップした形で盛り上がることを期待したいと思います。
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