第82期順位戦B級1組の展望
順位戦のB級1組は、13人が総当たりで全12局を戦う、順位戦の中でも最も対局数の多いリーグ戦です。A級から陥落して復帰を目指す実力者や、B級2組から昇級して更に上を目指す伸び盛りの若手らが鎬を削り、上位2人の昇級と下位3人の降級を巡る熾烈な戦いは「鬼のすみか」とも形容されています。前期は9勝3敗の2人が昇級し、4勝8敗の中で順位が低い2人を含む3人が降級しています。
今期の注目棋士をリストアップしておきたいと思います。
佐藤康光九段
1987年プロ入りの53歳。タイトル獲得通算13期で、永世棋聖の資格保持者。
近年は丸太を振り回すと言われる豪快な棋風で人気ですが、前期は残念ながらA級から陥落を喫しました。6年間務めた連盟会長を退任することを発表しており、本業に集中することでA級復帰を目指します。
近藤誠也七段
2015年プロ入りの26歳。
順位戦に参戦して4期でB級1組に駆け上がり、4期目となります。前期は4連敗後の8連勝で大きく順位を上げ、今期こそB級1組の壁を乗り越えたいところです。
羽生善治九段
1985年プロ入りの52歳。タイトル獲得通算99期で、永世七冠の資格保持者。
昨年度は王将戦挑戦者になるなど、見事に復調を遂げましたが、順位戦では中盤の4連敗が響き、昇級争いに加わることができませんでした。まだまだA級で戦って欲しいという多くの将棋ファンの期待を背負っています。
千田翔太七段
2013年プロ入りの29歳。タイトル挑戦1回。
将棋ソフトを使った序盤研究の先駆者であり、2度に渡り升田幸三賞を受賞しています。朝日杯では七段時代の藤井竜王の3連覇を阻んで優勝した経験があり、順位戦でも自身初のA級昇級を目指します。
大橋貴洸七段
2016年プロ入りの30歳。
藤井竜王とプロ入り同期で、対藤井戦4連勝中(2敗)の藤井キラーとしても知られています。順位戦は3期連続昇級でB級1組まで駆け上がってきました。鬼のすみかも1期抜けでA級昇級を目指します。
増田康宏七段
2014年プロ入りの25歳。
新人王戦を連覇した経験のある期待の若手が、ようやくB級1組の土俵に上がってきました。今期は順位戦だけでなく、タイトル争いに絡む活躍を楽しみにしたいと思います。