「観る将」が観た第3期白玲戦七番勝負第三局
9月16日、ヒューリック杯白玲戦七番勝負第三局が、石川県金沢市のホテル日航金沢で行われました。里見香奈白玲に西山朋佳女流三冠が挑む七番勝負は、両者1勝1敗のタイスコアとなり、シリーズの行方を占う重要な一局となりました。
前夜祭では、里見白玲は「自分の力を精一杯出し切れるように頑張って参ります」、西山女流三冠は「変わらず自分らしい将棋を求めて頑張って参りたいと思っております」と意気込みを話しています。
戦型は相三間飛車
西山女流三冠が赤や橙色の花柄をあしらった華やかな着物と淡い藤色の袴で入室すると、里見白玲は紫と淡い緑色を基調とした落ち着いた雰囲気の着物と茄子紺の袴で入室します。先手の西山女流三冠が初手に三間飛車に振り、早々に9筋の歩を突いてから▲3八銀と上がって工夫を見せると、里見白玲は慎重に少しずつ時間を使い、△4四銀と上がってから14手目に三間飛車に振ります。
西山女流三冠が角を交換
西山女流三冠は7筋の歩をぶつけ、里見白玲が6筋に銀を上がって受けると、左金を5筋に上がって待ちます。里見白玲は7筋の歩交換に応じ、銀を上がって5筋の歩を支えると、3筋の歩をぶつけます。西山女流三冠は4筋の歩を伸ばして銀に当て、里見白玲が△4五同銀と応じると、角を交換して飛車で取らせてから3筋の歩を取ります。
3筋からの逆襲
里見白玲は5筋の歩を伸ばし、西山女流三冠が31分の熟考で3筋の歩を伸ばすと、18分考えて△6四銀と上がり、先手の飛車の横利きを止めます。西山女流三冠が3筋の歩を成り捨て、▲3七桂と銀に当てると、里見白玲は飛車を3筋に戻し、銀を取らせて3筋からの反撃を狙います。わずかに指し易い局面を迎えた西山女流三冠が、次の35手目を考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見白玲が2時間32分、西山女流三冠が2時間30分となっています。
飛車角交換
昼休が明けるとすぐ、西山女流三冠は4筋に歩を叩いて後手の飛車のコビンを開け、銀桂交換してから空いたスペースに▲4三角と打ち込みます。里見白玲は飛車を逃げずに金銀両取りに△4六桂と打ちますが、西山女流三冠は飛角交換して、金桂両取りに▲8二飛と打ち込みます。形勢は早くも西山女流三冠に大きく傾いているようです。
里見白玲の反撃
里見白玲は自陣の金に紐を付けつつ飛車取りに△6五角と打ちますが、西山女流三冠は▲6二銀と王手して畳み掛けます。里見白玲は玉を4筋に逃がすしかなく、西山女流三冠は▲6一銀不成と金を取ります。里見白玲は62分の長考で△1五角と王手し、西山女流三冠が玉を6筋にかわすと、取れる飛車を取らずに△8七角成と馬を作って王手します。
決め手の飛車切り
西山女流三冠は金で合い駒して馬に当て、里見白玲が飛車取りに△7三歩と打つと、飛車で銀を食いちぎってから馬を取ります。里見白玲は両取りに打った桂をようやく金と交換し、王手銀取りに△3九飛と打ち込んでから△3七桂成と食い下がります。既に読み切ったと思われる西山女流三冠がノータイムで▲5四角と打って詰めろを掛けると、里見白玲は数分考えましたが、攻防共に見込みがなく投了を告げました。
まとめ
本局は里見白玲が飛車先の歩を伸ばしたところで、西山女流三冠が角交換して後手の飛車の位置を変え、3筋から逆襲して銀桂交換の戦果を挙げました。里見白玲は飛車を戻して反撃を狙いましたが、西山女流三冠は飛角交換から後手陣に飛車を打ち込み、瞬く間に勝勢の局面を築きました。里見白玲は懸命に反撃しましたが形勢差は埋まらず、西山女流三冠は持ち時間を1時間40分以上残し、61手の短手数での快勝となりました。
対局後のインタビューで次局への抱負を聞かれ、勝った西山女流三冠は「久しぶりに1週空くということで、状態を整えて挑みたいと思います」、力を出し切れなかった里見白玲は「体調管理に気をつけて頑張りたいと思います」と答えました。七番勝負はまだ先の長い戦いになりますが、第四局以降も熱戦を期待したいと思います。
ヒューリック杯白玲戦は、ヒューリック株式会社と日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。