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「観る将」が観た第17期マイナビ女子オープン五番勝負第一局

4月9日、マイナビ女子オープンが神奈川県秦野市の「元湯 陣屋」で開幕しました。既に永世女王の資格を持つ西山朋佳女王に挑むのは、タイトル初挑戦となる大島綾華女流二段です。

西山女王は前期、引退を発表していた甲斐女流五段を挑戦者に迎え、3勝0敗で防衛し6連覇を達成しています。
大島女流二段は今期、宮宗女流二段と加藤(結)女流初段破って予選を突破し、本戦では頼本女流初段、里見女流四冠(当時)、加藤(桃)女流四段、北村女流二段を降して挑戦権を獲得しています。

大島女流二段は、女流順位戦でC級在籍者としては史上初めての女流タイトル挑戦者であり、昨年末から著しい成長を遂げる21歳の若手女流棋士です。女流王位リーグでは伊藤(沙)女流四段を破り、西山女王を勝利寸前まで追い込みました。更に女流名人戦では、自身初の女流名人リーグ入りを果たしています。二強が8タイトルを独占する女流棋界において、新たな力がどこまで通用するのか、非常に楽しみなシリーズとなりました。

前日行われた夕食会で、大島女流二段は「番勝負では一局一局を大切に精いっぱい頑張りたいと思います」、西山女王は「今回は新鮮味のあるシリーズとなりまして、私自身緊張感もあるのですけれども、自分らしく頑張って参りたいと思っております」と挨拶しています。


戦型は居飛車穴熊対三間飛車

大島女流二段が白地に赤や紫の花を散りばめた着物と紺色の袴で入室すると、西山女王は薄桃地に水色の藤の花をあしらった華やかな着物に亜麻色の袴で入室します。振り駒で先手となった西山女王が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、大島女流二段は舟囲いから飛車を浮き、△6四銀と開戦準備を整えます。

大島女流二段の仕掛け

西山女王は▲6七銀と角頭を補強し、大島女流二段が△7五歩と仕掛けると、▲5九角と引いて飛車の利きを通します。大島女流二段は7筋の歩を取り込んで△7四歩と打ち、西山女王が飛車を引くと、8筋の歩を突き捨ててから△7五銀と繰り出します。西山女王が▲9七桂と跳ねると、大島女流二段は11分の少考で9筋の歩も突き捨て、△6四歩と力を溜めます。

銀交換

西山女王が14分の少考で▲7六銀とぶつけて銀交換すると、大島女流二段は△7五銀と打ち直して飛車を追い返します。次の50手目を大島女流二段が考慮中に昼休となりました。形勢はほぼ互角、各3時間の持ち時間の内、残り時間は西山女王が2時間16分、大島女流二段が1時間46分となっています。

西山女王の反発

大島女流二段は昼休を挟む9分の考慮で△6五歩とぶつけ、西山女王が銀取りに▲7六歩と打つと、更に18分熟考して△6四銀と引きます。西山女王は8筋の歩を伸ばして飛車を追い、▲8六角と覗いて銀を追い、24分の熟考で▲7五歩と薄くなった桂頭を攻めます。大島女流二段は△6六角と飛び出し、西山女王が7筋の歩を取り込んで桂に当てると、△8八角成と馬を作って飛車に当てます。

西山女王の自陣角

西山女王は▲7六飛と浮いてかわし、大島女流二段が飛角両取りに△8七馬と引くと、▲6七金と上がって飛車に紐を付けます。大島女流二段は残り1時間を切り、17分の考慮で馬を飛車と交換し、金香両取りに△7九飛と打ちますが、西山女王は▲7七角打と両取りを防ぎつつ後手陣を睨む自陣角を放ちます。形勢はわずかに先手が指し易くなってきたようです。

馬切りの強襲

大島女流二段は6筋の歩を伸ばし、西山女王が▲7三歩成と桂を取って"と金"を作ると、△6七歩成と"と金"を作って角に当てて攻め合います。西山女王は▲1一角成と飛び込み、大島女流二段が△2二銀と馬に当てると、▲2二同馬と銀を食いちぎり、▲2六桂と打って後手陣に攻め掛かります。形勢は先手に大きく傾いてきたようです。

飛金両取り

大島女流二段が△3二玉と早逃げすると、西山女王は▲6三"と"と捨てて金で取らせ、飛金両取りに▲7二銀と打ちます。大島女流二段は両取り逃げるべからずで△7六飛成~△8六竜と金角を取りますが、飛車を取った西山女王はすぐに▲1二飛と王手します。

大島女流二段が1分将棋に

西山女王は連続王手で後手玉を追い、大島女流二段が△5一玉とかわすと、▲7二銀不成と金に当てつつ挟撃態勢を作ります。大島女流二段が△6六竜と金に紐を付けると、西山女王は金銀交換してから竜取りに▲7五桂と打ちます。大島女流二段は△7四竜とかわし、西山女王が▲3二銀不成と金に当てると、1分将棋となる中△5二角と金に紐を付けて粘ります。

大島女流二段の辛抱

西山女王が金銀交換してから角取りに▲3一金と打つと、大島女流二段はもう1枚の角を△5二角打と繋いで辛抱します。西山女王は角金交換してから再度角取りに▲3一金と打ち、大島女流二段が桂の利きに△6三角と差し出すと、角桂交換してから竜取りに▲7二角と打ちます。大島女流二段は△6二竜とかわしますが、後手玉には即詰みが生じたようで、西山女王は▲5二香と王手します。大島女流二段は数手指し続けましたが、西山女王の▲6三角上成を見て投了を告げました。

まとめ

本局は大島女流二段が積極的に仕掛けましたが、西山女王は後手の攻め駒に圧力を掛けて押し返しました。大島女流二段は馬を飛車と交換して先手陣に打ち込みましたが、西山女王は自陣角で両取りを受け、その角で後手陣を切り崩し、瞬く間に後手玉を追い詰めました。西山女王としては、持ち時間を1時間以上残しての快勝だったと思います。
大島女流二段はほろ苦いタイトル戦デビューとなりましたが、対局後「第一局はヒドかったので、全体的に反省してまた頑張りたいと思います」と話しており、次局以降の巻き返しを期待したいと思います。

マイナビ女子オープンは、株式会社マイナビと日本将棋連盟が主催しています。棋譜は下記公式サイトをご確認ください。


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