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2021年度将棋大賞の発表

4月1日、2021年度の対局を対象とした「第49回将棋大賞」が発表されました。各賞の結果を確認しておきたいと思います。


■個人表彰

最優秀棋士賞:藤井聡太竜王(2回目)
特別賞   :該当なし
優秀棋士賞 :渡辺明名人(8回目)
敢闘賞   :菅井竜也八段(初)
新人賞   :伊藤匠五段(初)

最優秀棋士賞と優秀棋士賞は妥当なな結果だと思います。今後数年間は、誰が藤井竜王の最優秀棋士賞を阻止できるかという争いになりそうです。

敢闘賞は、選考基準が良くわかりませんが、銀河戦と朝日杯で優勝した菅井八段が選ばれました。菅井八段の成績はもちろん敢闘賞に値する立派なものですが、藤井竜王と3つのタイトル戦で死闘を演じた豊島九段や、王座防衛を果たした永瀬王座が選ばれなかったのは、もっと上を目指して欲しいという2人に対する期待の大きさの表れだったのかもしれません。

新人賞は、伊藤匠五段が選ばれました。新人王戦の優勝、順位戦の昇級、王位戦の挑戦者決定リーグ入り等の活躍に加え、勝率一位賞も高く評価されたものと思われます。

■記録部門

最多対局賞 :藤井聡太竜王 64対局(2回目)
最多勝利賞 :藤井聡太竜王 52勝(3年連続4回目)
勝率一位賞 :伊藤匠五段 45勝10敗 0.818(初)
連勝賞   :渡辺和史五段 20連勝 (2021/10/7~2022/3/18) (初)

最多対局賞と最多勝利賞は、藤井竜王が独走して獲得しました。

伊藤(匠)五段の勝率一位賞は、3月30日の対局結果次第という状況でしたが、見事に勝って自力で初受賞を掴み取りました。藤井竜王は5年連続勝率8割以上という前人未到の大記録を達成しましたが、5年連続の勝率一位賞の獲得はなりませんでした。

渡辺(和)五段の連勝記録は、4月1日時点の日本将棋連盟HPでは17連勝となっていましたが、未放映のテレビ対局で更に3連勝の上積みがあったようで、藤井竜王の19連勝をわずかにかわしての初受賞となりました。20連勝は歴代でも7位の好記録であり、順位戦でも昇級を果たした渡辺(和)五段の来年度以降の飛躍に期待したいと思います。

■女流部門

最優秀女流棋士賞:里見香奈女流四冠(7年連続12回目)
優秀女流棋士賞 :西山朋佳女流二冠(初)
女流最多対局賞 :伊藤沙恵女流名人 53局(4回目)

最優秀女流棋士賞は、第一人者の里見女流四冠が順当に選ばれ12回目の受賞となりました。一時は四冠ずつ分け合った西山女流二冠から女流王将と女流王座を奪還したことが大きく評価されたものと思われます。

優秀女流棋士賞は、2021年度から女流棋士に転向した西山女流二冠が選ばれました。初代白玲を戴冠したことが評価されたものと思われます。2022年度は里見女流四冠とのダブルタイトル戦から始まりますので、より一層熾烈な争いとなることを期待したいと思います。

女流最多対局賞は、伊藤女流名人が53局で獲得しました。新たな女流棋戦が増え、過去最高記録の清水女流七段の55局に迫る勢いでした。

■升田幸三賞・名局賞他

東京将棋記者会賞  :桐山清澄九段
升田幸三賞     :千田翔太七段(角換わり3三金型早繰り銀)
升田幸三賞(特別賞):田中寅彦九段
名局賞       :第34期竜王戦第四局 豊島将之竜王対藤井聡太三冠(肩書きは当時)
女流名局賞     :第48期岡田美術館杯女流名人戦第二局 里見香奈女流名人対伊藤沙恵女流三段(肩書きは当時)
名局賞(特別賞)  :該当なし

升田幸三賞は、千田七段が受賞しました。千田七段は早くからAI研究を始めたことで知られており、2016年度にも「対矢倉左美濃急戦」「角換わり腰掛け銀4二玉・6二金・8一飛型」で受賞しています。今回は「角換わり3三金型早繰り銀」での受賞となり、将棋界に新たな戦法を導入する先駆的活躍が評価されたものと思います。

升田幸三賞特別賞の田中寅彦九段は「序盤のエジソン」の異名を持ち、居飛車穴熊や飛車先不突矢倉などの序盤戦術を開拓したことで知られています。先日惜しくも引退が決まりましたが、長年に渡る抜群の功績に対する表彰と思います。

観る将としてもっとも注目している名局賞は、竜王戦第四局が選ばれました。王将戦第一局の下馬評が高かったように思いますが、竜王戦第四局の最終盤のあの99分間は将棋史に残る名場面として記憶に残るものと思います。

女流名局賞は、女流名人戦の第二局が選ばれました。個人的には第四局を予想していましたが、確かに第二局も終盤までどちらが勝つかわからない熱戦で、180手に及ぶ死闘は名局賞に相応しい好局だったと思います。


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