「観る将」が観た第12期女流王座戦挑戦者決定戦
9月7日、第12期リコー杯女流王座戦の挑戦者決定戦が行われました。前期に女流王座を奪われた西山朋佳女流二冠と、先日清麗を奪還された加藤桃子女流三段の、ともに里見香奈女流王座へのリベンジに燃える2人の顔合わせとなりました。
西山女流二冠は女流王座を通算2期獲得しており、今期は千葉女流四段、矢内女流五段、塚田女流二段を降して勝ち上がってきました。加藤(桃)女流三段は女流王座を通算4期獲得しており、今期は小高女流初段、中澤女流二段、上田女流四段を降して勝ち上がっています。両者の対戦成績は奨励会時代を含め、西山女流二冠が10勝、加藤(桃)女流三段が7勝となっています。
いきなりの桂交換
振り駒で先手となった西山女流二冠は中飛車を採用し、加藤女流三段は角道を開けずに右銀を繰り出し、銀対向の形で迎え撃ちます。加藤女流三段が左美濃に囲うと、西山女流二冠も美濃囲いに構え、ともに銀冠に組み替えます。西山女流二冠が左桂をポンポンと跳ねる趣向を見せると、加藤女流三段も桂を跳ね桂交換に応じます。
西山女流二冠の桂打ち
西山女流二冠は交換した桂を銀取りに▲5六桂と打ちますが、加藤女流三段は構わず7筋の歩をぶつけます。意表を突かれたのか西山女流二冠が長考に沈み、30分考えたところで昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は西山女流二冠が1時間41分、加藤女流三段が2時間21分となっています。
銀交換から角交換
西山女流二冠が昼休を挟む34分の長考で同歩と応じると、加藤女流三段は桂に取られそうだった銀をぶつけて銀交換します。西山女流二冠が5筋の歩を突き捨ててから金取りに▲4四桂と跳ねると、加藤女流三段は△4二金寄とかわします。西山女流二冠が7筋に歩を垂らすと、加藤女流三段は角頭を歩で叩き角交換に応じます。
加藤女流三段の継ぎ桂
西山女流二冠が▲6二角と打ち込んで桂に紐を付けると、加藤女流三段は飛車を寄って角に当てます。西山女流二冠が歩を成って"と金"で角に紐を付けると加藤女流三段は△4五桂打の継ぎ桂で攻め掛かります。西山女流二冠はいったん桂交換し、△3七銀の打ち込みには金銀交換で凌ぎます。加藤女流三段は再度△4五桂と打ち△5三金と打ち込んで攻め込みます。西山女流二冠は自陣に銀を打って受けますが、加藤女流三段は王手で△5五角と打ち、桂で合い駒させてから△6六角とラインを変えて攻め続けます。
西山女流二冠の反発
西山女流二冠は銀で金を外しますが、加藤女流三段は同桂成と飛び込みます。西山女流二冠が▲3八金と守りを固めると、加藤女流三段は桂取りに△4五歩と打ちます。西山女流二冠は取られそうな桂を▲3四桂と王手で跳ね、3筋の歩を伸ばして銀に当てます。取ると角で素抜かれる筋があるので、加藤女流三段は先に飛車を角と交換してから銀で歩を外します。
タダ捨ての猛攻
西山女流二冠が金に当てて"と金"を寄ると、加藤女流三段は金を上がってかわします。西山女流二冠は"と金"を引いてタダ捨てすることで守りの金を1枚遠ざけ、王手で▲3四桂と追撃します。この桂もタダですが、取ると後手陣がバラバラになるため加藤女流三段は△2三玉と上がってかわします。西山女流二冠は▲2二飛と王手で打ち込みますが、加藤女流三段は△3四玉と桂を取ってかわします。西山女流二冠は更に▲3二桂成と金に当てますが、加藤女流三段は△2二金とかわします。
加藤女流三段の反撃
先手からの攻めを凌いだ加藤女流三段は、△3六歩から攻撃を再開します。加藤女流三段が△6四角と先手陣の急所を睨む角を放つと、西山女流二冠は歩で角を追いますが利きを止めることはできず、無念の投了となりました。
まとめ
本局は西山女流二冠が積極的に桂を跳ねて桂交換し、銀取りに打った桂を軸に攻め立てる作戦を採用しました。加藤女流三段は銀取りに構わず強く反発したのが奏功したようで、逆に継ぎ桂からの攻撃で先手陣を崩すことに成功しました。西山女流二冠は細い攻めをつないで後手玉に迫りましたが、加藤女流三段は落ち着いてかわし切ると、先手陣の急所を睨む角を放って勝負を決めました。
加藤女流三段は5年ぶりの女流王座戦五番勝負に登場となり「最初に取ったタイトルなので、思い入れがある棋戦」と語りました。力を出し切って里見女流王座に挑んで欲しいと思います。