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第1回ABEMA師弟トーナメント予選Aリーグ2位決定戦

1月8日、ABEMA師弟トーナメント予選Aリーグ2位決定戦が放映されました。チーム深浦「大地球」とチーム木村「ドラの穴」の顔合わせとなりましたが、両チームは1回戦でも顔を合わせており、チーム深浦が3勝0敗で快勝しています。チーム木村がどのように立て直してくるのか注目されます。

■一局目 深浦康市九段 ● vs 〇 木村一基九段
1回戦とは異なり両チームとも師匠が先陣を切ります。先手の木村九段が相掛かりに誘導し、深浦九段が先に飛先の歩を交換します。木村九段も飛先の歩を交換し7筋の歩も取ると、深浦九段は△2三歩と打って先手の飛車が2筋に戻るのを妨げます。木村九段はいつになく小刻みに時間を使って▲2四歩と合わせ、成り捨ててから再度▲2四歩と打って後手の金を1筋に追いやり▲5五角と飛び出します。深浦九段は先手の飛車と角の利きに△6四歩と突き、飛車取りに△6三銀と上がります。深浦九段は更に△4四角と出て、△7四歩~△9四歩で先手の飛車を詰ませます。木村九段は飛車を取らせる間に桂を取り、角取りに▲3四成桂と引きます。深浦九段は手抜いて7筋の歩を伸ばし先手の桂頭を狙いますが、木村九段は角を取って王手で▲3四角と打ちます。木村九段は▲2三歩成から金を取って馬を作り、もう1枚の角も▲2四角と出て先手陣を睨みます。深浦九段は△7二金と寄って自玉の退路を作りますが、木村九段は▲7四歩~▲8六桂と打って挟撃態勢を作ります。深浦九段も△8九飛と敵陣に打ち込み金取りに△8四桂と打って反撃し、木村九段が▲6五金と桂を食いちぎると、自分の頬を叩いて気合を入れて△7六桂と王手で跳ねます。木村九段は玉を右辺に逃がしますが、深浦九段は△2六銀と打って挟撃態勢を作ります。一局目からどちらが勝ってもおかしくない熱戦となりましたが、木村九段は▲7三歩成から寄せに入り、最後は▲5六歩と突いた手が詰めろ逃れの詰めろとなり即詰みに討ち取りました。

■二局目 佐々木大地五段 〇 vs ● 高野智史六段
一局目の激闘の余韻が冷めやらぬまま、両チームとも弟子が出陣します。先手の佐々木五段が相掛かりに誘導して先に飛先の歩を交換すると、高野六段も飛先の歩を交換して四段目に引きます。佐々木五段が八段目に飛車を引き腰掛け銀に構えると、高野六段は角を交換し銀冠を目指します。佐々木五段は7筋の歩を突き捨て積極的に▲5五銀と前進し、もう1枚の銀も▲8六銀と出て厚みを作ります。高野六段は△6五銀と出ますが、佐々木五段は飛車取りに▲7五銀と出て、高野六段が△8五飛と浮いてかわすと▲6六銀右と引いてぶつけます。高野六段は銀交換に応じますが、佐々木五段は飛車を追い返してから▲7四歩と桂頭を攻め、桂交換の後に金を吊り上げ▲7二銀と飛車取りに打って突破します。高野五段は△8八角と敵陣に打ち込みますが、佐々木五段も▲8三角と打ち込みお互いに馬を作ります。佐々木五段は1筋から端を攻め後手陣の銀冠を崩しますが、高野六段も△1七歩成から先手の飛車を攻めます。佐々木五段は自陣に金を打って後手の馬を捕獲すると、高野六段は先手の飛車を追い入玉を目指します。一局目に続いて熱戦となりましたが、佐々木五段は馬を飛車と交換し、▲1六飛と打って後手玉を追い返すと、四方から包囲して寄せ切りました。

■三局目 佐々木大地五段 ● vs 〇 高野智史六段
チーム木村は高野六段が深浦九段と指したいと言って出陣しますが、チーム深浦も佐々木五段が「疲れは特にない」と力強く宣言して出陣し、1回戦から数えて4回目の顔合わせとなりました。先手の高野六段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。佐々木五段が飛車を4筋に回って先手からの仕掛けに備えると、高野六段は銀を引いて銀矢倉の形に構えます。佐々木五段が飛車を8筋に戻して6筋から仕掛けると、高野六段は▲6四歩と垂らし4筋から反発します。高野六段が2筋の歩を突き捨ててから▲4六歩と桂を支えると、佐々木五段は△2三金と上がって2筋を受けます。ここで高野六段は3分を超える長考で▲5七金と上がり、佐々木五段が△4七角と打ち込むと▲6六金とぶつけます。佐々木五段が8筋を継ぎ歩攻めすると、高野六段は▲6五金と銀と交換して▲7三銀と飛車取りに打ちます。佐々木五段が飛車を寄ってかわすと、高野六段は更に▲8一角と打って攻め掛かります。佐々木五段は△5七角成と馬を作りますが、高野六段が銀を引いてかわすと2分近い長考の末△6二歩と自陣に手を戻します。高野六段は飛車を取ってから▲4三歩と玉頭を叩き、馬を作ってから▲7一飛と打ち込みます。佐々木五段は玉の早逃げでかわしますが、高野六段は馬で金を食いちぎって寄せに行きます。佐々木五段は△7九角から詰めろを掛けますが、高野六段は桂を打って詰めろを逃れると、▲3一飛成から鮮やかに寄せ切りました。

■四局目 深浦康市九段 〇 vs ● 木村一基九段
四局目は必然的に師匠同士の対決となり、これも1回戦から数えて3回目の顔合わせとなりました。深浦九段が得意の雁木の駒組みを進め、相雁木の将棋となりました。木村九段が△5四銀と腰掛けると、深浦九段は▲4六銀~▲5五歩で銀を追い返し5筋の位を取ります。木村九段が△8四角と角を右辺に転回し△7五歩と仕掛けると、深浦九段は2筋の継ぎ歩攻めから5筋の歩を突き捨て十字飛車を狙います。木村九段は1分ほど手を止め、2筋の歩を突き捨てて十字飛車を回避しますが、深浦九段は再度▲2四歩から馬を作ります。木村九段は馬を捕獲しますが、深浦九段は馬を取らせる間に金を取り、1筋を突破して後手玉に攻め掛かります。木村九段は顔面受けで入玉を目指し、難解な攻防となりましたが、深浦九段は飛車を角と交換して押し返します。木村九段は王手で敵陣に飛車を打って竜を作りますが、深浦九段は再び後手の玉頭から攻め掛かり▲5五角の王手竜取りで竜を奪います。木村九段は諦めずに粘りますが、深浦九段は敵陣に飛車を打ち込み、落ち着いて攻め駒をを補充して寄せ切りました。

■五局目 佐々木大地五段 〇 vs ● 木村一基九段
師匠同士も弟子同士も1勝1敗となり、フルセットとなりました。チーム深浦は弟子を、チーム木村も弟子を出そうとしましたが高野六段の懇願により師匠が連投です。先手の木村九段が相掛かりに誘導し、先に飛先の歩を交換して八段目に引きます。佐々木五段も飛先の歩を交換すると、木村九段は慎重に時間を使って銀をぶつけて交換します。木村九段は1筋から端攻めして▲1三歩と垂らしますが、佐々木五段は△8五飛と浮いてから△1三桂と取ります。木村九段は▲8六銀と打って後手の飛車を下がらせてから1筋の香を走りますが、佐々木五段は△1六歩と垂らして先手の飛車を4筋に追いやります。佐々木五段が△6五角と桂取りに打つと、木村九段は飛車を2筋に戻して受けます。佐々木五段は△8八歩と打って銀で取らせてから1筋の歩を成り捨て、再度△1六歩~△1七歩成と桂を入手し、王手銀取りに△7六桂と打ちます。銀を得た佐々木五段は金の両取りに△6九銀と打ち込み、金を1枚剥がしてから△1六"と"と引いて竜の位置をずらします。佐々木五段は△7七香成と王手し、水を2口飲んで落ち着いてから△8七角成と王手し、そのまま鮮やかな即詰みに討ち取りました。

【チーム深浦 3勝 vs チーム木村 2勝】
全員が1勝ずつ挙げてフルセットにもつれ込むという優勝候補同士らしい激闘は、どの対局も内容が濃くどちらが勝ってもおかしくない戦いが続き、観る者が手に汗握る名勝負となりました。
チーム深浦は師匠が自ら粘り強い将棋を魅せ、最後は信頼する弟子にすべてを託して勝利を掴み取りました。師弟で共同のTwitterを立ち上げるなど仲が良いことで知られていますが、師匠が弟子を褒め上げ、弟子は伸び伸びと本来の実力を発揮する好循環になりました。2位通過という形ではありますが、優勝候補の筆頭とも思われたチーム木村を2度にわたって撃破し、優勝を狙える力があることを示したと思います。
チーム木村は、これまでフィッシャールールで抜群の実績を残してきた師匠が、今大会は個人でも負け越しという不振に陥り、まさかの予選敗退となりました。しかし師匠が弟子の意見に耳を傾けながら、敗戦の責任を一身に背負う姿は、素晴らしい師弟関係を感じさせる良いチームだったと思います。

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