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「観る将」が観た第14期女流王座戦五番勝負第二局
2月17日、リコー杯第14期女流王座戦五番勝負第二局が大阪府高槻市の関西将棋会館で行われました。10月に行われた第一局から4か月近く経ちますが、先勝している福間香奈女流王座が一気に防衛まであと1勝と迫るのか、西山朋佳女流三冠がタイスコアに戻すのか、注目の一局となっています。
年末に無事男の子を出産したという産休明けの福間女流王座は、14日に復帰戦となる女流順位戦3回戦を快勝し、中2日でこの日を迎えています。
居飛車対中飛車の銀対抗
関西将棋会館の特別対局室に、福間女流王座が淡いグレーのスーツで入室し、西山女流三冠は藍色のトップスと濃紺のボトムスで入室します。先手の西山女流三冠が3手目に飛先の歩を突いて珍しく居飛車を選択すると、福間女流王座は6手目に5筋の歩を突いて中飛車に振ります。西山女流三冠が右銀を繰り出して銀対抗の形となり、左銀も繰り出すと、福間女流王座は△5三銀上と備えます。
西山女流三冠の仕掛け
西山女流三冠が16分の考慮で2筋の歩を突き捨て、▲5五銀左とぶつけて銀交換して角で取ると、福間女流王座は△4四銀と上がって角を追い返し、交換したばかりの銀を△6五銀と打って角頭を狙います。西山女流三冠が▲5八金右と陣形を引き締めると、福間女流王座は47分の長考で△7六銀と歩を取って角に当てます。
大決戦の気配
西山女流三冠が角を8筋に引いてかわすと、福間女流王座は△5四飛と浮き、8筋へ転回して殺到する手を狙います。早くも大決戦の気配が漂う中、西山女流三冠が次の39手目を考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は福間女流王座が1時間59分、西山女流三冠が2時間16分となっています。
福間女流王座の大技
昼休が明けるとすぐ、西山女流三冠は銀取りに▲7七歩と打ち、福間女流王座が銀を8筋に引いてかわすと、▲2三銀と打ち込みます。福間女流王座は△5三銀と引き、西山女流王座が▲4五銀と立って飛車を追うと、飛車を8筋にかわします。西山女流三冠は▲3四銀引成と角に当てますが、ここで福間女流王座の△7六銀と歩頭に出る大技が炸裂します。
痛烈な王手飛車
この銀を放置すると8筋に飛び込まれてしまうので、西山女流三冠は歩で取るしかありませんが、福間女流王座は角を交換してから王手飛車取りに△5五角と打ちます。西山女流三冠は▲6六角と合わせ、福間女流王座が飛車を取って馬を作ると、▲4三成銀と銀に当てます。形勢は銀を犠牲に飛車を取った福間女流王座に傾いているようです。
福間女流王座の着実な攻め
福間女流王座は銀を6筋に引いてかわしつつ守りを固め、西山女流三冠が角で1筋の香を取って馬を作ると、金取りに△4九飛と打ち込みます。西山女流三冠は金を7筋に上がってかわしつつ守りを固め、福間女流王座が△4六歩と合わせると、20分熟考して同歩と応じます。福間女流王座は△4六同馬と銀に当て、西山女流三冠が▲5六銀と引いてかわすと、△5五歩と叩いて吊り上げてから馬で1筋の香を取ります。
西山女流三冠の懸命の受け
残り1時間を切った西山女流三冠は▲4六歩と打って後手の竜と馬の利きを遮り、福間女流王座が馬で2筋の桂を取ると、▲6六銀と引いて備えます。福間女流王座も残り1時間を切って8筋の飛車の前に香を据え、西山女流三冠が5筋の金底に香を打って飛車の横利きを止めると、△4七歩と垂らします。
飛車を見捨てて一気の寄せ
西山女流三冠は飛車取りに▲7五銀と出ますが、福間女流王座は構わず4筋の歩を成ります。西山女流三冠は銀で飛車を取り、福間女流王座が"と金"で5筋の金を剥がすと、▲2二飛と打ち込んで攻め合いを目指します。福間女流王座が△6七"と"と寄って金に当てると、西山女流三冠は6分程考えましたが、この"と金"を取ると飛車を成られて金に当たる手が厳しく、次の手を指さずに投了を告げました。
まとめ
本局は珍しく居飛車を採用した西山女流三冠が積極的に仕掛けましたが、福間女流王座は銀捨てから王手飛車取りの大技を掛けて優勢となりました。西山女流三冠は懸命に粘りましたが、福間女流王座は桂香を拾って駒得を拡大し、最後は飛車を見捨てて鮮やかに寄せ切りました。
福間女流王座は防衛まであと1勝となり、休場により延期されていた倉敷藤花戦や女流名人戦を含め、タイトな日程が続く防衛戦に向けて幸先良いスタートを切りました。対局後には「環境の変化はありましたが、割と平常心で戦えたかと思います」と話しており、どのような将棋を魅せてくれるか楽しみです。西山女流三冠は「久しぶりのタイトル戦なので、楽しみに思っていた面もありました」と、宿敵との対局を喜ぶ様子が感じられ、次局以降の巻き返しに期待したいと思います。
リコー杯女流王座戦は、株式会社リコーと日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。