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第4回ABEMAトーナメント本戦1回戦第二試合

7月31日に第4回ABEMAトーナメント本戦1回戦の第二試合が行われました。予選とは異なり、本戦は負ければ終わりの一発勝負であり、生中継ということもあり緊張感が高まっています。この日は、予選Aリーグ2位のチーム稲葉「加古川観光大使」と予選Eリーグ2位のチーム斎藤「ここ一番」との対戦となりました。

■一局目 稲葉陽八段 〇 vs ● 都成竜馬七段
チーム稲葉は一局目からリーダーが登場し、奨励会同期の対決となりました。先手の都成七段が相掛かりに誘導し、稲葉八段は先に飛先の歩を交換し縦歩取りを狙います。都成七段は▲7七金~▲8七玉と変わった陣形に構えます。稲葉八段が3筋から仕掛け、飛車を取り合って馬を作ります。都成七段も馬を自陣に引き付け粘りますが、稲葉八段は相手の玉頭から殺到して即詰みに討ち取りました。

■二局目 稲葉陽八段 〇 vs ● 斎藤慎太郎八段
一局目を落としたチーム斎藤はリーダーの登場で、早くもリーダー同士の対決が実現しました。先手の稲葉八段が相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。ジリジリした駒組みが続きましたが、斎藤八段が角交換してから相手の銀の利きに△3六角と打つ勝負手を放ちます。駒得となった稲葉八段が2筋を突破して攻め掛かりますが、斎藤八段も香で角を取り返して相手陣に迫ります。最後は稲葉八段が▲3三桂から寄せに入り、豪快に王手竜取りを掛けて勝利を掴みました。

■三局目 稲葉陽八段 ● vs 〇 村山慈明七段
チーム稲葉は波に乗ったリーダーの3連投です。先手の村山七段は角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。稲葉八段は右玉に構え、△4二銀と引いて相手に飛先の歩を交換させてから反発します。稲葉八段は角を犠牲に3筋を突破し飛車を捕獲しますが、村山七段も9筋から反発し竜を作って相手玉に迫ります。稲葉八段は中段に玉を逃がして入玉に成功しますが、村山七段も入玉を目指し点数勝負となりました。小駒の数が足りない稲葉八段は、相手の馬を取りにいきますが、村山七段がかわして逃げ切りました。

■四局目 船江恒平六段 〇 vs ● 都成竜馬七段
チーム稲葉はリーダーの3連勝はなりませんでしたが、船江六段が本日初登場です。後手の都成七段は向かい飛車を選択し、船江六段は銀冠から穴熊に組み替えます。都成七段は角を奪って駒得となりますが、船江六段は1枚ずつ相手陣の金駒を外して敵玉に迫ります。都成七段は馬を作って攻撃の糸口を探りますが、船江六段は落ち着いた指し回しで最後は端攻めを絡めて寄せ切りました。

■五局目 久保利明九段 〇 vs ● 村山慈明七段
チーム稲葉は満を持して久保九段が本日初登場です。後手の久保九段がゴキゲン中飛車を採用すると、村山七段は超速▲3七銀で対抗し銀冠に囲います。久保九段は四段目に2枚の銀を繰り出すと、村山七段も飛車を5筋に回して盤面中央での激しい戦いとなりました。村山七段は▲5四歩から積極的に攻め込みますが、久保九段は手厚く受け止め、反撃に転じると鮮やかな寄せを魅せ即詰みに討ち取りました。

■六局目 船江恒平六段 ● vs 〇 斎藤慎太郎八段
後がなくなったチーム斎藤は、「勝つしかない」と力強く宣言したリーダーが流れを変えるべく出陣です。先手の船江六段が矢倉に誘導し、斎藤八段は急戦調の駒組みを進めます。斎藤八段は△8六歩から角交換して先手陣を乱します。船江六段も端角を打って相手陣に迫りますが、斎藤八段はギリギリの受けを見せると馬を作って反撃に転じ、鮮やかな即詰みに討ち取りました。

■七局目 久保利明九段 ● vs 〇 斎藤慎太郎八段
後がないチーム斎藤は、チームメイトに推されてリーダーの連投です。後手の久保九段は角道を止めて四間飛車に振ります。斎藤八段がトーチカに囲うのを見た久保九段は5筋から仕掛けますが、斎藤八段は金を中央に進出させて反撃します。久保九段は辛抱の受けが続きましたが2筋から反撃します。斎藤八段は飛車を見捨てて5筋を突破し、鮮やかに寄せ切りました。

■八局目 船江恒平六段 ● vs 〇 村山慈明七段
リーダーが流れを取り戻したチーム斎藤は、村山七段に託します。後手の村山七段は、両チームが作戦会議で口にしていた一手損角換わりを採用します。船江六段は3筋の歩を突き捨ててから▲4五桂と仕掛けます。村山七段が△5五歩と銀取りを掛けますが、船江六段は手抜いて▲7三歩成から攻め合います。お互いに一歩も引かずに敵玉に迫りますが、村山七段の△7六桂が決め手となり、即詰みに討ち取りました。

■九局目 久保利明九段 〇 vs ● 都成竜馬七段
チーム斎藤が追い上げ4勝4敗のタイとなり、チーム稲葉は2枚看板のエース久保九段の登場です。あらためて振り駒が行われ、先手となった都成七段はいきなり9筋の位を取り、久保九段は角道を止めて四間飛車を採用します。お互いに金無双に囲い、ジリジリした駒組みが続きます。都成七段は2筋の歩を突き捨ててから3筋から仕掛けます。飛車角交換となり、久保九段は竜を作りますが、都成七段は9筋から仕掛けて最終局に相応しい激闘となりました。最後は久保九段が竜を切って猛攻を仕掛け、時間のない都成七段は懸命に粘ります。最後は思い切りよく攻め続けた久保九段が即詰みに討ち取りました。

【チーム稲葉 5勝 vs チーム斎藤 4勝】
チーム稲葉は、一局目からリーダーの3連投で流れを掴み、四局目以降は攻め将棋の船江六段に先手番を任せ、振り飛車党の久保九段が後手番を受け持つ作戦が奏功し、前半に作った貯金を活かして逃げ切りました。2枚看板の稲葉八段と久保九段が2勝ずつ挙げ、船江六段が1勝するというのは、チームとしてのプラン通りだったような気がします。事前にチームメンバーで練習を積んだようで、3人とも終盤に相手より時間に余裕がある対局が多く、時間の使い方も大きな勝因の一つだったと思います。
チーム斎藤は、最終局までもつれこむ粘りを見せましたが、やはり前半のビハインドが大きく逆転には至りませんでした。しかし追い込まれてから斎藤八段と村山七段が執念の勝利を挙げ、最終局では都成七段が激闘を演じ、団体戦ならではの盛り上がりを魅せてくれました。惜しくもここで敗退となりますが、素晴らしい勝負を戦い抜いた3人にも拍手を贈りたいと思います。


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