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「観る将」が観た第3期白玲戦七番勝負第四局

9月30日、ヒューリック杯白玲戦七番勝負第四局が、奈良市の「ふふ奈良」「瑜伽山園地 茶室:䕪庵」で行われました。ここまで1勝2敗と先行された里見香奈白玲が巻き返すのか、西山朋佳女流三冠が勝って奪取まであと1勝と迫るのか、注目の一局となりました。

前夜祭では、里見白玲は「自分の力を精一杯出し切れるように頑張って参ります」、西山女流三冠は「変わらず自分らしい将棋を求めて頑張って参りたいと思っております」と意気込みを話しています。


里見白玲は中飛車から居飛車へ

西山女流三冠が黒地に花柄の着物と黄金色の袴で入室すると、里見白玲は藤色の着物と茄子紺の袴で入室します。先手の里見白玲が3手目に中飛車に振ると、西山女流三冠は角を上がって6手目に向かい飛車に振ります。西山女流三冠が2筋の歩を伸ばすと、里見白玲は飛車を2筋の戻して受けます。

里見白玲の仕掛け

里見白玲が5筋の位を取ると、西山女流三冠は15分考えて△4三銀と上がり、手順は異なりますが第二局と同じ局面になります。里見白玲が銀を上がって5筋の位を支えると、西山女流三冠は美濃囲いを完成させ、飛車を浮いて先手の角のラインから外して前例を離れます。里見白玲は▲3七桂と跳ね、西山女流三冠が角を5筋に引くと、15分の考慮で▲4五歩と仕掛けます。

西山女流三冠の反発

西山女流三冠は歩交換に応じ、里見白玲が銀で取ると、26分の熟考で△1五角と飛び出して桂に当てます。里見白玲が▲4七金と上がって桂に紐を付けると、西山女流三冠は△3三桂と跳ねて先手の銀を引かせ、△4六歩と金頭を叩きます。取ると角で桂を取られるので、里見白玲は金を引くしかありませんが、西山女流三冠は2筋の歩をぶつけて飛車を交換します。

角切りの強襲

里見白玲は▲2九飛と打って、角に当てつつ後手からの飛車の打ち込みを防ぎますが、西山女流三冠は飛頭を歩で叩いてから△3七角成と桂を食いちぎり、金取りに△3九飛と打ち込みます。西山女流三冠らしい思い切りの良い強襲に、控室でも驚きの声が上がっているようです。意表を突かれたと思われる里見白玲は冷静に24分考えて▲2一飛成と竜を作り、西山女流三冠が△3七飛成と金を取って竜を作ると、▲4四歩と銀頭を叩いて攻め合います。

角の活用

里見白玲が5筋の歩を伸ばして角の利きを銀に当てると、西山女流三冠は△4五銀とぶつけます。次の59手目を里見白玲が考慮中に昼休となりました。駒割りは角と金桂の2枚替えですが、里見白玲の攻めが後手陣の急所に刺さってわずかに指し易いようです。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見白玲が2時間24分、西山女流三冠が2時間37分となっています。

教科書通りの美濃崩し

昼休が明けると、里見白玲は義交換に応じ、5筋の歩を成り捨てて後手陣の金を吊り上げ、▲6二銀と美濃崩しの教科書通りの攻めを繰り出します。西山女流三冠は5筋の底歩で受け、里見白玲が金銀交換してから▲5一竜と寄せると、△6二金と投じて受け止めます。

里見白玲の端攻め

後手陣の6筋が壁になったので、里見白玲は9筋の歩をぶつけて端攻めに転じますが、西山女流三冠は36分の長考で銀取りに△5六桂と打って攻め合います。里見白玲は9筋の歩を取り込み、西山女流三冠がいったん△9二歩と受けると、35分の熟考で▲1一角成と香を補充しつつ馬を作ります。

熟考の応酬

西山女流三冠が△6八桂成と銀桂交換してから△5七桂成と飛び込んで金に当てると、里見白玲は20分の熟考で▲6九香と補強します。西山女流三冠も28分の熟考で△2八竜と入ると、里見白玲は23分の熟考で残り1時間を切り、▲6六馬と引き付けて攻防に利かせます。中盤の難所を迎え熟考の応酬となり、形勢は混沌としています。

詰めろ逃れの詰めろ

西山女流三冠が△6八成桂と金桂交換し、詰めろ逃れの詰めろで△8五銀と打つと、里見白玲は▲5九歩と金を温存して詰めろを逃れます。西山女流三冠は△4七歩成と"と金"を作って攻め駒を足し、里見白玲が▲4八歩と焦点の歩で竜の横利きを遮ると、△1九竜と香を補充しつつ下段からの攻撃に切り替えます。

竜と馬の脅威の緩和

里見白玲は歩で4筋の"と金"を取り、西山女流三冠が△5九竜と迫ると、▲6九金と打って追い返します。里見白玲が金取りに▲5四桂と打つと、残り1時間を切った西山女流三冠は金で桂を食いちぎり、先手の竜の脅威を緩和します。西山女流三冠は馬取りに△7四桂と打ち、里見白玲が▲7七馬と引いて辛抱すると、△5二香と打って竜を追います。先手の竜と馬の利きが後手陣から外れ、形勢は西山女流三冠に傾いているようです。

竜切りの粘り

里見白玲が▲6五竜と引いて銀に当てると、西山女流三冠は△8四銀と打って守ります。里見白玲は残り5分となり、▲4八角と攻防の自陣角を放ち、西山女流三冠が竜取りに△5六銀と打つと、▲8五竜と銀を食いちぎってから5筋に底歩を打って粘ります。西山女流三冠が△5七銀成と飛び込むと、1分将棋に突入した里見白玲は角で成銀を食いちぎり、玉頭を押さえる銀に当てて▲8五金と打ちます。

豪腕の寄せ

西山女流三冠は7分の考慮で△5八金と打って先手陣の金を剥がし、里見白玲が▲8五金と銀を取ると、△7九飛と王手で打ち込みます。里見白玲は玉を8筋にかわすしかありませんが、西山女流三冠は飛車を先手陣の守りの要となっていた馬と刺し違え、△5七角と打って詰めろを掛けます。里見白玲は7筋の歩を伸ばして玉の退路を作りますが、西山女流三冠は△6八角成から連続王手で先手玉を追い、そのまま即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は里見白玲の仕掛けに西山女流三冠が強く反発し、角切りの強襲から激しい戦いに突入しました。里見白玲が後手の美濃囲いを崩して端攻めに転じた辺りでは好調に見えましたが、西山女流三冠は竜と桂の攻めでペースを掴みました。最後は先手の竜と馬を追って自陣の脅威を緩和した西山女流三冠が、里見白玲の反撃を許さず寄せ切りました。
3勝1敗で白玲奪還まであと1勝となった西山女流三冠は、次局への抱負を聞かれ「しっかり準備して挑みたいなと思います」と答えています。先日は里見倉敷藤花への挑戦権も獲得するなど好調で、短い言葉の中にも期するものを感じます。
カド番に追い込まれた里見白玲は「一生懸命頑張りたいと思います」と話しており、第一人者の巻き返しに期待したいと思います。

ヒューリック杯白玲戦は、ヒューリック株式会社と日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。


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