「観る将」が観た第4期白玲戦七番勝負第二局
9月14日、ヒューリック杯白玲戦七番勝負第二局が鹿児島県指宿市の指宿白水館で行われました。先勝した西山朋佳白玲がリードを拡げるのか、福間香奈女流五冠がタイスコアに戻すのか、注目の一局となっています。
前日の開会式では、西山白玲は「今月はたくさん対局がありまして、一局一局が大切なのですが、明日も七番勝負の2局目ということで、また気を引き締めて臨みたいと思います」と挨拶しています。11日に予定されていた朝日杯の一次予選を不戦敗し、体調が心配される福間女流五冠は「明日は第二局ということで、自分の力を精一杯出し切れるように、頑張ってまいりたいと思います」と力強く話しています。
西山白玲は三間飛車
和室にテーブルと椅子が設けられた対局室に、福間女流五冠が薄紫のワンピースで入室すると、すぐに西山白玲が紅梅色の着物に濃緑色の袴で入室します。先手の西山白玲が三間飛車に振ると、福間女流五冠は5筋の歩を突いて△5三銀と繰り出します。お互いに角頭の歩を伸ばし、西山白玲が▲6六角~▲8八飛と向かい飛車に振り直すと、福間女流五冠は26分の熟考で△5五銀と先手の角にぶつけます。
戦型は相振り飛車へ
西山白玲は角を7筋に引き、福間女流五冠が7筋の歩を突くと、9筋の歩を交換して香を走ります。福間女流五冠は△9三歩と受け、西山白玲が24分の熟考で▲5六歩と突き、銀を追い返して▲5七銀と上がると、△7三銀と上がってから向かい飛車に振ります。西山白玲が▲4六銀と繰り出すと、福間女流五冠は飛車先の歩を交換します。次の41手目を西山白玲が考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は西山白玲が2時間28分、福間女流五冠が2時間34分と拮抗しています。
飛車で揺さぶりを掛ける福間女流五冠
昼休が明けると西山白玲は2筋の銀を立って飛車を追い返し、福間女流五冠が24分考えて歩で9筋の香を取りに行くと、26分の熟考で同香と応じ、香を取り合います。福間女流五冠は飛車を9筋に回して角に当て、西山白玲が歩で角を支えると、2筋に歩を合わせます。西山白玲は33分熟考し、手抜いて▲6六香と打ち、福間女流五冠が2筋の歩を取り込んで銀を吊り上げてから飛車を2筋に戻すと、▲2五歩と打って銀を守ります。
自陣の傷を消す福間女流五冠
福間女流五冠は△7二金と上がって先手の香の成り込みを防ぎ、西山白玲が3筋の歩を突くと、6筋の歩を突いて香頭を狙います。この香が動くと飛銀両取りの筋があるので、西山白玲が▲7七桂と跳ねて香頭を守ると、福間女流五冠は△4二角と引いて6筋の歩を支えつつ9筋を睨みます。西山白玲が▲3七桂と跳ねて自陣を強化しながら4筋からの反撃を目指すと、福間女流五冠は△3三桂と跳ねて牽制します。
西山白玲が香捨ての強襲
西山白玲が7筋の歩を突き捨ててから▲6四香と走り、角で取らせてから銀取りに▲6五桂と跳ねると、後手玉が間接的に角で睨まれ銀を動かせないので、福間女流五冠は角取りに△9四歩と打ちます。残り1時間となった西山白玲が銀桂交換してから7筋に角を引いてかわすと、福間女流五冠は△6五桂~△7四桂と角を攻めます。駒割りは銀と桂香の2枚替えとなり、わずかに後手が指し易くなってきたようです。
福間女流五冠が駒得を拡大
西山白玲は角を見捨てて飛車を7筋に寄せ、福間女流五冠が角桂交換してから飛車取りに△7六香と打つと、飛車を9筋にかわします。福間女流五冠は△7七桂成と飛び込み、西山白玲が▲6五歩と伸ばして角に当てると、△8二角とかわします。西山白玲は金取りに▲6四桂と打ち、福間女流五冠が△6三金とかわすと、▲5五歩とぶつけて戦火の拡大を図ります。駒割りは銀と角香の交換となり、形勢は後手に傾いてきたようです。
手厚い福間女流五冠の馬
福間女流五冠も残り1時間を切り、飛車取りに△8九角と打って△5六角成と馬を作り、西山白玲が▲7二銀~▲8一銀成と角に当てると、角を見捨てて△6五馬と先手の攻め駒の一掃を図ります。西山白玲は成銀で角を取り、福間女流五冠が馬で桂を取りつつ成銀に当てると、成銀をかわしてから後手の成桂に当てて▲7八歩と打ちます。
痛烈な王手金取り
福間女流五冠は構わず銀取りに△5四桂と打ち、西山白玲が▲4五銀とかわしつつぶつけると、王手金取りに△4六桂と跳ねます。馬が間接的に先手玉を睨んでいるので、西山白玲は▲2七玉とかわすしかありませんが、福間女流五冠は金桂交換してから、△4五桂と銀桂交換します。
慎重な寄せ
西山白玲は王手飛車取りに▲3三角と打ち、福間女流五冠が△4二飛とかわしつつ王手を防ぐと、馬銀両取りに▲5七桂と打ちます。福間女流五冠は取られそうな銀を王手で捨ててから△5四馬と王手を続け、西山白玲が▲4五桂打と防ぐと、慎重に11分考えて△3五香と王手します。先手玉には長手数の即詰みが生じているようで、西山白玲は数手指し続けましたが、福間女流五冠の△3七銀を見て投了を告げました。
まとめ
本局は福間女流五冠が居玉のまま飛車で揺さぶりを掛け、西山白玲は香捨てから積極的に仕掛けました。福間女流五冠は丁寧な受けで駒得を重ねて優勢となり、西山白玲の反撃を封じて寄せ切る快勝となりました。
勝ってタイスコアに戻した福間女流五冠は、対局後「次局まで1週間ほどしかないので、体調に気をつけながら準備していけたらと思います」と話しました。西山白玲も「シリーズの中盤戦ぐらいなのかなと思いますので、また気を引き締めて頑張りたいと思います」と話しており、好敵手が織りなす七番勝負の行方を楽しみにしたいと思います。
ヒューリック杯白玲戦は、ヒューリック株式会社と日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。