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「観る将」が観た第71回NHK杯トーナメント本戦2回戦 藤井三冠vs深浦九段

10月31日、NHK杯本戦の藤井聡太王位・叡王・棋聖と深浦康市九段の対局が放映されました。この日は竜王戦第三局の2日目が生中継されており、藤井ファンにとっては大忙しの1日となりました。

藤井三冠は本戦からの登場で、本局が初戦となります。NHK杯は少し相性が悪いのか、これまでの最高成績はベスト16です。深浦九段も本戦からの登場で、1回戦で予選から勝ち上がった都成七段を降しています。一昨年の第69回に優勝を果たしており、今回は2度目の優勝を目指しています。

両者のこれまでの対戦成績は深浦九段の2勝1敗となっており、藤井三冠にとっては数少ない負け越している相手の一人です。今年5月に行われた王座戦予選でも、深浦九段の矢倉に対してやや優勢だった藤井二冠(当時)が攻めあぐね、粘り強い受けから反撃に転じた深浦九段が鮮やかに逆転勝利を飾っています。

振り駒で先手となった深浦九段が角道を止め雁木の駒組みを進めると、藤井三冠も追随し相雁木の将棋となりました。44手目まで先後同型の形になると、深浦九段は4筋から仕掛け、3筋~2筋と戦線を拡大します。藤井三冠は4筋の歩を伸ばし△3六歩と桂頭に打って反撃しますが、深浦九段は構わず▲4五銀とぶつけ、後手の玉頭から攻め掛かります。

深浦九段が▲2三銀から桂を入手し▲3四桂と王手金取りを掛けると、藤井三冠は△3七歩成と攻め合いを選択します。深浦九段は飛車で金を食いちぎり、後手玉の上部から金と歩で押さえ込みます。深浦九段は▲6五歩と角道を開けて王手し、▲7二銀と飛車取りで後手玉の退路を狭めます。受けなしとなった藤井三冠は王手で先手玉に迫りましたが届かず、無念の投了となりました。

本局は積極的に攻め続けた深浦九段の快勝譜となりました。かつて全盛期の羽生九段に人一倍の闘志を燃やしたことで「地球代表」の異名を持つ深浦九段が、現在の最強棋士である藤井三冠に対しても最大限の準備をして臨んでいることは間違いありません。この収録がいつ行われたのか不明ですが、藤井三冠としては豊島竜王とのタイトル戦が続き、相掛かりと角換わりの研究に時間を割かれていた面もあったのかもしれません。対局後に久し振りに悔しさを露わにした藤井三冠がこの敗戦をバネにして、いずれは相雁木の将棋でも強い姿を魅せてくれことを期待したいと思います。

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