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「観る将」が観た第33期女流王位戦五番勝負第三局

5月25日に福岡県飯塚市の旧伊藤伝右衛門邸で、女流王位戦第三局が行われました。ここまで1勝1敗のタイスコアとなり、4期連続8期目の女流王位獲得を目指す里見香奈女流王位と、初参戦での女流王位奪取を狙う西山朋佳女流二冠の、どちらが先に王手を掛けるのかという一局になりました。23日に清麗戦挑戦者決定戦を東京で戦った2人は、関係者とともに空路で福岡入りしたようです。前日行われた関係者懇親会で、里見女流王位は「自分の力を出しきれるように精一杯頑張りたい」、西山女流二冠は「第三局ということで佳境ですが、いつも通り頑張っていきたい」と挨拶しています。

女流王位の仕掛け

先手の西山女流二冠が初手で三間飛車に振ってから向かい飛車に振り直すと、里見女流王位は24手目に△8四歩と突き、この2人には珍しく対抗型の将棋となりました。里見女流王位が居玉のまま5筋から仕掛けると、西山女流二冠は▲5七金と上がって5-6筋の守りを補強します。里見女流王位が6筋の歩もぶつけると、西山女流二冠は▲4八金と上がって中央に厚みを加えます。里見女流王位が△6四銀と上がって2枚の銀で中央制圧を目指すと、西山女流二冠は飛車が向き合った8筋の歩をぶつけて反発します。西山女流二冠は6筋の歩を取り込み、桂を角金両取りに跳ねさせると▲9五角と王手で飛び出してから▲6六金と前進します。

女流王位の痛烈な一撃

里見女流王位は16分考えて△5六歩と取り込み、先手の歩頭に△4五銀と踏み込みます。この手は角道を通したことにより金取りになっており、その先に先手の飛車を睨む厳しい一着となっています。西山女流二冠が▲5五歩と角道を遮断したところで昼休となりました。早くも激しい戦いとなり、形勢は里見女流王位に振れているようです。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見女流王位が2時間48分、西山女流二冠が2時間34分となっています。

途切れない攻撃

里見女流王位は、昼休が明けるとすぐに銀を交換し、9筋の歩を突いて角を追います。何か誤算があったのか西山女流二冠は59分の長考で▲5九角と引きますが、里見女流王位は△5八歩と追撃し、金で取らせて△5七歩と軽快に攻め続けます。この歩には桂の紐が付いているので、西山女流二冠は逃げるしかありませんが、里見女流王位は更に△5八銀と角取りに打ち込みます。西山女流二冠は▲6八角とかわしますが、里見女流王位は角金両取りに△6七銀と引きます。西山女流二冠は▲4八銀と打って辛抱しますが、里見女流王位は銀を金と交換して角金両取りに△5八金と打ち込みます。

盤石の終盤戦

受け続けていては勝負にならないと見た西山女流二冠は角取りに▲2三銀と打ちますが、里見女流王位は角をかわしてから玉で銀を追い返し、付け入る隙を与えません。70手目に里見女流王位が飛先の歩を突くと、西山女流二冠は数分考えていましたが、次の手を指さずに投了を告げました。時刻は14時55分、里見女流王位は2時間23分、西山女流二冠も1時間23分を残しての早い終局となりました。

第三局の結果

本局は里見女流王位が機敏に仕掛け、飛車や2枚の金を一度も動かすことなく攻め切る圧勝となりました。これで女流王位防衛まであと1勝となり、第四局に向け「少し日が空きますが、引き続き頑張りたい」と話しています。
西山女流二冠は金無双や美濃囲いといった従来の囲いとは違う形を模索しているようにも見えますが、対里見戦4連敗となり内容的にも一方的に押されているのが気になります。並行して行われているマイナビ女子オープンに続き、女流王位戦でもカド番という苦しい状況になりましたが、気持ちを切り替えて巻き返して欲しいと期待しています。

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