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第5回ABEMAトーナメント 予選Eリーグ第三試合

7月23日に、ABEMAトーナメントの予選Eリーグ第三試合が放映されました。ともに初戦を落としたチーム藤井「スリーカード」とエントリーチーム「下剋上」の顔合わせとなり、勝ったチームが予選突破を果たす一戦となりました。

一局目:藤井猛九段 vs 冨田誠也四段

エントリーチームは第二試合で勝ち星のなかった冨田四段が先陣を切ります。振り駒で先手となった藤井九段が四間飛車に振り美濃囲いに構えると、振り飛車党の冨田四段は居飛車を選択してエルモ囲いに構えます。冨田四段が飛車を7筋に寄せて仕掛けると、藤井九段は角を交換して敵陣に打ち込み▲5四角成と馬を作ります。冨田四段は△6七銀と飛馬両取りに打って馬と交換すると、△7六角~△4九角成と金を食いちぎります。藤井九段は自陣に銀を投じて囲いを再生し、▲6三歩と垂らして2枚目の"と金"を作ります。冨田四段が△7八角~△8七角成と馬を作って飛車を追うと、藤井九段は飛車で桂を食いちぎって後手陣に攻め掛かります。早くも時間に追われた藤井九段は、敵陣に打ち込んだ角で香を食いちぎり"と金"で飛車を捕獲しますが、冨田四段も馬の利きを使って金を1枚剥がします。藤井九段は金を自陣に投じて馬を追い返しますが、作戦会議室では森内九段が「やばいですね、これは」とつぶやいています。冨田四段が先手陣に飛車を打ち込み攻め掛かると、藤井九段は自陣に竜を引き付けて粘ります。冨田四段が先手陣の金を剥がして△4九飛成と竜を作ると、藤井九段は早めの投了を告げました。
チーム藤井:0勝 - エントリーチーム:1勝

二局目:藤井聡太竜王 vs 黒田尭之五段

初戦を落としたチーム藤井はリーダーが登場します。先手の黒田五段が初手▲7八飛と三間飛車に振り、藤井竜王が角を交換すると向かい飛車に振り直します。黒田五段が高美濃に構えると、藤井竜王は△2四歩~△2三銀と玉頭に厚みを作ります。藤井竜王が8筋の歩を突き捨ててから△7九角~△2四角成と馬を作ると、黒田五段は▲4六角と打って馬と交換します。黒田五段は香取りに▲7三角と打ちますが、藤井竜王は構わず△7九角と打ち込みます。黒田五段は▲9一角成と香を取って馬を作りますが、藤井竜王は△4六角成と銀を食いちぎって△5七桂成と飛び込み飛車に当てます。黒田五段は飛車取りに▲8七香と打ちますが、藤井竜王は先に成桂で飛車を取って△7九飛と打ち込みます。黒田五段も飛車を取り、藤井竜王が竜で桂香を拾う間に▲8一飛と打ち込んで攻め合います。藤井竜王は△4一香と打って先手の飛車の横利きを遮断し、△2四桂と打って玉頭から攻め掛かります。黒田五段は自陣に角を打って粘りますが、藤井竜王は△1六桂から端を攻めます。黒田五段は▲9三角成と馬を作って自陣に引き付けますが、藤井竜王は金と成桂で馬を剥がします。黒田五段は懸命に粘りましたが、最後は藤井竜王が△9八銀と打って先手玉の退路を断ち、即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - エントリーチーム:1勝

三局目:森内俊之九段 vs 折田翔吾四段

両チームとも順番通り、折田四段の情報が少ないと不安気に森内九段が出陣します。後手の折田四段が雁木に構えると、森内九段は飛車を3筋に寄せて仕掛けます。折田四段が7筋と8筋の歩を突き捨ててから4筋の歩を突いて角道を開けると、森内九段は▲3五銀と前進します。折田四段は角を交換しますが、森内九段は力強く▲7七同玉と取ります。折田四段は王手香取りに△5五角と打ちますが、森内九段は△6六角と応じてお互いに香を取り合って馬を作ります。折田四段は馬で桂を取って飛車を追ってから△5四馬と引き付けますが、森内九段も馬で桂を取って飛銀両取りに▲7四桂と打ちます。折田四段が歩で玉頭を叩くと森内九段は少し考えて玉を引きますが、作戦会議室では藤井竜王が「引くとあまり希望がない気がします」とつぶやきます。折田四段は△8六飛と走り、森内九段が歩で銀取りを防ぐと△7七歩成と王手で飛び込みます。作戦会議室では冨田四段が「えっえっ、折さーん」と声を上げています。折田四段は飛交換して△4七歩成と攻め掛かりますが、森内九段は構わず▲3三歩と金頭を叩いて攻め合います。折田四段は敵陣に飛車を打って竜を作って先手玉に迫り、飛車と金を補充して即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - エントリーチーム:2勝

四局目:藤井猛九段 vs 冨田誠也四段

両チームとも順番通り、一局目と同じ顔合わせになりました。先手の冨田四段は振り飛車党ですが、初手に飛先の歩を突いて居飛車を宣言します。藤井九段は四間飛車に振り、作戦会議での宣言通り角を交換し穴熊に囲います。冨田四段が左美濃に構えて9筋の位を取ると、藤井九段は向かい飛車に振り直し△6三角と据えて3筋の歩を狙います。冨田四段が飛車を浮いて歩を守ると、藤井九段は2筋から逆襲し飛取りに△2五歩と打ちます。冨田四段は構わず▲5三歩成と飛び込み、後手陣を乱してから飛車を引きます。冨田四段は▲3二角~▲4一角成と馬を作って後手の飛車を追いますが、藤井九段は△5五歩と打って銀を捕獲します。藤井九段は△5七桂成と飛び込み、歩の攻めで先手陣を乱しますが、冨田四段は▲1三馬と引いて自陣に利かせます。作戦会議室では黒田五段が「良い手に見えますね」とつぶやいています。藤井九段は△4五角と王手で飛び出しますが、冨田四段は金を打って遮断すると、金を取らせる代わりに角を取ります。冨田四段が▲6三歩成と成り捨てて後手陣を崩してから自陣に馬を引き付けて守ると、時間に追われた藤井九段は飛車で銀を食いちぎって勝負します。作戦会議室では森内九段が「やめて、投げないで」と祈っていますが、藤井九段は次の手が出ず投了を告げました。
チーム藤井:1勝 - エントリーチーム:3勝

五局目:藤井聡太竜王 vs 黒田尭之五段

両チームとも順番通り、二局目と同じ顔合わせになりました。後手の黒田五段が作戦会議室でエース戦法と宣言した横歩取りに誘導し、藤井竜王も受けて立ちました。黒田五段も横歩を取ると、藤井竜王は飛車を8筋に回します。黒田五段は玉で先手の飛成を防いでから、△8六飛と回って飛成を目指します。藤井竜王は▲8四歩と垂らしますが、黒田五段は△8二銀と上がって受けます。藤井竜王も▲2八歩と打って飛成を防ぎ、両者とも駒組みに戻ります。黒田五段が△2四角とぶつけると、藤井竜王は銀取りに▲8五桂と跳ねます。黒田五段は角を交換してから△8四銀とかわしますが、藤井竜王は▲7三歩~▲8二歩と小技で後手陣を崩します。黒田五段は△8八歩~△8七歩と飛頭を叩いてから桂を交換し、△8四飛と回ります。藤井竜王が飛取りに▲9五角と打つと、黒田五段は王手で△1四角と打ちます。藤井竜王が玉を寄ってかわすと、黒田五段は飛車を2筋に逃げてから角取りに△8四銀とぶつけます。藤井竜王は角を見捨てて角金の田楽刺しに▲3七香と打ち▲3二香成と金を取りますが、黒田五段は飛車を3筋に回して先手陣を睨みます。藤井竜王は銀を取って下駄を預けますが、黒田五段は△3八飛成と金を食いちぎり△4七角から即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - エントリーチーム:4勝

六局目:森内俊之九段 vs 折田翔吾四段

両チームとも順番を崩さず、三局目と同じ顔合わせになりました。後手の森内九段がいきなり9筋の位を取り、お互いに飛先の歩を交換してから折田四段は横歩を取ります。森内九段は縦歩を取って歩損を解消し、△2四飛と回ってひねり飛車にします。森内九段は桂をぶつけて交換し1筋からの端攻めを見せますが、折田四段は慌てず対処します。森内九段が角もぶつけて交換すると、折田四段は▲7四歩から反撃に転じ、作戦会議室では冨田四段が「行け、行け、行け」と声を上げます。折田四段は▲4六角~▲1三角成と香を取って馬を作りますが、森内九段も△2七飛成と竜を作ります。お互いに時間に追われながら、何か所も駒がぶつかる難解な終盤戦になり、森内九段が攻め掛かりますが折田四段は冷静に対処し届きません。折田四段は▲6三桂成から後手玉に迫り、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - エントリーチーム:5勝

第三試合の結果

エントリーチームは一局目にムードメーカーの冨田四段が大会初勝利を挙げて勢いに乗り、三局目からは怒涛の4連勝で一気に「下剋上」を果たし、予選突破を決めました。リーダーの折田四段は落ち着いた指し手で連勝し、チームの勝利に大きく貢献しました。冨田四段は四局目にも勝って連勝し、黒田五段は相手リーダーを破る殊勲の星で貢献しました。エンディングで本人たち自身が信じられないという面持ちだったのが印象的ですが、若いチームだけに本戦でどこまで勝ち上がっていけるか楽しみです。
チーム藤井は、これまで2大会連続で団体戦優勝していたリーダーの藤井竜王が、2試合トータルで2勝3敗と振るわずチームを勢いに乗せることができませんでした。これまで抜群の勝率を誇り2枚看板と思われた森内九段も、2試合で1勝4敗と不振で救世主となれませんでした。実力的には優勝候補のチームと思われましたが、第一試合に続いて4連敗を喫しての敗戦となり、チームの流れが悪い時に雰囲気を変えるムードメーカーが不在だったのも敗因の一つなのかもしれません。

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